藤原美智子の「色」ものがたり第2回 7月 マティスの黄色
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年5月11日

藤原美智子の「色」ものがたり第2回 7月 マティスの黄色

2008.07  マティスの黄色

文=藤原美智子photo by Jamandfix

マティスの黄色

7月の花、向日葵を見ていると連鎖的にマティスの絵が思い浮ぶ。向日葵の黄色と同様、マティスが描く黄色も観る者を明るく元気な気分にさせてくれるからなのだろう。

マティスの代表的な絵画である「生きる喜び」、あるいは「青い静物」「赤い食卓:赤い調和」「黒地の上の読書する女」など、多くの彼の絵には黄色が重要なアクセントとして用いられている。また「ミモザ」や「千夜一夜物語」といった、晩年の手法である切り紙絵の作品にも黄色は多く使われている。それらの、どの黄色にも「幸せ」が宿っていると感じるのは私だけではないはず。彼のクリーンで温かみのある黄色は、人に「生きる喜び」を感じさせる色なのだ。『マティス 画家のノート』(みすず書房)で彼は語っている。「私が夢みるのは疲れを癒す(文中省略)よい肘掛け椅子に匹敵する何かであるような芸術である」と。

20代の終わりごろ、この本に出会い「人が幸せを感じられるようなメイクをつくれるようになりたい」と強く思ったのだが、今にして思えば、それが私の根幹的なものとなったように思う。

そんなマティスの黄色のように、自分の創ったものが人に幸せを与えられているかどうか――。たぶん一生、自分では確信できないことかもしれないが、求める気持ちだけは忘れないように、と自分を戒めている。

           
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