新旧スポーツカーが一堂に会す祭典|The Quail, a Motorsport Gathering
The Quail, a Motorsport Gathering
ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング
クルマ好きなら飽きない
新旧スポーツカーが一堂に会す祭典
アメリカ西海岸で開かれるモントレーカーウィークの1つとして、今年も「ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング」が開催された。戦前戦後の希少なスポーツモデルのみならず、最新のスーパーカーにまでが揃うこのイベントを、小川フミオ氏がリポートする。
Text & Photographs by OGAWA Fumio
KEN OKUYAMA最新モデルも発表
スポーツカーの魅力は古びることはない。そう強く感じさせてくれたのが、2016年8月に米国西海岸で開催された新旧スポーツカーのお祭りともいえる「ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング」だ。富裕層向けゴルフリゾートを舞台に、米国を中心としたスポーツカーのオーナーが自慢のクルマを展示することに加え、多くの自動車メーカーが新車発表の場にすることでも知られている。
2016年、自動車界にはいくつもの節目があった。BMWが創業100周年を迎えたこと、ランボルギーニ「ミウラ」が発表後50周年を迎えたことといったぐあいだ。ザ・クエイル・ロッジ&ゴルフクラブの広大な敷地を使って、緑の芝生の上にスポーツカーが並んださまは壮観のひとことだ。舞台になったモンタレーベイは朝は霧が出るうえに、温暖差が激しく陽が落ちると気温が15度程度にまで落ちるという極端な気候で知られているが、2016年8月20日の当日は昼前に快晴になった。
大きな目玉は、奥山清行氏率いるKEN OKUYAMA CARSのスーパースポーツ「kode57」の発表だ。低く構えたボンネットの先端には大きなエアダムが開き、その背後に6リッターV12エンジンがミドシップマウントされる。コクピットは左右が完全に独立式で、クラシックな雰囲気と未来的な雰囲気がうまくブレンドされて新しさを感じさせるのも特徴といえる。
「車名の57とは(フェラーリ「290MM」、マセラッティ「450S」、ジャガー「Dタイプ」、アストンマーティン「DBR1」といった)スポーツカー レースがさかんだった1957年へのオマージュ」と奥山氏はプレス資料で語っている。いっぽうひょっとしたら自身の年齢を記念につけたのかもしれない。奥山氏はkode57を自走させるなど現地での話題性は抜群。「いつ発売されるのだろう、とても興味ある」。みずからフェラーリのオーナーだという米国人の男性はクルマの前で大きな笑顔を見せてそう語っていた。
富裕層が集まるというこのイベントの性格に目をつけたメーカーは多い。ブガッティは1,500馬力の最高出力と1,600Nmの最大トルクを持ち最高速420km/hを謳う「シロン」を持ちこんだ。シロンの前にはさまざまな仕様の「ヴェイロン」がずらりと並べられた豪華けんらんぶり。観客がブースに詰めかけていた。北米はブガッティのセールスで3割を占める重要な市場のため気合いが入っていた。もちろんほかのメーカーも負けてはいない。
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ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング
クルマ好きなら飽きない
新旧スポーツカーが一堂に会す祭典 (2)
ひととクルマとの距離が近い
2016年8月20日の「ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング」に、自動車メーカー各社はさまざまなスポーツカーを持ちこんだ。ランボルギーニはごくわずか限定発売した「チェンテナリオ」のオープントップ版、「チェンテナリオ ロードスター」(限定20台)をここで発表した。清潔感のある真っ白なブースに置かれた同車のスタイリングはかなりの迫力だった。
メルセデスAMGはリアルスポーツカーとして評価の高い「GT」シリーズの頂点に位置する「GT R」を展示した。こちらが壇上で、希少価値では勝るとも劣らない52年にカレラ パナメリカーナ メヒコ レースを走った「300SL」は芝生である。少し笑ってしまった。GT Rは現在GTのラインナップで最もパワフルなGT S(510ps)のさらに上をいく585psというモデル。4リッターV8エンジンは新型ターボチャージャーの採用をはじめ、さらに煮詰められている。こちらも多くの人が詰めかけていた。
最も大きな場所を占めていたのはBMW。創業100周年を迎えるこのブランドは、モータースポーツこそ自社のヘリティッジであることを強調。もっとも高いところには「2002ターボ」と、ターボ技術こそ再びクルマにとって(性能の面でも効率の面でも)重要ということを訴えるためコンセプトモデル、「2002ホメッジ」を展示した。後者にはかつてポルシェ「934RSR」を飾ったドイツのリキュール「イエガー マイスター」のロゴをもじった「ターボ マイスター」と書いたユーモアもセンスがいい。
1930年代の「328」にはじまり、とりわけ70年代から花開くBMWのスポーティモデル、それも希少なものが揃った光景は圧倒的だ。「3.0CSL」「M1」「Z8」(米国でも人気が高い)、さらにBMWが6リッターV12を提供したマクラーレン「F1」まで会場にやって来ていた。BMWを支えるもう1つの柱、モーターサイクルの出展も多い。そもそも航空機の星形エンジンのコンセプトに端を発する水平対向エンジンとシャフト駆動というBMWモーターサイクルに憧れてきた人たちは米国でも多いようで、その前で長い時間を過ごす人も少なからず見受けられたのだった。
同時期に近隣にあるもう1つの高級ゴルフリゾート、ペブルビーチ ゴルフリンクスで開催される「ペブルビーチ コンクール デレガンス」はより高級でより希少度の高いクルマが集まるが、「ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング」はもっとピクニック気分に近い気軽な雰囲気が魅力だ。オソロシイのは、60年代のレーシングマシン、フェラーリ「250LM」(少し前に米国で11億円でオークションで競り落とされたというニュースがあった)まで普通に置かれていることだ。いろいろな意味で人とクルマとの距離が近い楽しいイベントである。クルマ好きだったら飽きないだろう。