Divine of Creation|伊藤嶺花×鄭秀和(前編)
さまざまなステージで活躍するクリエイターをゲストに迎え、スピリチュアル ヒーラーの伊藤嶺花さんが、人が発するエネルギーを読み解くリーディングと複数の占星術を組み合わせ、クリエイターの創造力の源を鑑定する連載「Divine of Creation」。現世に直結する過去生や、秘められた可能性を解き明かし、普段は作品の陰に隠れがちでなかなか表に出ることのない、クリエイター“自身”の魅力に迫ります。
スピリチュアル対談 Vol.2|鄭秀和
伊藤嶺花が“視た”ゲストの肖像
「全方位型で己の真実に挑み続けるヒーロー」(前編)
理想の世界を追求し貫きとおす、強い生命力
第2回目のゲストは、インテンショナリーズ代表の鄭秀和氏。代表作ともいえる「ホテルクラスカ」をはじめ、人気家電ブランド「amadana」のデザイン、最近では、バリ島に建設中の環境に配慮したリゾート「echord」など、建築の枠に留まらず活躍の場を広げる氏の素顔に迫ります。
Text by OPENERSPhoto by Jamandfix
物事の表面に惑わされず、真実を見極める力の持ち主
伊藤 よろしくお願いいたします。それでは、いただいているお名前と生年月日をもとに、事前に鑑定させていただいているので、そちらのお話からさせていただきます。
鄭 よろしくお願いします。
伊藤 大きな特徴としては、生まれながらにいわゆる“カン”が強く、物事の真実を見極める力をおもちです。たとえば、まわりのひとたちが取り繕ったような表面的なことに意識を向けていたとしても、自分だけは真実を追求しようという意識で世の中を見ているのではないかとお見受けします。
鄭 いきなり丸裸にされてしまっていますね(笑)。
伊藤 すいません、いきなり突っ込んでしまって。
鄭 いえいえ、その通りです。たとえば取材でも「“モードを作る”ということを意識されていますか」という質問をよく受けるんですけど、僕自身はまったく興味なくて。「amadana」のデザインも、新しいものを作っているという感覚ではないんです。皆さんの意識のなかに潜在的にあるものを新しく感じさせるというような意識で手がけている。趣味の音楽でも「比較的古い音楽を新しい解釈で聴く」ということをやってきたので、デザイン面でもそういう視点が働いてるんだと思います。だから、今はこれが流行っているからこういうデザインっていう考え方にはならないですね。
伊藤 そうですね。他人の評価とか世間の評判とか、そういったものはいっさい耳に入らないというか、マイペースなマイワールドを築いていく力強さをおもちです。しかも、それを来年や再来年までという短期的なスパンで考えていらっしゃるわけではなくて、あくまで長期戦。自分の理想としている世界を追求して、最終的にかなえられればそれでいいという、潔さもおもちです。
鄭 あははは! お茶を飲むペースが速くなってきちゃいました。
伊藤 とにかく生きる力がお強い方なのだと思います。たとえばものづくりにかんしても、万人受けしようとか、商業的になにかをしようとかよりは、自分が良いと思ってやっていることに共感して興味をもってくれるひとたちがいればそれでいいというか。
鄭 かなりズバッときますね(笑)。
伊藤 世間に媚を売ったり、迎合したり、お金儲けをしたりというのはもともと考えていらっしゃらないのでは? いい意味で、俺は俺、それが俺の人生だから、俺がそうしたいんだからいいじゃんって、貫きとおす強さをおもちですね。
鄭 「amadana」も、10人いたら1人が強烈に好きになってくれればいいというデザインですからね。家電市場のパイが大きいから成り立つビジネスモデルではありますけど。
伊藤 それと、おひとりでなにかをするというよりは、分かりあえる仲間との時間も大切にしていらっしゃる。
鄭 会社をはじめるときも、個人の限界というのは意識していました。建築って自分ひとりでは建てられないじゃないですか。だから、最初は「会社」ではなくて「レーベル」という言い方をしていたんです。社名の「インテンショナリーズ」というのは、“確信してものを作る”という意味の造語なんですけど、「インテンショナリーズ業」と最初は言っていたんですよ。和製英語みたいに、そのまま言葉になるものってあるじゃないですか。そういうイメージで付けたんですけど、なかなか定着しないですね(笑)。
伊藤 いまの仕事を意識されたのはいつごろですか?
鄭 小さいころから絵を習っていたんですけど、一度辞めて、高校に入って現代アートに興味が出て。もう一回絵を習いはじめました。でも結果的に、自分には創作意欲がないことに気づいて。
伊藤 創作意欲が、ですか?
鄭 ずーっとこもって作業したり、湧き上がる創作意欲がないとアーティストって言っちゃいけないような気がしたんですよ。それは自分には無理だなって思いはじめていたころに、たまたま建築が総合芸術とか社会兆候とか言われているのを聞きかじって、「じゃぁ、やっちゃおうかな」ってくらいの軽い気持ちでしたね。そうしたら絵の先生に「安易に芸術学部にいくな、建築に進むなら理系にいけ」というようなことを言われて、高校3年生で理転したんです。そこから、地獄の駿台予備校ですよ(笑)。それがまったく役に立たなくて、結局受かったのが武蔵野美術大学だったんですけど。これで受からなかったら僕はシェフになろうと思っていました、本気で(笑)。
伊藤 すごい幅広いですね!
鄭 「所詮受験なんてルネッサンス止まりだから」とか、生意気なことを言っていたんですよ。「デュシャンが出るまでは、まだまだ先だろ」みたいな。
伊藤 かっこいい!(笑) 心は完全にアート系だったんですね。
鄭 高校時代はね。ニューウェーブ全盛でしたから。
逆境・困難・障害こそ逆に燃える、いい意味での反骨精神
伊藤 もともとの能力が高い水準におありなので、理系でも文系でも、気持が固まると納得のいくまで突き詰める方なんですよすね。必ず獲得する力をおもちですよ、生きる力が本当に強いので。
鄭 本当ですか? かなり弱ってるんじゃないかと思っていましたけど(笑)
伊藤 いえいえ、すごい生命力を感じますよ! 人生のうちに、逆境や困難、障害というのは誰にでもありますけど、そういうときこそ逆に燃えるというような、いい意味での反骨精神をおもちです。なにがなんでも立ち上がってやる、自分に負けてたまるか、みたいな。
鄭 あははは! なんでわかっちゃうんですかね。
伊藤 手足もぎれても、あそこまで行くと決めたんだから行ってやる的な強さですね。
鄭 そうそう! じつは、世界的に有名なアトリエにいた建築家のもとで働いていた時期があるんですけど、そのとき、出るはずだった給料が出なかったんですよ。本当に腹が立って、半年後、ボスの事務所の上に自分の事務所を作りましたね。そしたら今度はボスに「絶対ウマくいくはずないよ」って言われて、さらに燃える、みたいな。
伊藤 負けず嫌いですよね。ただ、追い求めているご自分の価値観に向けての負けず嫌いというか、「俺はこうなんだよ、分かったか」って自分に対しても示す手段なのでしょうね。なにしろ信念が強いんです。
鄭 事前打ち合わせしたかのようなご意見ですね! もし自分が今の仕事ではなくて大企業に勤めていたらって考えると、それはそれでバリバリ働いていたんじゃないかなと思うときがあるんですよ。
伊藤 確かに大組織にいたとしても頑張ると思いますが、資質としてはやはり自由業が向いていますよ。自分自身の城を築く力をおもちなので。たとえ企業に勤めたとしても、おそらく30歳前くらいでお辞めになるのではないかと思います。
鄭 あぁー、そうですね。辞めるかもしれないですね。
伊藤 なので、業種としては広い意味で自由業でしょうね。趣味も多趣味、好奇心も旺盛ですし、面白いと思うと、一回は手を出すタイプなのではないでしょうか。それこそ「音楽」というのは最初から生活のなかにないと嫌だという位置づけなので、じつは音楽家としてもものすごく才能があるんですよ。お辞めになったのはなぜですか?
鄭 沖野修也君たちと一緒にDJ活動してきましたけど、その先にあるものは曲づくりという一連の流れに納得できなかったんですよ。DJって“キューレーションアート”だと思っていたので。
伊藤 キューレーションアート?
鄭 毎週、お客さんを前にプレゼンしていると思っていたんです。沖野君の言葉を借りれば「ディフィニティブ・ジャッジメントだ」みたいな。半年前にすごくいい選曲って言われていたDJが、お客さんの好みがちょっと変わると消えていっちゃうという、すごくサイクルの速い世界なので。実際にそういうひとも何十人も見てきましたし。なので、僕はビジネスの世界でDJをしているというか。自分のなかでは、DJのいい部分をデザインの世界でやっているような感じなのかもしれないですね。
伊藤 もともと、確信をもったうえでの計画性がおありなんですよね。
鄭 ありがとうございます。社名にもなっていますから(笑)
伊藤 先を読む回転が本当に速いんですよね。無意識のうちに、必ずこうなるから、今はこれをやっておかなきゃ駄目だという気持ちに突き動かされているんだと思います。
鄭 そうかもしれないですね。
伊藤 だから、志向としては安定志向なんですよ。チャレンジ精神は豊富ですが、あくまで計画性をもったうえでのチャレンジなので、行き当たりばったりではないはずです。必ずこうなるという予想図があったうえで、オリジナルのものをデザインとして落としこめる。ただ、自分がこれでいいんだと思ったら曲げないし、分からないひとに対してイライラが募ることもあるでしょうけど、それでもわかってくれるひとが分かってくれて、それについて語り合える時間をよろこびと感じて原動力につなげているのだと思います。コトやモノを通じてキャッチボールする時間そのものを生きがいと感じるというか……。
鄭 作っているものにかならず余白があるというか、悪く言えばスキがあるというか、意外とおおらかにやっちゃうタイプなんですよね。「いいんじゃないそれで」みたいな。だから、毎回納得することがきちんとあって、それがどういうポジションをとってどう次につながっていくかが見えれば、ヒステリックにやるタイプではないと思うんですけどね。「amadana」も、リアル・フリートが商品企画、ラインナップを決めて、僕がデザインをする。商品開発については一切口出ししないんですよ。「amadana」のデザインって、僕らは「なんとなくamadana」って言ってるんですけど、それを認識してもらうのが意外に難しくて。「amadana」らしさをわかってもらうのに携帯電話はものすごく必要だったんです。公共建築に近いイメージですね、みんなが知ってる建物っていうか。
そうそう、大学時代に卒業論文で「コンビニが我々の時代の公共建築になる」と書いたら、教授に「馬鹿じゃないの」って言われたんですけど、まさに今、僕にとっては卒論を実践してるみたいなものなんです。
伊藤 やっぱり長期戦なんですね!
TEI Shuwa
建築、インテリア、工業製品、家具など、生活におけるデザイン全般を手がける建築・デザイン事務所「インテンショナリーズ」で代表を務めるかたわら、リアル・フリート社の展開する家電ブランド「amadana」の製品デザインとブランド全般におけるディレクションを手がける。日本で最初のデザインホテル「HOTEL CLASKA」や、東芝のキッチン家電「atehaca」シリーズ、NTTドコモの「amadanaケータイ」など代表作も多数。現在は、日本国内のみならず、バリ島、台湾、ハワイ、韓国など海外でのプロジェクトが進行中。
ITO Reika
株式会社ディヴァイン代表/スピリチュアルヒーラー
服飾雑貨系の製造卸売業、仕入製造小売業の企業にて商品企画、広告宣伝、経営企画の仕事に従事したのち、チャネリングやリーディングによって視えたことを、複数の占星術を組み合わせて読み解く独自スタイルの宿命鑑定と、ヒーリングや催眠療法などを行うライトワーカとして活動を開始。有名企業経営者からの企業鑑定依頼も多く、これまでに10万件以上の鑑定実績をもつ。2009年7月から、自由が丘にて個人セッション再開、満月&新月のワークショップを開始予定。著書に『シンクロニシティ』、『運命好転術』。www.divine-msg.com