北京で開かれた、アストン・マーティンとアートの共演「Aston Martin meets Art」
Aston Martin meets Art
北京で開かれた、アストン・マーティンとアートの共演
英国の高級スポーツカーメーカー、アストン・マーティンが先ごろ、北京で中国人アーティストによるインスタレーションを発表。上海に続いて北京に今年ショールームを開設した同社が、「高級車とアートは相性がいい」(ドクター・ウルリッヒ・ベツCEO)とする、「アストン・マーティン・ミーツ・アート」の一環だ。
文=小川フミオPhoto by Aston Martin Lagonda
北京でのインスタレーションに使用されたモデルは、生産数が限られているアストン・マーティンのラインナップのなかでもっとも“売れ線”の「V8ヴァンテージ」。この春、排気量が4.7リッターに拡大するとともに、変速機をはじめ各所がファインチューニングされ洗練度が上がった、2シータースポーツカーだ。
ベルリンで活躍する中国人アーティスト、秦玉芬(シン・ユーフェン)は、V8ヴァンテージを用いながら、「歴史をもちながら、未来へと疾走するアストン・マーティンの姿を、北京と二重映しにした」とする作品をつくりあげた。
「北京008」と題されたインスタレーションは、北京の市街地図が織り込まれたカーペットの上にV8ヴァンテージが置かれ、頭上には英国の理論物理学者スティーブン・ホーキング博士とおぼしき人物の像。
そしてクルマの行き先には、らせん状のドームがあり、「時間のなかで無秩序は増大する、なぜなら私たちは無秩序が増大する方向で時間を計測しているからだ」というホーキング博士の言葉が内部に大書されている。
難解といえば難解。しかしドクター・ベツは「われわれがつくるクルマは走る芸術。少ない人数でコンセプトに忠実につくりあげる点で、このようなアートと近いところがあるかもしれない」とご満悦の様子だった。
これまでに「アストン・マーティン・ミーツ・アート」では、フランスの高名な建築家、ジャン・ヌーベルをはじめ、世界中のアーティストとインスタレーションをつくってきており、アートを好む富裕層に対して、存在感を強くアピールすることに成功しているようだ。
「シンプルだけれどたいへん機能的、という意味で、高性能スポーツカーはオリンピックスタジアムと似ているかもしれない」と、北京で先ごろ開かれたオリンピックを意識してドクター・ベツは、発表会場となった北京の「トゥデイ・アート・ミュージアム」で語り、そしてこう続けた。
「私の望みは、(ロンドンのコンテンポラリーアートの美術館である)テート・モダンにインスタレーションが飾られることです」
スタジアムとミュージアム、まったくかけ離れたように思える施設の橋渡しをしてしまったような、アストン・マーティンの「新作」である。