東京モーターショー 2015 リポート|Mazda
Mazda|マツダ
東京モーターショー 2015 リポート
次世代ロータリーエンジンに自分たちの夢を表現
今回のショーでもっとも早く発表をおこない、そして熱い注目を集めたのが、ロータリーエンジン復活への望みをコンセプトカーというかたちで具現したマツダだ。小川フミオ氏がその模様をリポート。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
一本筋の通ったマツダの戦略
マツダは、2015年の東京モーターショーで、最も注目を集めた自動車メーカーだ。それはひとえに「RXビジョン」の功績。なんともかっこいいスポーツクーペである。その理由は、ロングフードに、後輪の上にドライバーが座るほど後退したキャビンの組み合わせ。伝統的スポーツカーデザインにおける黄金律をそのまま具現化したようなスタイリングなのだ。
「RXビジョン」とは、読者は先刻ご承知だろうが、マツダのロータリーエンジン スポーツカー「RX」シリーズを思わせる車名をもつ。いまさら(燃費が悪い)ロータリー?と思った人が多かったせいか分からないけれど、話題性はじゅうぶんで、記者会見は押すな押すなの大盛況。プレスデイ初日の、朝8時半という早い次回のお披露目だったが、むんむんとしたクルマ好き男たちの熱気で満ちていた(その様子は下のマツダオフィシャルチャンネル動画で見られる)。いらい、このコンセプトモデルを取り巻く興味は衰えていない(はず)。
「FR(フロントエンジン/後輪駆動)スポーツカーの究極ともいえるスタイリングに、次世代ロータリーエンジン技術のスカイアクティブRを搭載しました。(量産に向けての)技術課題はありますが、開発を継続していきます」。発表会の席上で、マツダの小飼雅道社長がそう語ったことで、たんにショーを盛り上げるための“はりぼて”でないと知った報道陣はさらにどよめいたのだった。
マツダのブースは、東京・大田区の洗足店や、目黒区の碑文谷店といった新世代ショールームと共通するようなブラックの背景を使ったVI(ビジュアルアイデンティティ)が印象的だった。そこに並べられたのは、マツダ車のイメージカラーで塗られた数々のモデルだ。「RXビジョン」を筆頭に、ソウルレッドプレミアムメタリックと呼ばれる車体色に輝くモデルが勢揃いした。
マツダの存在感の大きさは、このようなやり方による、ブランドのトータルコンセプトの打ち出し方にある。さらに、デミオからCX5にいたるまで、すべてのモデルに「スカイアクティブ」技術と「魂動(こどう)デザイン」なるバックボーンが通っている。それを感じさせるブースなのだ。
流麗なスタイルのクロスオーバーSUVのコンセプトも一角を占めていた。
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次世代ロータリーエンジンに自分たちの夢を表現 (2)
ライフスタイル用品としてのスポーツカーを提案
マツダがクロスオーバーSUVと呼ぶのが「越KOERU」だ。デビューは、9月に独フランクフルトで開催された自動車ショー。やはり、生命感と品格を表現することを基本コンセプトとしたマツダの「魂動(こどう)デザイン」を特徴とするモデルである。
東京モーターショーのマツダのブースにおいても、プロフィール(側面)で観た時の、前後に伸びやかなスタイルという「越koeru」の印象は変わらない。キャビンもあえてコンパクトにまとめており、躍動感はSUVのカテゴリーを超えるものだ。こちらも注目を集めていた。
「越koeru」が将来、量産車に結びつくのか。マツダは明言を避けているが、噂によると、CX3とCX5のギャップを埋めるものになるとか。スポーツカーメーカーを自らのDNAと認識するマツダだけに、こちらもこの先に期待できるモデルだ。
「ロードスター」をある種のライフスタイル商品と位置づけているのも、東京モーターショーでのブースからわかることだ。これも興味ぶかかった。スポーツカーに力を入れるマツダだけあって、“ライフスタイル”とはレースを楽しむ生活と言い換えてもいいように感じられた。
今回、ロードスターに「グローバル MX-5 カップ仕様車」と、JAF(日本自動車連盟)公認ナンバー付きレース用「ロードスター パーティレース用品装着車」が設定され、実車が並べられていた。スポーツカーに乗ることが生活を楽しくする。自動車メーカーとしては真っ当な主張にうなずくばかりだ。この価値観ができるだけ多くの来場者と共有されることを祈るのである。