ベントレーが描き出す、未来のラグジュアリー|Bentley
BENTLEY|ベントレー
ベントレーが描き出す、未来のラグジュアリー
パワートレーンの多様化と進化、そして各種運転支援システムに自動運転技術……。クルマをめぐるテクノロジーが長足の進歩を見せる昨今。ラグジュアリーカーブランドの最右翼たるベントレーは、新しい時代に向け何を目指しているのか。同社のデザイン部門を率いるステファン シエラフ氏が、未来のラグジュアリーを語る。
Text by SAKURAI Kenichi
ベントレーのアイデンティティを今後一世紀以上維持するこが重要
自動運転は、もはや遠い未来のクルマの話でない。それは、ラグジュアリーブランドのベントレーでもかわらない、発明されてから130年あまりの歴史を持つ自動車の進むべき正しいロードマップである。ベントレーのデザイン部門を率いるステファン シエラフは、20年後のベントレーをイメージさせるいくつかのデザインサンプルを前に、我々にこう語った。
「明日のベントレーを設計するのは簡単な作業ではありません。しかし、そこで重要なのはベントレーのブランドアイデンティティを、これから先一世紀以上にわたって維持すること。そしてそれは、誰もがベントレーに期待する世界観を持っていなければなりません。我々が今持っているイメージを視覚化し、革新的な未来へとつなげる必要もあります」
クルマのデザインは一足飛びに実現するものではない。時間をかけ進化に進化を重ね、時に伝統を再解釈することで新さが生まれるが、そうしたブランドのタイムラインにおいても「世界観」や「らしさ」というキーワードは欠かせない。過去のベントレーと現代のベントレーを並べてみても同じブランドだと誰にでも分からせるキーがあり、時代の変化とともにデザインが変わってもベントレーの持つ世界観は揺るぎない。
未来のベントレーを担うドイツ人のステファン・シエラフは、これまで数十年にわたり、アウディやフォルクスワーゲンで活躍。主にインテリアデザインを手掛けた後、メルセデス・ベンツに移籍、そこでもインテリアに係わるデザインの仕事に就いた。ベントレーのチーフデザイナーに就任したのは2015年。そんな彼のチームが力を入れているのが、ラグジュアリーカーの近未来を想定したこのデザインである。
「ベントレーというブランドとともに、我々に期待されるラグジュアリーカーの方向性を想像し、表現することが最も重要です。私にとって特に印象的なベントレーは、1952年のマリナー Rタイプコンチネンタルです。このモデルのエクステリアは、伝統的なハンドメイドによって構築された美しい曲面を持っています。力強く印象的なラインや肉感的なリアビュー、スピードを感じさせるルーフラインなど、今みても魅力的なプロポーションに溢れています。このDNAは、将来のベントレーにも引き継がれていきます」
BENTLEY|ベントレー
ベントレーが描き出す、未来のラグジュアリー (2)
未来のベントレーを創造する上で必要な指針とは?
「大いなる伝統を持つ英国のブランドに携わるものとして、デザインチームの役割は特に重要です。しかし、ベントレーの未来はデザインだけによって決まるものではありません。メカニズムや素材など多くの要素を立体的に組み合わせて行かなくてはなりません。時には新しいデザインキューを推進するのも管理者としての私の役割だと認識しています。しかし、変わらないファクターもあります。それは“エレガンス”です。これは、誰がベントレーのデザインの指揮を執ろうとも、変わることのない指針になります」
未来を担う、ベントレーが考える高級車のデザインとは?
「時代とともに、カスタマーの要求は変わってきます。インフォテインメントが一般的な現代を考慮すれば、ラグジュアリーなデザインの未来はやや複雑だと思います。我々は現時点で、次期ベントレーのエクステリアやインテリアについて話すことはできません。ただし、そこには常に新しい技術と統合されたベントレーのらしさが表現されています。我々は技術的なインプットをもって、デザイン、これはベントレーの美学と言い換えてもいいと思うのですが、それをより前進させることができます」
今後クルマはどのように進化していくのだろうか。デザインとライフスタイル(使い方)の両面から考えるそれはどのような答えに結び付くのか?
「ここ何年かで社会が大きく変化していることを感じます。私は今後20年間で、自動車産業は大きな変革を迎えると思っています。世界の人口の4分の3はより大きな都市を構成し、人々はそこに住むようになるでしょう。そんな将来のメガシティのトラフィックでは、自動運転が一般的になっているはずです。都市では自身のクルマをドライブするという作業から解放されるわけです。そうした(想像の)未来では、ラグジュアリーカーの役割は今以上に重要になるかもしれません。快適な移動空間としてのラグジュアリーカーの役割にスポットが当たるのです。そうなれば、私たちはラグジュアリーが何を意味するかを再定義する必要があるかもしれません。例えば未来のラグジュアリーとは、北米でいうフリーウェイのカープール(速い車線)のような、時間やスピードといった今以上に貴重となる“特別な価値”にアクセスできるエクスクルーシブなクラブのメンバーであることを意味する可能性があります。現時点でも郊外や山道で、(速くパワフルな)ベントレーのカスタマーは個人的にそんな経験をしているかもしれませんが、メガシティではこれが変わるかもしれません」
まるでラグジュアリーホテルの一室のような20年後のベントレーのインテリアにはホログラムの執事がおり、カスタマーのリクエストに応えてくれるのかもしれない。もちろん車内にいるホログラムの執事はバーチャルだが、しかるべき場所との通信によって、ベントレーが到着するやいなや、カスタマーが望む適切なサービスが用意されているという寸法である。しかし、たとえ20年たっても、ベントレーのカスタマーは伝統を重んじ優雅にシャンパングラスを片手に万年筆で手紙をしたためていることが、イメージイラストのテーブルの上からも分かる。その世界観が、まさにベントレーなのだ。この画像は、自動運転が当たり前になればなるほど、快適な空間を提供し続けてきた伝統あるラグジュアリーメーカーは、その強みを発揮できるというひとつのサンプルとして、とても興味深い。