トータルアンチエイジングができること(後編)
Beauty
2015年5月12日

トータルアンチエイジングができること(後編)

トータルアンチエイジングができること

──メディアージュクリニックでの講演会より(後編)

斎藤糧三さんが Chief Medical Officer を務める『メディアージュクリニック』主催の「トータルアンチエイジング治療最前線」セミナー。今回も引き続き、その模様をお届けします。

文=染谷晴美(本誌)Photo by Jamandfix

“機能性低血糖症”という病態

糖代謝のお話です。斎藤先生いわく「自分は糖尿病じゃないから関係ない、と思われるかもしれないけれど、これはとても身近な問題なんです」。
たとえば、うつ病、パニック障害、慢性疲労、神経症、過食症、頭痛、ニキビ、アトピー性皮膚炎などの疾病も実は、低血糖症が関与している場合が多いのだとか。ところが、一般の人々はもちろん、医師でさえも、そういう意識を持っていないのが現状。つまり、症状をおさえつける治療ばかりで、原因に対する治療がされていないと指摘する斎藤先生。

食事の1時間後に、すごく眠くなるとか、労働力が落ちてしまうという人は低血糖症の可能性があります。低血糖になると、体は『このままでは死んでしまう』と思い、交換神経を興奮させて体内で糖をつくりはじめます。すると、血糖値は確かに上がるのですが、交換神経が興奮しているため、キレる、焦燥感が出る、不眠になる、吹き出物が出るといった事態に。場合によってはパニック症候群、アトピー性皮膚炎、神経症などの症状が出ることもあります。
また、交換神経が興奮=戦闘モードで、ごはんを食べなきゃという意識が加速。結果、過食に走ったり、ストレス食いをしてしまったり。本来は、そういう空腹感をおさえるはたらきをするのがセロトニンなのですが、タンパク質がじゅうぶんに摂れていないと、代謝のメカニズムが機能しないためセロトニンも出ない(神経伝達物質であるセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンは、タンパク質を原料に、ビタミンB群、亜鉛、鉄、マグネシウムがはたらくことによって活性化される)。だからずっと空腹のまま。で、また食べてしまう……。そういう悪循環をくり返す人は多いですね」

機能性低血糖の症状に苦しんだSさんのお話

斎藤先生のもとで機能性低血糖症を治療したSさん。セミナーではマイクを持ち、ご自身の経験を語られました。

予期せず強い焦燥感におそわれるなど、気分むらが多く、次第に仕事にも差し支えるようになり自信も喪失。ついには会社を休み自宅に引きこもってしまう。心療内科へも行ってみたが、ある日、友人から斎藤先生のクリニックへ行くことを勧められ、来院。

早速、斎藤先生が調べてみると、タンパク質がぜんぜん足りない。数値は基準値内だったけれど、基準値と“至適値(最適な代謝)”はちがう。実はそこが落とし穴。基準値内なら自動的にA判定としてしまうため、異常が見落とされるケースが多いのだとか。Sさんの場合、タンパク質以外に亜鉛なども少なく、メンタルなリカバリー力が落ちていたという所見。治療は、斎藤先生が処方したビタミンのサプリメントと、プロテインの摂取のみで行ったそうです。

斎藤先生 治療をはじめてどうでしたか?

Sさん プロテインを1日に2、3回飲むようになってから、だんだん調子がよくなりました。精神的にも肉体的にも。

斎藤 僕は炭水化物を避けるように言いましたね。

Sさん はい。ほかのクリニックでは、うつ病とか、統合失調症とか、パニック障害とかいろいろ言われていたのが、炭水化物を控えたら、それらの症状は4、5日でほとんどなくなりました。
斎藤先生に診ていただく前は、もともとお米が好きだったこともあり、イライラや不安感におそわれると炭水化物ばかり摂ってしまって、その結果、激太り。これはまずいと食事制限をしたら、今度は激痩せで、爪も髪もお肌もボロボロ。それのくり返し。でも、それは自分の甘えだと思っていたんです。

斎藤 Sさんのように、自分を責めてしまう人はとても多い。精神的な弱さがある人はどんどん追い込まれて、心療内科よりもむしろ精神科のほうへ流れてしまう。それが機能性低血糖症という病態です。

セミナーを終えて、斎藤先生にインタビュー

──今日はいかがでしたか? 報道関係の方もたくさんいらしてましたが

斎藤 これから主流になっていく考え方というのは伝わったかと思います。現在の健康状態というのは、親からもらった体、つまり遺伝的要素と、どういうものを食べてどういう仕事をしてどういう生活をおくってきたかという環境的要因によって規定されています。ですから、健康寿命を伸ばすには、それらを最適にマネジメントしていくことが大事なんですね。

現代人の大部分が病んでいるという自覚と同時に、本来あるべき健康イメージを持つことがアンチエイジングの出発点であると考えています。そして、患者さんと目指すべき健康イメージを共有し、具体的な方策を構築し実践するというのがアンチエジング医療であると思っている。
「調子が悪い」といって訪れる患者を検査し「検査上は異常ありませんね」という、よくある診療風景は、もちろんアンチエイジング医療ではないですし、僕自身は医療と呼ぶことさえ抵抗があります。

アンチエイジングというキーワードは、新しい健康、医療に気づいてもらうためのキッカケであり差別化なんです。血圧、コレステロールが下がった! ではなくて、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を増し、健康寿命を最大化するためにはどうするか? ということ。つまり、現代人にとって、おぎゃーと生まれた時からアンチエイジングは必要なのです。

──トータルアンチエイジングはうつも治すと知り驚きました

斎藤 うつになる人は、食生活や生活習慣、情報量だったりがマッチングしていないんですね。常にいろいろなストレスにさらされている人が、ちゃんと自分の体をマネジメントするだけの抗ストレスのメカニズムを持ちながら、それを動かすガソリンがない。そうすると、どうなるか。

大酒飲みと下戸の人がいます。両者は、見かけ上は同じでも、体のなかの代謝は違う。固体差は30倍もあることが、最近わかってきました。このように、代謝には個性がありますから、おなじ代謝をするにも、栄養素が多めに必要な人もいれば、少なくても平気な人もいます。早い時期にドロップアウトしてしまう人というのは、そういうところのキャパシティが、ふつうの人より狭い場合が多い。マネジメントは大事です。

トータルアンチエイジングができること──メディアージュクリニックでの講演会より(後編)

──炭水化物(糖質)にも注意したほうがいい

斎藤 そうですね。タンパク質はしっかりとって、糖質は血糖が上がるので控える。たとえば、焼肉屋に行ったら、ごはんを片手に焼肉を食べるのではなく、焼肉を食べてからごはんを食べる。そして、食事のあとは運動。筋肉が糖を使ってくれますからね、血糖の上昇を抑制できます。
血糖値が安定すれば、疾病の人はもちろんよくなるし、メタボリックシンドロームや脂肪肝もおなじメカニズムなので、改善されますよ。

今後は、遺伝子を調べることで代謝経路が具体的にわかってきますから、一人ひとりが自分にとって適量な栄養素を摂取する、ニュートリゲノミスクの時代へ入っていくでしょう。

──なるほど。「世界アンチエジング医学 日本会議」の次回の開催も決まっていると聞きました。2008年もお忙しくなりそうですね

斎藤 そうですね。がんばってやっていかないとね。

──期待しています。今日は、よいお話をありがとうございました

メディアージュクリニック
住所|東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山7F
電話|03-5464-6110
公式サイト|www.mediage.co.jp

セミナー会場
Casita(カシータ)
住所|東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山3F

           
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