新型キャデラックCT6に試乗|Cadillac
CAR / IMPRESSION
2016年11月2日

新型キャデラックCT6に試乗|Cadillac

Cadillac CT6|キャデラックCT6

もはやオジサン向けのクルマとは言わせない

2015年のニューヨークオートショーで公開されたキャデラックの新世代フラッグシップモデル「CT6」。日本への導入もはじまった同モデルにアメリカ西海岸で試乗した。

Text by OGAWA Fumio

キャデラックは明らかに変貌した

キャデラックが先進安全技術満載のプレスティッジセダン、「CT6」を発売した。まもなく日本の路上を走り出すが、ひと足先に米国で試乗した。快適、豪華、そしてファン・トゥ・ドライブ。キャデラックは明らかに変貌した。

キャデラック CT6は全長5.2メートルの余裕あるサイズの車体をもった4ドアセダンだ。日本で売られる「CT6 プレミアム」は3.6リッターV型6気筒エンジンにAWDとよばれるフルタイム4WDシステムの組み合わせ。北米市場ではメルセデス・ベンツ「Eクラス」と「Sクラス」のあいだといえるポジションというが、たしかに走行性能も快適性も安全装備の充実ぶりも負けていない。

Cadillac CT6|キャデラックCT6

後輪操舵機能が標準装備

Cadillac CT6|キャデラックCT6

ホイールベース3110mm

キャデラック CT6は、すでに日本でも販売されている「CTS」の上に位置するモデルだが、CTSにはコルベットのV8を搭載した超パワフルな477kW(649ps)の「CTS-V」があるいっぽう、CT6はプレスティッジのほうにより重きを置いた位置づけを特徴としている。ホイールベースは3.3メートルと長く、そのおかげで後席空間はスペースたっぷり。車内エンターテイメントも充実していて、余裕あるサイズのセダンを探している人にはぴったりだ。

スタイリングの面でもキャラがたっている。現在のキャデラックを特徴づけているのは、LEDによる縦型のポジションランプだが、CT6はエアダムまで回りこんだ意匠で遠くからすぐ探し出せるのだ。単にほかとの相違点というのにとどまらず若々しさも感じさせ、端正なプロファイル(側面)に躍動感を加え、いいアクセントとなっている。キャデラックはこの意匠をこれから出るモデルでも継承するようだ。

新しい出発点にたつキャデラック。操縦するとより強く新しさを感じるのだ。

Cadillac CT6|キャデラックCT6

もはやオジサン向けのクルマとは言わせない(2)

活発なワインディングロードでの身のこなし

キャデラックCT6に試乗したのは、サンフランシスコからロサンジェルス方面に南下するコース。120マイルほどのドライブで、通勤時間帯は渋滞に悩まされる区間もあるが、ワインディングロードがあったり海が見えたり、眺望を含めてドライブが楽しめるのが特徴である。

米国にはミニバンや大型SUVが多いが、CT6はそれらに埋もれず存在感を発揮している。げんにフリーウェイなどで大いに注目されていた。米国人は好きなクルマを見るとおおげさともいえるジェスチャーでドライバーに称賛を贈る傾向にあるが、CT6に乗っていると周囲のクルマの乗員が笑顔で接してくれる機会が多かったようだ。

Cadillac CT6|キャデラックCT6

ホイールベースは3,110mm

Cadillac CT6|キャデラックCT6

サンフランシスコ市内にて

CT6のV6エンジンは、どちらかというと高回転型だ。250kW(340ps)の最高出力を6,900rpmで、386Nmの最大トルクを5,300rpm で発生する。低回転域から回転を上げていくとぐいぐいという感じでの加速感が気持ちいい。8段オートマチックはシフトショックを感じさせずに早めにシフトアップしていくが、マニュアルで各ギアをホールドぎみに上の回転まで引っ張ると3.6リッターV6エンジンは2トン近い車体をじつに爽快に加速させる。このシャープな感じは欧州や日本のスポーティセダンに勝るとも劣らない。

アクティブ リア ステアと呼ぶ後輪操舵機構も備えていてボディサイズやプレスティッジ性からは意外と思えるほど、ワインディングロードでの身のこなしは活発だ。下りのタイトコーナーでこそやや車体の重さを感じることがあったが、運転好きな人がこのクルマに乗って失望することはなさそうだ。マグネティック ライド コントロールという磁性流体による減衰力調整システムもおそらく効果的なのだろう。とばしてもそれなりに楽しいいっぽう、高速ではふんわりと表現したくなるほど快適なのだ。

真っ暗な夜でも怖くない。それがCT6だ。

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もはやオジサン向けのクルマとは言わせない(3)

充実した先進安全技術

キャデラックは先進技術の採用では他の追随を許さない、とはよく聞くことだ。実際CT6も先進安全技術は充実している。前進時と後退時を対象としたエマージェンシー ブレーキ システム、レーン キープ アシスト、レーン チェンジ アラート、サイド ブラインド ゾーン アラート、アダプティブ クルーズ コントロール、サラウンド ビジョン、リアビューカメラなどは当然備わっている。

CT6の新しさは、カメラの機能を安全性確保のために徹底的に使っているところにある。一つは夜間に効果的なリア カメラ ミラー。いわゆるバックミラーにはカメラの映像が映し出されるのだ。従来の鏡面を使ったものより後続車が近くに見える傾向にあるようだが、国産車のものよりはるかに自然で慣れるのも早かった。夜間うれしいもう一つの装備がエンハンスド ナイトビジョンだ。赤外線を使って前方の熱源を探知する。以前からキャデラックは同様のシステムを実用化していたが、街灯などない漆黒の闇を走ることもあるだろう米国ではありがたい装備のはずだ。どれも標準装備である。

Cadillac CT6|キャデラックCT6

タッチ式のインフォテイメントシステムのモニター

Cadillac CT6|キャデラックCT6

とても足元が広い後席

Apple CarPlayに対応しているインフォテイメント システムを備えたキャデラック ユーザー エクスペリエンスでは、スマートフォンを接続していれば音楽はもとより、ハンズフリーフォンやメールなども使える。スマートフォンには置くだけで充電できるワイヤレス チャージング システムが用意されている。さすが米国といいたくなる快適な環境が整っているのだ。

専用装備としてはBOSEがCT6のために新開発した「パナレイ」搭載にも注目していいだろう。32のスピーカーで構成されており、BOSEの特徴的な音づくりがさらに洗練された印象である。ペブルビーチではBOSEのエンジニアがUSBに入ったハイレゾ音源を聞かせてくれたが、車内の音源も近いうちにハイレゾ化していくかもしれない。そうなると音環境についても、さらにもう一段、もやもやとしていた霧が晴れクリアな印象をより強く受けるだろうか。今でもけっして悪くはないのだが。

余裕あるサイズのセダンづくりについて、世界でも最も経験豊かな歴史あるブランドであるキャデラック。もはやオジサン向けのクルマとは言わせないという意気込みで開発したのがCT6のようで、その狙いどおりの仕上がりだったのに感心した。豊かな世界観が良質のプロダクトを作りあげているのだ。

           
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