LEXUS IS F|理想主義から生まれた1台
LEXUS IS F|レクサス IS F
理想主義から生まれた1台
ISをベースに、高性能な大排気量エンジンを搭載するという、欧州のハイパフォーマンスサルーンと同様の文法と同様に則って開発さらたIS F。現在、レクサスでもっとも高性能は同車のブリーフインプレッション。
文=小川フミオ写真=荒川正幸
富士スピードウェイを走り込んで開発した足まわり
ISであってISでないと言えるのがIS F(780万円)。スーパースポーツLFAの登場を控えているが、2009年11月現在ではもっとも高性能でもっとも特別なレクサスだ。2007年12月に発表されたIS F、エンジンはLSに搭載されている4.6リッターをベースに排気量を拡大した5.0リッターV型8気筒。かつヘッドまわりからはじまり、吸気系、さらにオイルドレインまで徹底的に手が入れられ、市街地でもサーキットでも走れるクルマとして仕上げられている。
シャシーの剛性アップにくわえて、冨士スピードウェイを走りこんで開発したという専用設計のサスペンションを備え、4ドアセダンながら、スポーツカーなみの性能を誇るのもIS-Fの特徴だ。
5リッターV8エンジンは、筒内直接噴射およびポート噴射による高効率の燃焼システムと、回転域に応じてバルブの開閉タイミングを変えることで扱いやすくかつ速いという性能を両立させた連続可変バルブタイミング機構を備える。
くわえて同様に、回転に応じてインテークポートを切り替え、低中回転域では径の細いポートによって混合気を効率よくシリンダー内に採り入れることで充分なトルクを出し、いっぽう高回転域では太い径のポートによって必要な混合気をたっぷりと採り入れられるようになっている。このデュアルインテークもIS F専用だ。
よくしつけられた超高性能セダン
乗ると「よく出来ている」とまず思う。最高出力423psといっても暴力的なところはいっさいなし。デュアルインテークの恩恵もあり低回転域からたっぷりとしたトルクとともにクルマが加速していくが、パワー感の連続性は丁寧で、アクセルペダルの踏み込み方に細心の注意を払うことを要求されることはない。
回転が上がっていくと、インテークポートが切り替わり、同時にカムシャフトの位相も変わる。つまり高回転モードにクルマが入る。加速感は途切れなく、V8はぐいぐいと車重1690kgのこのクルマを押し出していく。そこからは日常見せる顔とはちがう、よくしつけられた超高性能セダンというIS Fのもうひとつの顔がのぞく。ハンドルは正確、かつサスペンションはロールを抑えてまさに「オン・ザ・レール」、レールの上を行くように、ラインの乱れなくきれいに走っていく感覚だ。
IS Fの魅力的なところは、比較的コンパクトなボディでありながら、高性能のパワートレインを搭載、かつ市街地走行でもスポーツ走行でもそつなくこなすところだ。専用パーツが多い室内も上質な作りで、レクサスのエンジニアが理想主義的に作った貴重な1台と思える。いまのうちに買っておくのも、少なくてもクルマ好きには有意義な投資のように思える。
LEXUS IS F|レクサス IS F
ボディ|全長4660×全幅1815×全高1415mm ホイールベース2730mm
車両重量|1690kg
エンジン|4968cc V型8気筒
最高出力|311kW[423ps]/6600pm
最大トルク|505Nm[51.5]/5200rpm
駆動方式|FR
トランスミッション|電子制御8速AT
サスペンション|F:ダブルウィッシュボーン R:マルチリンク
タイヤ|F:225/40R19 R:255/35R19
価格|780万円
レクサスインフォメーションデスク
0800-500-5577
http://lexus.jp
BRAND HISTORY
トヨタがアメリカ市場において高級車ブランドLEXUS(レクサス)を立ち上げたのは1989年のこと。トヨタが誇る高い技術力と優れた品質、そして極上の顧客サービスにより、アメリカやドイツの高級車とは一線を画す新しい価値を提供しようというのが狙いであった。
同年9月、「LS400」(日本名セルシオ)と「ES250」(同カムリ)がアメリカ市場に投入されると、翌1990年2月には早くもLS400がベストインポートカーを獲得している。その後もレクサスの評価は高まるばかりで、ラインナップの拡大とともに、高級車ブランドとしてのポジションを確実にしていった。
アメリカでの成功を受けて、2004年にはヨーロッパ進出を果たしたレクサスは、同年5月、日本での事業展開を発表。翌2005年8月には、母国での高級車ビジネスをスタートさせた。開業当初は、「GS」(トヨタブランドのアリストの後継車)、「SC」(同ソアラ)、「IS」(同アルテッツァの後継車)と、フラッグシップの「LS」を欠くラインナップだったが、2006年9月には待望の新型LS、そして、2007年5月にはそのハイブリッド版の「LS600h/LS600hL」を投入することで、ラグジュアリーサルーン購買層の期待に応えている。
一方、2007年10月にスポーツモデル「IS F」を発表、また、2008年5月に行われたニュルブルクリンク24時間レースに開発中のスポーツクーペ「LF-A」を投入するなど、スポーツイメージの獲得に力を入れており、さらなる人気拡大が期待される。