キャデラックの新フラッグシップの名前は「CT6」|Cadillac
CAR / LONG TERM REPORT
2015年4月7日

キャデラックの新フラッグシップの名前は「CT6」|Cadillac

Cadillac CT6|キャデラック CT6

キャデラックの新フラッグシップの名前は「CT6」

メルセデス・ベンツ「Sクラス」やBMW「7シリーズ」のライバルとなる、キャデラックのフラッグシップセダンがニューヨーク オートショーで公開された。あたらしいネーミングはキャデラック「CT6」で、これまでのトップモデルであった「XTS」の実質的な後継車となる。同時にこのCT6は、キャデラックが2020年までに発表を予定している新型車8モデルのうちトップを飾る1台でもあり、キャデラックのネーミングやラインナップが再構築されることも意味している。

Text by SAKURAI Kenichi

「CT6」を皮切りに2020年までに全8モデルをリリース

ニューヨーク ショーで公開されたキャデラック「CT6」は、同ブランドのあらたなるフラッグシップモデルだ。これまでのキャデラックのラインナップ中トップにあったのはフルサイズセダンの「XTS」だが、CT6はその実質的な後継モデルとなる。珍しいことに、今回ニューヨーク ショーでの発表と同時にインポーターであるゼネラルモーターズ・ジャパンによって、日本への導入計画も発表された。

米本国でフラッグシップモデルだったXTSはゼネラルモーターズ・ジャパンによる正規導入がなされていなかったモデルだが(GMの正規ディーラーであるヤナセが並行輸入の形で販売)、キャデラックはCT6の開発にあたり国際市場を意識したグローバルモデルと位置づけ、その一環として日本導入も早々と発表したということである。このあたりにも、キャデラックの積極的でしたたかなグローバル戦略が見え隠れしている。

Cadillac CT6|キャデラック CT6

Cadillac CT6|キャデラック CT6

キャデラックではラインナップの再構築のために12億ドル(邦貨約1,430億円)の投資をすでに決定しており、2020年までに新型車8モデルの発表を予定している。CT6は、GMがいよいよ本格的にキャデラックを米国のラグジュアリーブランドから、グローバルラグジュアリーブランドに成長させるための最初の一歩であり、重要な戦略モデルなのだ。

そうしたグローバル戦略の一環として、キャデラックは今後、車名やラインナップの再構築をこのモデルを皮切りに敢行。キャデラックはすべてを発表してはいないが、メルセデス・ベンツ「Sクラス」やBMW「7シリーズ」のライバルとなるLセグメントをCT6が担当し、これまでのEセグメントモデルである「CTS」は「CT5」に、Dセグメントをカバーしていた「ATS」は「CT4」に車名を変更してモデルチェンジがおこなわれるものと予想されているが、前述の変更後の車名は、あくまでも周辺関係者に証言に基づくプレス関係者の予想に過ぎないことをあらかじめお断りしておく。

Cadillac CT6|キャデラック CT6

Cadillac CT6|キャデラック CT6

キャデラック関係者によれば、第3世代にあたる現行CTSが世界的に評価されていることを念頭に置き、今回「CT」の後に数字で車格をあらわすネーミングシステムを採用したとのこと。ちなみに当初、事前にリークされていたニューモデルの車名は「LTS」であり、文字通りLセグメントのスポーティセダンを意味していたと考えられる。本国でも「XTS」のフルモデルチェンジや「XTS」後継モデルと大きく謳っていないのは、ラインナップの刷新を印象づけるためだと考えても良いだろう。

いっぽうでは余計なお世話だが、通常車名に数字を使用する場合は、ライバル車よりも上に見せる意味を込め、例えばBMW 7シリーズに対するアウディ「A8」のようにあえて大きな数字を当てるものだが、そうしたセオリー下にないことを疑問視する声もニューヨーク モーターショーのプレス関係者から聞かれたのも事実。果たしてこのCT6の上に位置するモデルは登場するのか、はたまたラグジュアリーSUVとしてアイコンとなっている「エスカレード」はどうなるのかなど、興味は尽きない。

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キャデラックの新フラッグシップの名前は「CT6」 (2)

Sクラスのサイズ感にEクラス並みの車重

さて、グローバルマーケットに本格的に打って出る新生キャデラックの記念すべき第1弾モデルとなったCT6は、これまでのデザインコンセプトである「アート&サイエンス」をさらに進化させた内外装デザインを採用している。ベースとなったのは2013年の「ペブルビーチ コンクール デレガンス」で公開された2ドアクーペのコンセプトモデル「エルミラージ」だ。

フロント左右を立ち上げ、ボンネットからフロントグリルを一体化させながら盛り上げ強調する手法や、フロントのブレードデザインのLED式ランニングライトと対を成す鋭角な意匠をもたらすテールライトなどに、そのルーツを見いだすことができる。もちろんこうしたイメージは、現行モデルであるCTSやATSにも共通し、それらの延長上にCT6のデザインがあると紹介できるものだ。

Cadillac CT6|キャデラック CT6

Cadillac CT6|キャデラック CT6

全長5,184×全幅1,879×全高1,472mm、ホイールベースは3,106mmと発表された。これをライバルと目されるメルセデス・ベンツSクラス(標準ホイールベース/本国値)と比較すると、CT6が全長で68mm長く、全幅で20mm狭く、24mm低い数値で、実際にはほぼ同等のサイズ感といえるだろう。

ただしボディパネルのアルミ化や軽量化技術により、その車重はライバル各車よりも100kg近く軽量な1,700kg以下に抑えられるという。これはメルセデスの「Eクラス」やBMWの「5シリーズ」「6シリーズ」程度の重量である。

搭載エンジンは2.0リッターの4気筒ターボと自然吸気の3.6リッターV型6気筒、そして3.0リッターV型6気筒ツインターボというダウンサイジングエンジンだが、こうした小排気量エンジンでも軽量なボディゆえにじゅうぶんなパフォーマンスを確保できるとしている。

また、高級車にふさわしい走りを演出するために、軽量なボディでありながらまるで銀行の金庫を思わせるレベルの静粛性やボディ剛性を確保していると、CT6のボディにかんしキャデラックは絶対の自信を覗かせる。

Cadillac CT6|キャデラック CT6

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エンジンの最高出力は、先の2.0リッターの4気筒ターボが269ps、3.6リッターV型6気筒が340ps、3.0リッターV型6気筒ツインターボが405psを発揮すると公表され、同時に3.0リッターV型6気筒ツインターボが55.3kgmの最大トルクを発揮し、気筒休止技術も導入されていることがあきらかになっている。基本となるサスペンションは、フロントにダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンク式を採用した。

これらすべてのパワーユニットは、8段ATと組み合わせられ、後輪駆動をベースにV型6気筒エンジン搭載車には、無段変速クラッチを搭載したアクティブ オン デマンド4輪駆動モデルや、路面状況に合わせ車輪ごとにサスペンション セッティングを変更するマグネティック ライド コントロール ダンパーを採用したアクティブシャシー システムもラインナップするという。ドライブモードは3段階のセッティングから選べ、ツアーとスノー/アイス、スポーツを用意した。

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キャデラックの新フラッグシップの名前は「CT6」 (3)

クラシカルなデザインに最新テクノロジーを散りばめた内装

エッジの効いた他ブランドのラグジュアリーカーよりも鮮明なキャラクターを打ち出すエクステリアに比較すれば、いささかオーソドックスという感想も払拭できないが、これはクラシカルなテイストを狙ったもので、インテリアは高級感ある仕上がりとなっている。V字を基調としたデザインのダッシュボードには、10.2インチの静電容量タッチスクリーン式液晶モニターを装備した。

このモニターは、1,280×720のHD解像度を持ち、キャデラックの誇る先進的なユーザーインターフェース、「CUE(キャデラック ユーザー エクスペリエンス)」を直感的に操作可能。これまで以上にスクロールの反応を早くし、検索のアドレス/ポイントの手書き文字を認識するタッチパッドもセンターコンソールのアームレスト前方に用意している。

これらふたつのインターフェイスやステアリング上のスイッチを利用し、オーディオや携帯電話、エアコンやナビの調整など、「CUE」の持つ機能をコントロール可能だ。また、オンスター4G LTE に対応するほか、Wi-Fiホットスポットや携帯電話やスマートフォンの充電など、現代の高級車に求められるコネクト機能も搭載した。

Cadillac CT6|キャデラック CT6

Cadillac CT6|キャデラック CT6

快適性の重視を図るため、シートはヒーター&クール機能付きとなり、5種のマッサージプログラムも用意される。フロントシートのシートバックには後部座席用のモニターも設置。同時にリアシートも電動でリクライニングが可能となり、アームレスト上には後部座席用モニターのコントロールスイッチやHDMI/USBのコネクターが用意される。

さらに、CT6ではこのセグメントトップとなるインテリアストレージが確保されているという。4気筒モデルでは、センターコンソールの容量が実に2.2リットルにおよぶ。進化したBOSEのパナレイ オーディオシステムは、CT6に初搭載されるデバイスで、34個もの小型スピーカーをキャビンに効果的に配置。ホームエンターテイメントのデザインや技術を流用した優れたダイナミックレンジを持ち、キャビンを理想的なシアタールームへと変身させる。

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かわりはじめるキャデラック

ユニークなのは、キャデラックが世界初という「360度サラウンドビュービデオ記録システム」が装備されたことだ。これにより、走行中はもちろんのこと静止、駐車中もセキュリティのために随時録画可能となる。その他、人間や動物の熱を感知し、夜間走行をアシストする強化されたナイトビジョンもドライバーインフォメーションセンターディスプレイ上に表示するなど、現状キャデラックが持つ最新鋭の安全デバイスが、CT6では惜しみなく採用されている。

アメリカの高級車にV8エンジンが搭載されないのは寂しいという声があるのも、キャデラックは重々承知しており、時期やパフォーマンスは明かされていないが、スポーティモデルである「Vシリーズ」の登場もすでに予告されている。こちらはこれまでどおり、メルセデスのAMGやBMWのMシリーズに対抗可能な高出力V8エンジンを搭載し、フラッグシップ ドライバーズカーとして君臨するはずである。

Cadillac CT6|キャデラック CT6

Cadillac CT6|キャデラック CT6

キャデラックはこのCT6をトップモデルに、コンパクトなSUVや、メルセデス・ベンツ「Aクラス」のライバルとなるCセグメントカーの開発もおこなっているという。2020年までに8モデルをリリースするという根拠はそこだ。そのためにライバルである欧州や日本のプレミアムブランドで腕を磨いた開発スタッフを引き抜き、マンパワーを強化したほか、本社をニューヨークに移し、刻一刻と変化するグローバルニーズにも対応しようとしている。

CT6の米国向けの生産は2015年後半より、欧州や日本、韓国、イスラエル、中東向けの生産は2016年より開始するという。世界の頂点を目指すために、今、新生キャデラックは本格的にアクセルを踏み出したのだ。

           
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