連載・田中 玲|其の二「白い食卓」
Beauty
2015年4月30日

連載・田中 玲|其の二「白い食卓」

其の二「白い食卓」

夏が来た。建物も緑も夭夭(ようよう)に反射して街が白い。

文=田中 玲写真=中川昌彦

夏の飲み物と言えば、大抵のひとは「カルピス」と言うかも知れない。いや、ビールかも。ともかく私の夏の定番の飲み物は「カルピス」なのです。それも「カルピスウォーター」ではなくて、原液を薄めて飲むほうが夏らしい。「グラスに氷を入れて、原液を好みの濃さで水で割る」というこの手を込めた作業が、美味しさを深めている。私はカルピスもカルピスウォーターも好きだけれど、カルピス通の友人に言わせると、やはり、カルピスは原液を割って飲むものだそうです。

カルピスのように、私は「白い食べ物」を好んでいた時期がありました。味云々より、ただ色が白いことのみ。という理由で、豆腐、牛乳、白い豆、ヨーグルト、白いパン、など全体的に白っぽい食べ物を選んで食していました。
なぜなら、白い食べ物は、肌の色を白くしてくれるような気がしたからです。反対に、美白を心がけていた私は、チョコレートなど色の濃いお菓子を避けていました。

私の好きな作曲家のひとりである、エリックサティは、神秘主義やダダイズムなどにも傾倒していて、食器など真っ白な色ばかりに統一し、白っぽい食品中心の食べ物を選び、“白い食事”といって楽しんでいたそうです。魅力的かつ摩訶不思議な美しい音楽を創る芸術家と、動機はかなり異なっているけれども、”白い食事”という共通点がうれしい親近感を覚えます。

今では、食卓が色で溢れている食事が栄養バランス的にも良いことは分かっていますが、白い食べ物には白いなりに、美白ではなく美肌にもっていく力があるようです。豆腐にしても豆にしても低カロリーで高タンパク、カルピスにしても乳酸菌の力で腸を強くする。など栄養価は素晴らしい。

あながち私の白い食べ物たちへの思いはまちがいではなかったのかな。と、日に日に迫ってくる太陽光線と、頭のなかを移ろってゆくサティの白くて淡い旋律で、眼の内側が真っ白になる夏の光に、胸を焦がす。

夏の定番飲み物はやっぱりカルピス、お腹に良いし、美味しいし、暑い日には最高ですね!

           
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