連載|藤原美智子|プロデューサー映画と動物映画で涙して、美しく!?
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年2月10日

連載|藤原美智子|プロデューサー映画と動物映画で涙して、美しく!?

「プロデューサー映画と動物映画で涙して、美しく!?」

毎年「いつも冬って、こんなに寒かったっけ?」と思ってしまうのだが、今年の冬はホントに寒かった。こんなに寒いと外に出るのが億劫になる。休日だとなおさらだ。そんな日、どのように過ごすひとが多いだろうか。たぶん「家でDVDの映画を観る」というひとは多いのでないだろうか。寒さに弱い私も当然、“お家・映画観賞派”である。というわけで今回は、寒い日々に観た映画(注:新作ではありません)のいくつかのご紹介を。

文=藤原美智子

プロデューサーには欠かせない要素とは?

まずは、偶然にもレンタルしてきたものが2本とも“映画のプロデューサー”が主人公だったというものから。一本はフランス映画の『あの夏の子供たち』。もう一本はロバート・デ・ニーロ(すごいはまり役!)が主役の米映画『トラブル・イン・ハリウッド』。大まかなストーリーが似ているぶん、仏と米のスケールやものの見方のちがいがよくわかっておもしろい。でも、どちらも観たあとの感想は“プロデューサーの仕事って大変だなー”というまことにストレートなものである。スポンサー側からも俳優側からも、それぞれの主張を言われ放題。それをうまくなだめながら、つつがなく進行させるのがプロデューサーの大きな仕事であり、苦情だの頼みごとだのの用件で一日中、あちこちからかかってくる携帯電話とは妻よりも親密(!)な間柄である。仏・米映画どちらにも、妻が「私といるときは電話に出ないで!」とおなじような台詞を言うシーンがあるのがおもしろい。この台詞こそが、この職業をいちばん的確に物語っているということなのだろう。

また、どんなに資金があっても予算オーバーになっていくのが制作現場の常。それに頭を抱えるのもプロデューサーの役目である。だから神経が細やかすぎるひとや几帳面なひと、完璧主義のひとよりも、ある意味、性格がノー天気になれるひとでないととても務まらない職業といえるだろう。そして、どんなに理不尽なことを言われても「まぁまぁー」と相手をなだめられる器量がないと、これまた務まらない。私なんか、そんなことを言われたら「それはちがうんじゃないの!!」と喧嘩になってしまうに決まっている。だいたい女子のほうが潔癖症のひとが多いと思うのだが、それが良いとも正しいとも限らない。ましてや、それが裏目に出てしまう確率が高いのが、このプロデューサーという職業である。クレーバーなだけでなく、自分の主義主張よりも相手のことを優先できるひと、ひとが好きで面倒見のよいひとがプロデューサーには欠かせない要素のようだ。そういえば、CMの撮影でいろいろなプロデューサーと仕事してきたが、やはり、ある意味皆さんに共通していた人柄だったかも……!

それにしても、この2本の映画が偶然にもおなじころに公開された(日本公開は2010年)ということは、それだけプロデューサーという職業がフィーチャーされているということだろうか。いや、というよりもネット社会のいま、人間味溢れる(!)プロデューサー気質そのものが懐かしくもあり、愛すべき存在としてクローズアップされたのかもしれない。機械とちがって、人間というのは理論理屈通りにはいかない生き物なんだよねーと、泣ける映画である。

藤原美智子|あの夏の子供たち 02

『あの夏の子供たち』

藤原美智子|あの夏の子供たち 03

『あの夏の子供たち』

周期的に涙したくなる理由

泣けるといえば、周期的に観たくなるのが“泣ける映画”だ。そんな気分のときは動物ものを選ぶと、まずまちがいない。先日観たのは『マイ・ドッグ・スキップ』という子どもと犬とのふれあいがテーマの映画だ。これだけでも、だいたいどんなストーリーか想像できると思うので内容は省略するが、涙を流したいときにお薦めの心あたたまる映画である。犬といえば、日本の忠犬ハチ公の物語をリメイクしたリチャード・ギア主演の『HACHI約束の犬』を観たときも泣けた! 雪が降り積もるなか、二度と帰らない主人をいつまでも待っている姿に滂沱(ぼうだ)の涙! ハチ公の無垢で献身的な瞳に「なんて可哀相なの~。なんてかわいいの~」と涙しながらも、足もとで私のスリッパを「アウウウ~」と言いながら噛んでいるうちの駄犬と賢いHACHIとのちがいにまた泣けた……!

それにしても、どうして周期的に涙したくなるのだろう。そういえば、うちのアシスタントが「魂が浄化されるから、周期的に泣いたほうがいいんですよ」と言っていたなー。涙を流すことで、いろいろなものが洗い流せるということだろうか。それが本能的にわかっているから、周期的に泣きたくなるということなのだろうか。歳を重ねていくと涙もろくなるものだが、私は、それはひととして深みが出てきて、ひとの痛みがわかるようになるからだと思っていた。でも、それだけではないのかもしれない。歳を重ねるほど欲やら悪やら、余分なものが積み重なっていくからこそ、そうしたものを洗い流したいという本能が働くからなのかもしれない。でも、それで洗い流すことができるなら、泣かなくては損というものだ。おおいに“泣ける映画”を観なくては!……そう思うことこそが欲深い、ということか。

泣くことのほかの効用として、アシスタントが「満月の光りを浴びながら涙を流すと、翌朝の肌のきれいさがぜんぜーんちがいますよ!!」とも力説していたなー。それはまだタイミングが合わずに試していないが、そのときには犬の映画を思い出しながら涙を流してみることにしよう。そうそう、人間味溢れる“プロデューサー”の姿も思い出しながら、ね!

藤原美智子プロフィール

           
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