ASTON MARTIN one-77|アストン史上最速モデルのクレーを公開
ASTON MARTIN one-77|アストン・マーティン one-77
アストン史上最速モデルのクレーを公開
今年後半から来年初頭にかけて発表といわれる、アストン・マーティンのスーパークーペ「one-77」の開発が順調に進んでいる。さきごろアストンマーティンは、英国はゲイドンの本社のデザインスタジオで、その経過を報道陣にお披露目した。
文=小川フミオ
エンジンは700馬力超の7.3リッター
限定77台、価格は100万英ポンド(約1億3700万円)と謳われる「one-77」。アストン史上もっともパワフルなモデルとして、この経済情勢下でも「予約状況は好調」と広報担当者は話す。日本からもオーダーが入ったそうだ。700馬力超の7.3リッターエンジンをフロントにミドシップマウントし後輪を駆動するという、スポーツカーの定石を守ったレイアウトに、誰が見てもアストン・マーティンと知れる、エレガントなフォルムが特徴的だ。
「いまデザインセンターには25人が働いていて、うち5人がone-77に携わっています。デザイナー、モデラー、カラリストといった職業で、すべてがゼロから未体験のスポーツカーを作ろうという目標のために、非常に集中してこのプロジェクトのもとで働いています。たとえばサーフェス(ボディ面の作りこみ)が重要なので、デザイナーとモデラーの緊密な協力関係が必要ですし、ボディカラーも内装の材質も、この高価な限定モデルにふさわしいエクスクルーシブなものが求めまれていますから」(アストンマーティンのデザインを統括するマレック・ライヒマン)
アストンがアストンたりうるエレガンス
シャシーはアルミニウムとカーボンファイバーを特殊な接着剤で貼り合わせたもの。剛性感をもたせつつ、スポーツカーに大切な重量軽減を達成するために重要な技術と、アストン・マーティンでは自負する。被せるボディはアルミニウム製。すべて手づくりで、英国の伝統であるローリングマシンを使ったハンドホイーリングの手法で、均等かつ美しいカーブを実現している。
もうすこし、スタジオで話す機会を得たライヒマンの言葉を紹介しよう。「アストンマーティンをデザインするとき、つねに守るべき4つの要素があります。フィーリング、パワー、ビューティ、そして控えめさ。そのどれかだけ突出していてはいけないと考えています。たとえばドイツのメーカーが作っている4輪駆動の高価なスーパースポーツカーがありますが、あれはこれ見よがしのデザインで、アストン・マーティンを愛するひとの美意識からすると上品さが足りないと思います。one-77はスーパーアストンですが、アストンがアストンたりうるエレガンスを失ってはいけないのです」。
ひと目みてアストンとわかるデザイン
今回、報道陣に公開されたone-77はフルサイズのクレイモデル。「キャビン部分とリア部分、2つの大きな塊が組み合わさっているのがデザインのコンセプト」とライヒマンが語るように、大きく張り出したリアフェンダーと、そこからはみ出しそうな巨大な後輪が、700馬力のパワーを路面にしっかり伝え、これまで体験したことのないようなハイスピードの世界へドライバーを連れていってくれることを約束してくれているように見える。グリルからスタートしたキャラクターラインが車体側面を回ってリアまでつづき、それが一体感を生んでいるのも特徴的だ。DBSクーペより100mm低く、100mm短く、ボディ幅はほぼ2mとなる模様。
特徴といえば、one-77の大きな個性となっている分割式のヘッドランプはこれで生産に移るようだ。ひと目みて特別なアストン・マーティンとわかるデザインだ。その周囲の複雑なパネル構成は特殊な接着剤によって可能となったもの。アストンマーティンの伝統ともいえるフロントの開口部は比較的大きいが、これはラジエターを3つ収めるためで、「これが空気抵抗となることはないよう設計しています」とライヒマン。
アストン・マーティンではV12ヴァンティッジやDBSなどを手がけてきたライヒマン。子どもの頃からアストンマーティンはドリームカーで、「部屋にはDB4GTザガートのポスターが貼ってありました。男性的だけれど、かつエレガント。このコンビネーションはすばらしいと思っていました。いまのクルマで好きなモデルはアルファのブレラとか8C。上手にパワーとエレガンスを両立させていると思うからです」。建築ならスペインを中心に世界的な活躍をするサンチャゴ・カラトラバが好きだそうだ。構造美と動きをうまく建築に取り込んでいる建築家だ。アストンマーティンone-77は、建築に比肩しうる高度な総合芸術になるかもしれない。