“最も美しいクルマ”のコンクール|Pebble Beach Concours d’Elegance 2016
Pebble Beach Concours d’Elegance 2016|ペブルビーチ・コンクールデレガンス 2016
最も美しいクルマのコンクール
モンタレーカーウィークの一環として開かれ、世界中のクルマ好きが注目する恒例のイベント「ペブルビーチ・コンクールデレガンス」。1950年からつづき、今年も200台ものヒストリックカーが集まった同イベントを、小川フミオ氏がリポートする。
Text by OGAWA Fumio
希少車両の展示が多いのが魅力
米国にとどまらず世界各国の自動車好きが注目する夏恒例のイベント。それがモンタレーカーウィークだ。2016年も8月に開催された。そのうちのひとつが、ゴルフ好きにはペブルビーチ・ゴルフリンクスという海岸沿いのリンクスコースで知られる高級ゴルフコースの敷地の一部を使ったの「ペブルビーチ・コンクールデレガンス」。戦前を含めた“最も美しいクルマ”のコンクールだ。
2016年8月21日の日曜日に開催されたこのイベントは今年で66回を数える。自動車を人の手が作り出した芸術品のひとつとしてとらえ、審美性や希少性といった観点から評価していくのは欧米では一般的な楽しみだ。ペブルビーチでのイベントも1950年からつづいていることを思うと、彼の地の自動車文化の深さにいたく感心する。
ペブルビーチのコンクールがおもしろいのは、自動車に関して彼我の違いが如実に出る点だ。なにしろ欧米では1930年代に高性能、高品質、そして審美性の高いモデルが数多く作られている。日本では国産車という概念がほとんどなかった時代である。個人的にいつも同様のことを感じるのは、ロシアのレオ・トルストイが「戦争と平和」を書いたとき、日本は慶応年間のはじまり、つまりまだ江戸時代だった事実だ。いい悪いというのではなく、要するにある種の文化の成熟の速度に大きな違いがある。
2016年にも200台を超えるクルマが集まったという「ペブルビーチ・コンクールデレガンス」。富裕層の楽しみでもあることから、レア度を競う側面も強い。6台しか作られなかった「アメリカ最高のスポーツカー」が揃うとか、ナチス政権下で軍需大臣も務めヒトラーと最も親しかった建築家であるアルベルト・シュペアが所有していたモデルとか、イタリアの天才的スポーツカー・エンジニアとしてフェラーリ250GTOなど設計いたジョット・ビザリーニが大学の卒業制作として作ったクルマとか、美とはまた別の魅力、つまり歴史を持つクルマが多く持ちこまれているのだ。
モンタレーカーウィークは、サンフランシスコから2時間半ほど海岸沿いに南下した富裕層が多く住むエリアで、公道を使っての走行や、駐車場を借りての手づくり感満載のスワップミートなど、数えきれないイベントで構成されている。そのなかでとりわけ大きいものとして「ザ・クエイル、ア・モータースポーツ・ギャザリング」とスイスの高級腕時計メーカーの冠をいただく「ロレックス・モンタレー・モータースポーツ・リユニオン」があげられるが、「ペブルビーチ・コンクールデレガンス」は希少な車両の展示が多いという点で独自の魅力を強く持っているのだ。