BMW アルピナ B5 ビターボ リムジンに試乗|Alpina
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2014年12月10日

BMW アルピナ B5 ビターボ リムジンに試乗|Alpina

BMW ALPINA B5 BITURBO LIMOUSINE|
BMW アルピナ B5 ビターボ リムジン

アルピナという選択

BMW アルピナ B5 ビターボ リムジンに試乗

BMWの5シリーズをベースに、スポーティさと優雅さを高次元で融合させた「BMW アルピナ B5 ビターボ リムジン」。新型M5に匹敵し、トルクでは凌駕するその性能を体験できるのは、アルピナオーナーだけに許された特権だ。その真価を青木禎之が語る。

Text by AOKI Yoshiyuki
Photographs by ARAKAWA Masayuki

5パーセントのパワーアップにかける意味

BMW5シリーズベースのアルピナモデル、BMW アルピナ B5 ビターボ リムジンの洒落たカタログ。そのスペックページには、半透明の訂正シートが追加されていた。

「スーパースペック、さらに進化したパフォーマンス」と赤字で題され、B5のフロントに押し込まれた4.4リッターV8ターボのアウトプットが、最高出力382kW(520ps)から405kW(550ps)に、最大トルクは715Nm(72.9kgm)から730Nm(74.4kgm)に向上したことが記されている。

5パーセント程度のパワーアップに意味があるのか? カタログによると”ある”。0-100km/h加速は4.6秒から4.5秒に、最高速度は307km/hから319km/hになっている。燃費はどうだ? 7.5km/ℓのままだ。

BMW ALPINA B5 BITURBO LIMOUSINE| BMW アルピナ B5 ビターボ リムジン

BMW ALPINA B5 BITURBO LIMOUSINE| BMW アルピナ B5 ビターボ リムジン

かつてのスーパーカー少年たちなら、この手の数字がいかに重要なことかを理解していいるだろう。跳ね馬とファイティングブルの最高速(数値)競走にワクワクした経験を思い出してほしい。

2010年、エンジンの過給器がスーパーチャージャーからターボに変更された2代目B5がリリースされたとき、(一部の)クルマ好きの間で、「5リッターV10を積むM5よりハイスペック!」と騒がれた。いうまでもなく自然吸気のエンジンとターボを比較してもあまり意味がないのだが、まあ、そうした数字遊びって、楽しいものだから。

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BMW アルピナ B5 ビターボ リムジン

アルピナという選択

BMW アルピナ B5 ビターボ リムジンに試乗(2)

新型M5とはちがう個性

エンジンがさらに高性能になったBMW アルピナ B5 ビターボリムジン。価格は据え置きの1,495万円。最高出力300kW(407ps)、最大トルク600Nm(61.2kgm)のスペックを持つBMW 550iとの比較で、3割増しのパワーを手に入れる代価が455万円也……というより、412kW(560ps)、680Nm(69.3kgm)の新型M5とはちがう個性のスーパーBMWをおなじ価格で手に入れられる、といったほうがいいかもしれない。

BMW ALPINA B5 BITURBO LIMOUSINE| BMW アルピナ B5 ビターボ リムジン

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もっとも、この手のクルマは、好みのオプションを付けていくと、たちまち(普通の)クルマが買える金額に達するのは、よく知られるところ。今回のB5も、右ハンドル仕様を選んだ途端、39万7,000円のプラス。アルピナらしいボディペイント(ブルーまたはグリーン)を選ぶと55万円。アシの硬軟、車体のロールを統合制御するアダプティブドライブは29万8,000円。駐車時に大事なクルマをブツけては大変と、リヤビューカメラを装着すると9万6,000円。

そんなこんなで、テスト車には総額194万円のオプション装備が付いていた。庶民にはビックリの金額だが、愛車を自分好みにするための出費をケチるようでは、アルピナに乗る資格がないのかもしれない。

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BMW アルピナ B5 ビターボ リムジン

アルピナという選択

BMW アルピナ B5 ビターボ リムジンに試乗(3)

アルピナのいいところ

アルピナブルーに塗られたB5が、雨に濡れて停まっている。地に擦らんばかりの大きなエアダム。控えめなリヤスポイラー。ホイールハウスは、薄いゴムを巻いた20インチでいっぱいだ。ハイパフォーマンスを暗示するアイテムを身にまといながら、しかし見る人に優雅で繊細な印象を与えるのが、アルピナのいいところ。

インテリアは黒の革仕様。ミルテ(Myrte)と呼ばれる赤みがかったウッドパネルが華やかだ。メーター類はブルー。アルピナの赤と青の盾を色で反復しているわけだ。

BMW ALPINA B5 BITURBO LIMOUSINE| BMW アルピナ B5 ビターボ リムジン

BMW ALPINA B5 BITURBO LIMOUSINE| BMW アルピナ B5 ビターボ リムジン

革巻きのステアリングホイールを握って走りはじめれば、扁平率35/30(前/後)のタイヤを履いているとはおもえない乗り心地のよさ。レーシーな格好、スポーティな外観、ハイスペックなメカニズム、それでいて快適性を犠牲にしないクルマづくりが、ワガママなリッチ層を納得させつづけるコツなのだろう。街中では電制サスペンションを「コンフォート」にセットして穏やかに流す。贅沢な気分だ。

新型M5がツインクラッチ式の7段AT(2ペダル式MT)を採用しているのに対し、B5ビターボはコンベンショナルなトルコン式8段ATなのも、市街地をゆるゆると走るときには気楽でいい。ただし、4,910mmの全長、1,860mmの全幅をもつ大きさは、狭い道を行く際には少々気遣いがいる。いまやベースとなった5シリーズは、初代7シリーズを凌駕する体躯に育っているのだった。

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BMW アルピナ B5 ビターボ リムジン

アルピナという選択

BMW アルピナ B5 ビターボ リムジンに試乗(4)

新型M5より、50Nmも大トルク

高速道路でハイスピードクルージングを楽しむには、さすがに「コンフォート」のままでは緩すぎる感があるので、シフター横のボタンで「ノーマル」もしくは「スポーツ」を選ぶ。全体にシャキッとした印象に早変わりし、無言のうちに速度を要求するモードとなる。

BMW ALPINA B5 BITURBO LIMOUSINE| BMW アルピナ B5 ビターボ リムジン

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ギヤは8段あるとはいえ、1速で60km/h付近、2速ですでに90km/hに達するから、あまりいい気になってアクセルを踏むわけにはいかない。料金所から4.5秒。100km/hに達するまでが、B5ビターボ オーナー、至福の時である。30psアップの霊験あらたか!? それは、よくわからなかった。15Nm(1.53kgm)太くなった最大トルクの方は? こちらもよくわからなかったが、これだけは言える。
「あたらしいB5ビターボは、新型M5より、50Nm(5.1kgm)も大トルクなんだぜ」。

数字は大事ですから。

spec

BMW ALPINA B5 BITURBO LIMOUSINE|
BMW アルピナ B5 ビターボ リムジン

ボディサイズ|全長4,910×全幅1,860×全高1,490mm
ホイールベース|2,970mm
トレッド 前/後|1,600mm / 1,600mm
車輌重量|1,950kg
エンジン形式|V型8気筒+ターボ
総排気量|4,394cc
最高出力|405kW(550ps)/5,200-6,250rpm
最大トルク|730Nm(約74.4kgm)/2,800-5,000rpm
トランスミッション|8段AT(スイッチトロニック)
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン / マルチリンク
タイヤ 前/後|255/35ZR 20 / 285/30ZR 20
ホイール 前/後|8.5 x 20 / 9.5 x 20
最高速度|319km/h
0-100km/h加速|4.5秒
燃費|7.3km/ℓ(JC08モード)
価格|1,495万円

           
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