レクサスのプレミアム コンパクト「CT200h」に試乗|Lexus
CAR / IMPRESSION
2015年8月6日

レクサスのプレミアム コンパクト「CT200h」に試乗|Lexus

Lexus CT200h|レクサス CT200h

走りも楽しめるプレミアムなハイブリッド

スピンドルグリルになったあたらしい「CT200h」に試乗

現行ラインナップ中、最後まで残された「CT200h」にもスピンドルグリルを採用し、全ラインナップのアップデイトが完了したレクサス。レクサス初のコンパクトクロスオーバー「NX」が話題ではあるが、フォルクスワーゲン「ゴルフ」やメルセデス・ベンツの「Aクラス」「Bクラス」、BMW「1シリーズ」など、世界のプレミアムCセグメントモデルをライバルに戦う、全グレードハイブリッドという潔さをもったレクサスのエントリーモデル「CT200h」に注目する。

Text by SAKURAI KenichiPhotographs by MOCHIZUKI Hirohiko

“毅然”とした走り

日本を代表するプレミアムブランドであるレクサスは、「NX」の投入によって注目を浴びているが、エントリーモデルとして裾野を広げている「CT200h」にも注目したい。先のマイナーチェンジで、レクサスのデザインキューとなる“スピンドルグリル”を採用したフロントフェイスの導入や、リアビューのデザイン変更をおこない、より洗練されたアピアランスに磨きを掛けた。

レクサスはこれを 「レゾリュート ルック(毅然とした表情)」と表現するが、そうしたデザイン以上に「CT200h」のドライビングフィールは、ソリッドでスポーティ。まさに“レゾリュート”なのだ。

Lexus CT200h

Lexus CT200h

走り出してすぐ、そうと感じさせてくれるポイントは、3つ。サスペンションの見直しによって体感可能となったダイレクトなハンドリング、CVTのチューニング変更による加速フィールの向上、そして圧倒的ともいえるボディ剛性の向上に伴いもたらされた総合的なNVH(ノイズ、振動、ハーシュネス)対策による快適性アップである。

この静粛性向上とNVH低減のために、マイナーチェンジではじつに94項目もの対策を講じたのだという。

多少専門的なことになるが具体的な例を挙げると、フロントピラー根元やリアホイールハウス、車体後部下まわりには構造接着剤を使用し、ハッチゲートのオープニング部のスポット溶接打点も20点に増加。

さらにフロントのサスペンション装着部分であるストラットの左右とリアのサブフレーム上部に、走行中の車体の変形や振動を穏やかに整え吸収するための車体制振装置、パフォーマンスダンパーも追加した。

Lexus CT200h

ボディはぐっと引き締められ、走り出してすぐにソリッドな走行フィーリングを感じとることができる。以前のモデルを100パーセントとするのであれば、マイナーチェンジ後のモデルでは150パーセントにも感じられる剛性感の向上である。

Lexus CT200h|レクサス CT200h

走りも楽しめるプレミアムなハイブリッド

スピンドルグリルになったあたらしい「CT200h」に試乗 (2)

別モノともいえる加速フィール

こうしたボディのしっかり感アップは、室内の静粛性向上にも効果をもたらし、ついハッチバック形状だということを忘れさせるほど、静かで快適な室内環境を実現していた。とくにボディ下部や、ハッチバックモデルのウィークポイントとされる後部からのノイズの侵入は、ことごとく押さえ込まれている。

それは、見た目をよくするために上質な素材を使用するといった分かりやすいところ以外でも感じ取れる、まさにプレミアムブランドの面目躍如というグレード感である。

このボディ剛性の向上に伴い、走りの質を決めるサスペンションもアップデイトされている。おもな変更ポイントはコイルスプリングレートの最適化や、新型ショックアブソーバー バルブの採用、リア スタビライザー径の変更などで、こうしたチューニングと見直しが、アジリティ向上と乗り心地良さを両立させた。

Lexus CT200h

Lexus CT200h

ただし、比較試乗では、17インチホイール装着車に多少乗り心地に硬すぎる印象も残ったのは事実。お薦めは16インチホイール採用モデルで、こちらは快適性とスポーツネスのバランスの良さが光った。

そしてもっとも大きくドライブフィール向上を印象づけてくれたのがCVTのチューニング変更である。パワーユニットは、これまでどおりプリウス譲りのハイブリッドシステムで、73kw(99ps)の最高出力をもつ総排気量1,797ccの直4エンジン+最高出力60kW(82ps)のモーター、それにCVTを組み合わせるという構成に変更はないが、CT200hは、走り出しからまるでパワーが大幅に向上したような、これまでとまるで別モノともいえる加速フィールをもたらすのだ。

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スピンドルグリルになったあたらしい「CT200h」に試乗 (3)

CVTプログラムの変更だけで実現

開発陣に聞けば、ハードに一切の変更はないという。しかしCVTのフィールを大きく改善すべく、チューニングを実施した。

CVTの利点は、ご存知のように息継ぎのない滑らかな加速フィールと、効率の良さにこそあるが、これまでのCVTではエンジン回転数とそこからドライバーが期待するスピード、つまり人間の感覚と実際の速度にずれを感じるケースが少なくなかった。ドライバーはより多くの加速を望むためアクセルを強く踏むが、その時勢いよくまわるエンジンサウンドと、加速フィールにギャップが生じていたのだ。

Lexus CT200h

Lexus CT200h

欧州市場ではこれを “ラバー フィール”と評し、CVT車を嫌っている。その名の通り、あたかもゴムが伸びきるようなイメージ……といえば、理解しやすいだろうか。いまだにMT至上主義を貫く、いかにも走りにこだわる欧州らしいエピソードだ。

ともかく、あたらしいCT200hでは、そうしたCVTのもつマイナスイメージを、完璧に払拭してみせた。そこには“ラバーフィール”という負のイメージは皆無である。エンジン回転数に合わせリニアに加速するフィーリングは、大げさにえば変速ショックが皆無なできの良い多段トルコンATのようでさえある。

もしも何も知らせずに初めて新型のCT200hに乗れば、これをCVTとは思わないかもしれない。それほど、きびきびした走りを、このCVTは感じさせてくれるのだ。

ただし、重ねていうが、パワースペックも、ハードも一切変更はない。CVTのプログラム変更だけで、このリニアなフォーリングを実現しているという点が、レクサスの開発能力の高さを証明し、走りへのこだわりを伝えるポイントでもある。

正直、加速感がリニアになっただけで、クルマの印象がこれほどまでに変わるものかとも思う。ハイブリッドというシステムから、燃費以外はあまり期待していないと思われがちな「CT200h」でも、走る楽しさをじゅうぶんに享受できるのである。

Lexus CT200h

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走りも楽しめるプレミアムなハイブリッド

スピンドルグリルになったあたらしい「CT200h」に試乗 (4)

プレミアムブランドであることをクルマの進化で表現

いっぽう、エクステリアでは、スピンドルグリルと新デザインのホイール、シャークフィン型のアンテナやあらたな意匠のリアスポイラーなどがマイナーチェンジでの主な変更点。さらに定評ある外板の塗装には、洗車などによってできた小さな擦り傷を自己修復する、セルフ リストアリング コートを採用した。

インテリアでは、直径370mmの新型ステアリングホイールや薄型のTFTマルチメディア ディスプレイ スクリーン、あたらしいカラーコンビネーションのセンターコンソールトリムのほか、天然の竹から抽出した植物由来オパールを世界で初めて使用した、竹炭プラントオパール樹脂振動板によるオーディオ用スピーカーの搭載などがあたらしい。

Lexus CT200h

Lexus CT200h

ルックスや質感だけでなく、走りでもレクサスがプレミアムブランドであることを改めて伝えてくれたのは、ほかでもないボディやサスペンション、そしてCVTのアップデイトといういささか地味な改良であった。しかし、こうした細かい改良を重ね、車輌を熟成していくという手法は欧州プレミアムブランドの得意技でもある。レクサスもまたそうした例に漏れず、つねに上を目指すという姿勢が「CT200h」からは感じとれる。

もしもハイブリッドに「燃費は良いけど退屈」という印象をもっているのなら、そのイメージや先入観をわれわれもアップデイトする必要がある。それは、一皮むけた走りの楽しさを、あたらしい「CT200h」から誰もが簡単に感じ取ることができるからにほかならない。欧州プレミアムブランドとはちがった高級にたいするアプローチと、ハイブリッドをもつレクサスならではの質の高い走りが、スピンドルグリルを得た「CT200h」最大の武器である。

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Lexus CT200h "F SPORT"|レクサス CT200h“Fスポーツ”

LEXUS CT200h│レクサス CT200h

ボディーサイズ│全長 4,350 × 全幅 1,765 × 全高1,460 mm

ホイールベース│2,600 mm

トレッド前/後│1,525 / 1,520 mm

重量|1,440 kg

エンジン│1,797cc 直列4気筒 DOHC +電気モーター

最高出力(エンジン)│73 kW(99 ps)/5,200 rpm

最大トルク(エンジン)│142 Nm(14.5 kgm)/4,000 rpm

最高出力(モーター)│60 kW(82 ps)

最大トルク(モーター)│207 Nm(21.1kgm)

システム最高出力|100 kW(136 ps)

トランスミッション│電気式無段変速機

バッテリー│ニッケル水素電池

駆動方式│FF

サスペンション前/後│マクファーソンストラット / ダブルウイッシュボーン

ブレーキ前/後│ベンチレーテッドディスク / ディスク

燃費(JC08モード)│30.4 km/ℓ

価格│433万286円

           
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