BEAUTY /
THE EXPERTS
2015年5月11日
藤原美智子の「色」ものがたり第1回 6月 朝明けの青
2008.06 朝明けの青
オウプナーズで色にまつわる連載を始めることになりました。色は、ヘアメイクアップアーティストの私にとってとても大切なものです。
微細な色のニュアンスを見分けながら、繊細に色とかかわってきました。だからこそ色にかんしては自分なりにさまざまな思いがあります。そうしたお話をオウプナーズでできることは、自分にとってもとても楽しみです。
連載第1回は、夏を前にして……。明日、早く起きてみませんか。いつもより。
文=藤原美智子photo by Jamandfix
朝明けの青
20代のころ、『ディーバ』という映画を見て、あることに感動したことがあった。
それは主人公の郵便配達人である少年と、彼のディーバ的存在であるオペラ歌手が早朝の公園を散歩していたときの、空気感の美しさだ。透明感があり瑞々(みずみず)しさを湛(たた)えた「青」の、なんと美しいこと。“日常”が動きだす直前の空気感には特別な何かが宿っている──。そんなことを感じたワンシーンだった。
数年前、この映画を観直したときに、そんな特別な空気感に自分の身を浸してみたくて、いろいろな時間帯に起きてみたことがある。それでわかったのだが、季節によって多少早まることはあるが、その特別な空気感というのは5時半だということだ。
6時になってしまうと、もう日常感が覆ってしまい青は消えてしまうし、5時半前では“夜の静謐な青”という感じで透明感に欠ける。夜と日常が動き出す境い目の特別な青の時間……、それが5時半なのである。
それ以降、私の起きる時間は5時半となった。そして、一瞬で消え去っていく特別な青い時間帯を楽しんでいる。