シボレー コルベット Z51に試乗|Chevrolet
Chevrolet Corvette Z51|シボレー コルベット Z51
シボレー コルベット Z51に試乗
アメリカが誇るスポーツカーの雄、シボレー「コルベット」。2013年から7代目の「C7」へとモデルチェンジし、初代誕生から60年にもわたる歴史を連綿とつないでいる。今回はノーマルモデルに手をくわえたハイパフォーマンス仕様の「Z51」に、九島辰也氏が1ヵ月にわたり試乗をおこない、日常で実用性を交えたリポートをお届けする。
Text by KUSHIMA Tatsuya
あえてホットバージョン「Z51」に注目
去る5月30日に「コルベット」の最強モデル「Z06(ジーオーシックス)」が発表されたのをご存知だろうか。場所はASAMA2000。“浅間ヒルクライム”というカーイベントの一角である。
659psを発揮するZ06はまさにコルベット史上最強モデル。6.2リッターV8+スーパーチャージャーというパワーユニットと高剛性&軽量ボディは、0-100km/hが3秒以下というから恐れ入る。なんたってル・マン用レーシングカー「C7R」と同時に開発されたそうだ。つまり、まんまレーシングカーのロードゴーイング仕様ともいうべきモデルである。
そんなZ06が話題となった「コルベット C7」だが、個人的に注目したいのは「Z51(ジーフィフティワン)」。こちらはスタンダードモデルに少しだけ手をくわえたホットバージョンである。
Z51のベースとなるエンジンユニット“LT1”は、ほとんどスタンダードモデルと変わらない。6.2リッターV8のボア&ストロークは一緒。コンピューターのセッティングでマックスパワーが6ps、最大トルクが6Nm上がるくらいだ。
ちなみにこの“LT1”という名前がマニアにはササる。4世代目となる「C4」時代のエンジン形式の名称を復活させたからだ。正確に言うと、91年までのL98型の後継となるエンジンで、それまでの250馬力から一気に300馬力まで上げたシロモノ。
また、当時ロータス社がこれをチューニングしたツインカムバージョンのLT5を開発し、それを「C4 ZR1」というモデルに搭載し、話題となった。まぁ、細かい話は抜きにして、当時名機と呼ばれたエンジンユニットである。その名称を引き継いでいるのである。
Chevrolet Corvette Z51|シボレー コルベット Z51
シボレー コルベット Z51に試乗 (2)
“Z”に込められた究極の世界
コルベットの解説をすると、頭に“Z”が付く名称が多いことに気づく。これはアメリカ人的発想で、“Z”はアルファベットの最後の文字、つまり「これ以上ない!」という意味だからだ。いうなれば“究極”といったところだろう。また、“Z”はコルベットの父と呼ばれるエンジニア、ゾーラ・アーカス・ダントフのイニシャルでもある。
Z51は見た目もブラッシュアップされている。ホイールサイズはフロント19、リア20インチと、スタンダードモデルより各1インチ上がる。しかもホイールは専用でブラックペイントされ、凄みを演出する。
脱着式のルーフトップやスポイラーがカーボンフィニッシュされているのもいい。レーシーな雰囲気はたっぷりだ。もちろん、これはクーペの話。コンバーチブルはソフトトップで、リモートオープン機構が付いているらしい。う〜ん、一度試してみたい――。
インテリアもまたいい。スウェードのトリムやシート、ステアリングが上質で、それとカーボンの組み合わせが独自の世界を醸し出す。いうなれば相当ラグジュアリー。この辺はアメリカ車というよりヨーロッパテイストと言えるだろう。コルベットがアメリカン ドメスティックなモデルではなく、グローバルモデルであることを示唆する。いやむしろ、ホンキでヨーロッパマーケットに攻め込んでいく意気込みを感じる。
Chevrolet Corvette Z51|シボレー コルベット Z51
シボレー コルベット Z51に試乗 (3)
ロングタームテストでわかった実用性
このほかでは、Z51オリジナル強化ブレーキや専用ショックアブソーバー、ドライサンプシステム、マグネティックライドコントロールなどが付いている。これでスタンダード+176万円(クーペ8AT比較)はお得。というか、このスペックでこの見た目でこの内装で1,000万円+αという価格設定がバーゲンプライスにおもえてしょうがない。スペック表だけ比較すればおなじ内容のヨーロッパ車の半額に近い。
では、実際に走らせるとどうなのか。
今回はおよそ1ヵ月のロングタームテストを試みた。そしてその結果、このクルマはじつに扱いやすく、速くて安全で快適なことがわかった。
じつは当初、このスタイリングからして1ヵ月乗りづつけるのは無理だろうとおもわれた。コインパーキングでの駐車は、ホイールを擦るリスクが高そうなので、もっと安心して停められる場所をつねに考えなくてはならないからだ。それに、見た目が派手すぎる。
だが実際は、都心から離れればコインパーキングタイプの車止めではない駐車場は案外多いし、都心部もビルの地下駐車場を探せばリスクは回避できた。それに最低地上高はおもったほど低くはなく、アゴを擦ることは一度もなかった。その部分ではフェラーリ、ランボルギーニはもとより、アストンマーティンより扱いやすいかもしれない。
また、走行中の“見切り”もおもったより悪くないので、車線変更も苦にならない。死角に対してもアクセルオンで瞬時にそれを消せるのがいい。アクセルに対するレスポンスがいいため、道路上でどうにでも動けるといった感じだ。
Chevrolet Corvette Z51|シボレー コルベット Z51
シボレー コルベット Z51に試乗 (4)
普段づかいできるモンスターマシン
ちょっと気になったのは走行モード。一般道では“エコ”か“ツーリング”を使うことが多いが、デフォルトが“エコ”のためエンジン再始動時に“ツーリング”に切り替えなくてはならない。“エコ”の状態で“ツーリング”のつもりでアクセルを踏み込むと、わずかなブランクがあるので「アレ?」とおもう場面がしばしばあった。
排気音は“スポーツ”にするとかなり響き渡る。そんな遊びもあっていいが、普段はトルクが太いためエンジン回転数が低く静かに走れるのがいい。おもった以上に上品な仕上がりだ。
といったZ51のインプレッション。8段ATになり、燃費も前よりは期待できる。それも含め、普段づかいのできるモンスターマシンであることが体感できたとおもう。そして、いちばん驚いたのは運転していて疲れないこと。目的地に着いてからも元気でいられるのが、このクルマの隠れた魅力かもしれない。
Chevrolet Corvette Coupe Z51|シボレー コルベット クーペ Z51
ボディサイズ|全長 4,510 × 全幅 1,880 × 全高 1,230 mm
ホイールベース|2,710 mm
トレッド 前/後|1,600 / 1,600 mm
重量|(AT)1,580kg /(MT)1,570kg
エンジン|6,153 cc V型8気筒 OHV
ボア×ストローク|103.2 × 92.0 mm
最高出力(SAE)| 343 kW(466 ps)/ 6,000 rpm
最大トルク(SAE)|630 Nm(64.2 kgm)/ 4,600 rpm
トランスミッション|8段オートマチック / 7段マニュアル
駆動方式|FR
サスペンション 前|ダブルウィッシュボーン
サスペンション 後|ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|P245/35ZR19 / P285/30ZR20
価格│(AT)1,135万円/(MT)1,118万円
GMジャパン カスタマーセンター
0120-711-276
受付時間9:00~18:00 年中無休