小林ひろ美│2009年秋冬ビューティトレンド(3)「ナチュラルコスメ&ヒーローコスメ編」
小林ひろ美の2009年秋冬ビューティトレンド(3)ナチュラルコスメ&ヒーローコスメ編
「使うことで、肌だけでなく、こころの充実度もアップ」
オウプナーズBEAUTY恒例、ビューティディレクター・小林ひろ美さんに聞くビューティトレンド。
2009年秋冬の第3弾は「ナチュラルコスメ&ヒーローコスメ」です。
まとめ=染谷晴美写真=高田みづほ
ひとにも環境にも優しいコスメを求める人びと、増加中
化粧品の進歩のスピードはとてもはやく、従来の商品では物足りなくなるほど、どんどんハイテク化が進んでいます。とにかく自分の肌をなんとかしたい、きれいになりたいというひとにとって、この傾向はうれしい限り。でも、いっぽうでは「そういうものってどうなの?」と考えるひともいて、その割合は徐々に増えてきているのも事実です。
それらはおもに、ナチュラル志向のひと。外側からも内側からもあまり過激なことはしたくない、まずは“こころ”からきれいになりたいと願う人びとです。
そこで、化粧品もエコロジカルなもの、ひとにも優しく地球にも優しいものがどんどん出てきているわけですが、プラスアルファの要素があるせいか、それらは少々割高になる場合も。
でも、心からきれいになりたいと願うひとたちは、そういうものに対しては出費を惜しまない。あるメーカーがリサーチしたところ、2割増ぐらいまでならじゅうぶん許容範囲という調査結果が出ているそうです。
彼らは、即効性よりも、たとえば、どこそこの国のある原料を使うことで現地の労働環境が活性化するならぜひ使いましょう、原料にしても、採ったら抜きっぱなしにするのではなく、また種を植えて、もとのような状態になるまでしっかりサポートします、パッケージもなるべく土に還る素材を使っています、というようなメッセージにこそ、こころを動かされる。
それを使うことで、「私はいま、とてもよいことをしている」って思えて、自分もうれしいし環境にもめちゃくちゃいい。そんなふうに、買っただけで、“自分がヒーロー(英雄)になれるようなコスメ”には、プラス20%を払えるんですね。
つくるひと、使うひと、みんながハッピーになれるヒーローコスメ
今回は残念ながら用意できなかったのですが、フランスのアイニーというブランドは、ヒーローコスメの代表格。某大手化粧品会社で活躍されたひとが、独立して立ち上げたブランドです。
自分勝手なコスメをつくってお金もうけをするのは、どこかはかない気持ちになるし、コストや原料を考えると、アフリカのどこそこのなにがいいとなって、結果的に、現地の人びとを奴隷のように働かせてしまうことになる。
もちろん途上国への進出も労働環境を創出するという意味ではよい面もあるけれど、メーカーの手足として使うだけ使って「はい、おしまい」ではよくないし、それでは我々の心も浄化されないから、教えてもらったメソッドは全部還しますよと、そして、彼らのサポートをしますよ、資源も再生させますよと声高に宣言したら、その思いに賛同するひとたち(ユーザー)がものすごく多くて、予想以上の売り上げなのだとか。ブランドとして、いま右肩上がりに成長しているそうですよ。
もうひとつ、フランスでたいへん支持されているのが、クレール カラメルというブランド。エコサートの認証(オーガニック認証の世界基準)もとっている自然派コスメですが、このブランドのいちばんの特徴は、徹底したエコ意識でしょうか。
まず容器とレフィルをそれぞれに購入し、使い切ったら、次は中のレフィルだけを買うというシステム。つまり、容器を“使い捨てにしない”んですね。
何度も使用すると衛生的に不安になるところですが、もちろんその点もちゃんと考えられていて、詰めかえ時には容器を煮沸してくれるサービスが用意されています。お店にはマイバック持参で行くのが基本で、うっかりマイバッグ忘れたひとに対しては、土に還る素材でつくられた袋に入れてくれる。とことん、環境のことを考えています。
素材にこだわり、からだの内と外から働きかけるナチュラルコスメ
つづいて、素材にこだわり、からだの内と外から働きかけるナチュラルコスメ。まずひとつめのご紹介は、アルガンオイルの効能に着目した、フランス生まれのスキンケアブランドruhann(ルアン)です。
“アルガンオイル”は、モロッコにしか生息しないアルガンツリーの種子から抽出される、たいへんに稀少なオイルで、現地では、古くから民間の治療薬として用いられてきました。ルアンの商品は、エコサート認定を受けたアルガンオイルをたっぷり配合。乾燥の気になる肌をおだやかに、かつスピーディにケアしてくれます。
とにかく、フランス人が「これはいいよ!」と薦めるだけあって、なかなかにいいブランド。海外で見かけたらぜひ手にとってみてください。
スンダリもお薦めです。これは、スーパーモデルでありヨガマスターでもあるクリスティーナ・ターリントンらが立ち上げたブランドで、インドの伝統的な学問「アーユルヴェーダ」がベースになっています。
からだのめぐりをよくしていくという、インナービューティを謳っているブランドなので、パッケージの内側にもデザインをほどこすなど、細部にまでこだわりが。香りも、ヨガっぽく東洋的で、ほのかにスパイシー。とにかくいま、からだのなかからきれいになりたいと願うひとたちに、とっても受けているブランドで、日本でも人気上昇中です。
おなじく、日本でもおなじみなのがコレス。ギリシャの小さな薬局から生まれたこのブランドは、ギリシャの天然ハーブからつくられる良質なプロダクトが特徴です。どのアイテムも自然の恵みがたっぷり。なかでも、「ハマメリス フェイスウォーター」というローションは、植物成分がなんと33パーセントも入っている。価格が2000円台とお手ごろなので惜しみなく使えます。
さらに注目は、この秋登場した新シリーズ「マテリアハーバライン」。スイスのオーガニック研究室とのコラボレーションによって生み出されたというこのシリーズは、全9商品すべてがエコサート認定を受けているそう。期待大です。
自分がきれいになれれば満足か否か、あなたはどっち?
誰でもどこかに環境問題や安全に対しての意識が少なからずあるはず。そういうなかで、具体的に行動を起こしはじめているひとたちがどんどん増えている。
そして、彼らは“美のアンテナ”もそっちに向けています。
世界的な大きなメーカーにいたひとが、「いやちがう、私がやりたいのはそういう商業主義じゃないんだよ」と、だから辞めます、自分でやりますって。これからは、ひとに還していける、地球に還していけるものをつくらなきゃだめだと考えるリーダーたち。
誰のためのコスメなのか。自分がきれいになれれば満足なのか、そうじゃないのか、「あなたはどちら?」って、いまは問いかけられている時代なのかもしれません。
※商品はすべて私物