CES 2016リポート 前編 「21世紀のフラワーチルドレン」が好むのは?
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2016年3月14日

CES 2016リポート 前編 「21世紀のフラワーチルドレン」が好むのは?

CES 2016リポート 前編

「21世紀のフラワーチルドレン」が好むのは?

毎年1月にラスベガスで開催されるコンシューマー エレクトロニクス ショー(CES)。その名前のとおり家電がメインのショーであるが、世界が注目する最先端の電子技術を披露する場ということもあり、近年は電子化が進む自動車業界も積極的に出展し存在をアピールする。その様子を、前後篇にわけて大矢アキオ氏がリポート。

Text & Photographs by Akio Lorenzo OYA

主役の一つはスマートウォッチ

世界最大級の家電エレクトロニクスショー「CES 2016」が、1月6日から9日まで米国ラスベガスで開催され、3,800におよぶ出展社・団体で賑わった。

1967年以来、ビデオカセット レコーダー、レーザーディスク、プラズマTVなど、エポックメイキングな製品のデビューで飾られてきたこのショー。今回の主役の一つは“スマートウォッチ”だった。
ここ数年のウエアラブル端末やドローン人気に代わるものといってよい。

サムソンやファーウェイ製の新型スマートウォッチは、操作性や表示されるグラフィックの多様性で、従来品をはるかに上回っている。

Casio Smart Outdoor Watch|カシオ スマートドア ウォッチ

Casio Smart Outdoor Watch

カシオの「スマートアウドドア ウォッチ」も秀逸だ。スタイリッシュなケースを持ちながら米国防総省の耐久試験をパス。時計のみ使用の「タイムピースモード」なら約1ヵ月以上という電池寿命を誇る。実際、会期2日めあたりから、「今年最大のトピック」として挙げる来場者が少なくなかった。

CES 2016リポート 前編

「21世紀のフラワーチルドレン」が好むのは? (2)

家電ショーのなかで存在感を増す自動車ブランド

そのCESといえば、過去数年自動車ブランドの進出が目覚ましい。

今回フォードは、自律走行車やアーバン モビリティを支援する電動アシスト自転車を展示する傍らで、ショータイムには催眠術師をフィーチャー。催眠をかけて「フォードGT」でラスベガスのストリップ通りをクルーズしているかのような感覚に陥らせるステージまで展開した。モーターショーを上回るお祭り感覚である。

ただし各メーカーの本来の目的は、もちろん先進技術のアピールであり、彼らに自社技術の採用を促すサプライヤーたちも同様に気合いを入れている。

2015年のトレンドは「オートノマス ドライビング」だった。メルセデス・ベンツが自律走行のコンセプトカー「F015 ラグジュアリー イン モーション」を展示し、アウディも自律走行テストを続けてきた車両を記者発表会場に滑り込ませたのは記憶に新しい。

BMW i Vision Future Interaction|ビー・エム・ダブリュー iビジョン イントラクション

BMW i Vision Future Interaction

Volkswagen Budd-e|フォルクスワーゲン バディ

Volkswagen Budd-e

いっぽう今年も、さまざまな先進技術のアプローチがみられた。

その一つはジェスチャー コントロールだ。BMWは新型7シリーズで採用したものを進化させ、3次元認識のシステムを搭載したコンセプトカー「iビジョン フューチャー イントラクション」を公開した。

トヨタはNTTなどと共同で研究中の「学習する人工知能」のデモンストレーションを展開した。30分後・1時間後・2時間後と時間の経過に従い、プリウスを模したモデルカーの衝突・接触回避の能力が高まってゆくのが分かる。

同時に今回は「クラウドやスマートホームとの連携」にもスポットが当てられていた。

その代表はフォルクスワーゲンが世界初公開したEVコンセプトカー「BUDD-e(バディ)コンセプト」である。

将来のEV戦略で用いるというMEBプラットフォームを採用すると同時に、LGエレクトロニクス製スマート家電と連携。オーブンの消し忘れや、留守中玄関ベルを鳴らした訪問客の映像を確認できたりする。引き出し状にせり出すリアバンパーは、駐車中に宅配荷物を受け取っておく“ドロップボックス”として機能する。

CES 2016リポート 前編

「21世紀のフラワーチルドレン」が好むのは? (3)

進化したハイテクはアナログを呼び戻すか

再び、家電・エレクトロニクス系のブースに戻る。

ポラロイドが展示した「Snap」は、ブランドアイコンであるレインボー色のラインをボディに抱くデジタルカメラだ。ディスプレイが省略されているかわりにプリンターが内蔵されていて、シャッターを押すと10数秒で「紙焼き写真」が出てくる。

実際にプリントされた写真を見ると、今日の高画質の基準からはほど遠い。

しかし、物理的に手にとって仲間と楽しめる写真は、今もって人々をそれなりに魅了するらしい。前述のカシオ製スマートウォッチと同じくらい来場者をひきつけていたのは、天晴れだった。

そこには超先進機能よりも親しみやすいシンプルさという、往年のアメリカ車に通じるマインドがある。

Faraday Future FFZERO1|ファラデイ フューチャー ZERO1

Faraday Future FFZERO1

前述の「バディ コンセプト」のデザイン モティーフは、かつてヒッピー文化の象徴だった初代VW「トランスポーター」だ。アメリカの若者たちが、その末裔であるバディ コンセプトを「クール」として受容するか、それとも彼らの祖父たちが既存の社会的価値観を捨ててフラワーチルドレンとなったように、あるときハイテックを見放してポラロイドSnap的フレンドリーを求め始めるのか。アナログレコードやカセットテープがリバイバルするなか、ちょっと興味深いではないか。

後篇へ続く

           
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