スピリチュアル対談 Vol.8|伊藤嶺花 × 谷尻 誠 「多次元の理想から唯一を創り出すアルケミスト」(前編) 
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2015年5月11日

スピリチュアル対談 Vol.8|伊藤嶺花 × 谷尻 誠 「多次元の理想から唯一を創り出すアルケミスト」(前編) 

スピリチュアル対談 Vol.8|谷尻 誠

伊藤嶺花が“視た”ゲストの肖像

「多次元の理想から唯一を創り出すアルケミスト」(前編)

さまざまなステージで活躍するクリエイターをゲストに迎え、スピリチュアル ヒーラーの伊藤嶺花さんが、ひとが発するエネルギーを読み解くリーディングと複数の占星術を組み合わせ、クリエイターの創造力の源を鑑定。現世に直結する過去生や、秘められた可能性を解き明かし、普段は作品の陰に隠れがちでなかなか表に出ることのない、クリエイター“自身”の魅力に迫ります。

文=オウプナーズ写真=JAMANDFIX

第8回目のゲストは建築家の谷尻誠さん。オウプナーズCASAでの連載も好調のスタートを切り、現在は広島と東京の2ヵ所を拠点に国内外合わせ多数のプロジェクトを進行中。前編では、犬小屋から個人住宅、大きなビルにいたるまで、「建築」によって人びとの幸せや楽しさを具現している谷尻さんの、思考の背景を探ります。

はじめてつくる気持ちで設計する

伊藤 独立されたのはおいくつのときですか?

谷尻 26歳です。なにも考えずに独立しました(笑)。というのも、当時は自転車のレースをしようと思っていたんです。もともとマウンテンバイクのレースでダウンヒルをしていたので、1年間くらいレースをしながら自分の好きなことをやりたいと思い独立して、ふらふらしていました。でも食べていかなきゃならないじゃないですか。

伊藤 そうですよね(笑)。独立して最初に手掛けたのは?

谷尻 知人の紹介でアパレルショップの内装デザインをしたのが最初の仕事ですね。でも、アパレルの内装はそれまで手掛けたことがなかったので、頼まれてからいろいろ見たり調べたりしてかたちにしていきました。僕、ずっとそういう感じなんです。やったことがあるかどうかより、それに対してどう向き合うかのほうが大事だと思うので。安藤忠雄さんだって美術館をつくったことがないときがあったわけですし。

伊藤 誰にだってはじめてのときがありますものね。

谷尻 そう思います。僕、すごく大事にしている本がありまして、『はじめて考えるときのように』(野矢茂樹 著)。僕のバイブルです。哲学書なんですけど、イラストもついていますし、2時間くらいで読める簡単な内容です。レクチャーするときも必ず紹介しますし、いろんなひとにさしあげていますね。

伊藤 『はじめて考えるときのように』?

谷尻 誠|たにじりまこと|建築家|伊藤嶺花|いとうれいか02

伊藤嶺花さん

谷尻 タイトルがすごく好きなんですよね。僕は、なにをつくるときでも「自分のなかの既成概念は置いておいて、はじめてつくる気分で設計する」というのを大切にしたいなと思っていて。たとえば、カフェをつくるとしたら「カフェ」という定義を取り除いて、コーヒーを飲む場所ってどういう場所がいいのかとか、会話が弾む空間ってどんなだろうとか考えるんです。過去の経験は、技術としては活かしますけど、クリエイションとしては自分の経験をできるだけ捨てて取り組みたいと思っているんです。

伊藤 たしかに、経験があると自分のなかのパターンができすぎてしまいますのもね。

谷尻 誠|たにじりまこと|建築家|伊藤嶺花|いとうれいか03

『はじめて考えるときのように』 (野矢茂樹 著)

谷尻 そうなんです。だからこそ“はじめて”っていうのを自分のなかで大切にしながら取り組みたい。経験がついてきて自分の知識や感覚でいろんなことができてしまうと、「やりたいこと」よりも「できること」のほうが増えてしまって、つい自分の経験でこれはできる、できないって判断してしまいがちじゃないですか。けれど、できる幅を広げるためには、こういうことがしたいってことを、どうやったらできるんだろうって考えるべきだと思うんです。

伊藤 そうですよね。

谷尻 たとえば、空間のなかで手を“シュッ”と動かすと飛行機雲ができて空間に絵が描けたらいいなと思ったとするじゃないですか。そんなのできないよって言ってしまうのは簡単ですけど、飛行機雲ってどういう原理でできているのか、どうやったら空間に絵が描けるのかを調べて、それが実現できたら「あたらしさ」になる。今までにはないけれどそれが普通になっていくようなものってたくさんあると思うんです。自由に考えて、それをどうやって実現するかを詰めていく、そういうやり方をしたいって思います。なので、やったことのないことがすごく好きですね。失敗できないのでプレッシャーも大きいけれど、わくわくします。

スピリチュアル対談 Vol.8|谷尻 誠

伊藤嶺花が“視た”ゲストの肖像

「多次元の理想から唯一を創り出すアルケミスト」(前編)

いつ何時も建築のことを考えています

伊藤 建築家になりたいと思ったきっかけは何だったのですか?

谷尻 なろうと思っていなかったんですよね。のらりくらりしていたんですけど、だんだん自分のアイデアをこんなにも必要としてくれているひとがいるんだということに気づいて、ものを考えるのってすごいおもしろいなって思いはじめて、なんとなく今にいたっている感じなんです。ひとの役に立てることってすごくやりがいがありますし、楽しい。本当にそれだけですね。

伊藤 子どものころも今とあまりかわらないですよね(笑)。

谷尻 そうですね、今も子どものような感じですけど(笑)。子供のころは、毎日釣りをしてましたね。自宅のすぐ近くに川があったので、毎日クラブ活動から家に帰ると釣り竿をもって川に行ってぼーっとしていました。おばあちゃんが夕御飯だよって呼びにきたら、竿は投げっぱなしで家に帰って、ご飯を食べ終えたらまた暗闇の川にもどる。それが日課だったんです。

伊藤 なんだかのんびりしていてすてきですね。釣りはおひとりで?

谷尻 誠|たにじりまこと|建築家|伊藤嶺花|いとうれいか06

谷尻誠さん

谷尻 あのころはひとりで釣りしていましたね。いまはひとりでカフェに入るのさえ嫌なのに(笑)。なんだかそわそわするんですよ。なので、誰かといるほうが好きです。
コミュニケーションはいろいろなアイデアのもとになりますし。東京にいるとちがうジャンルのひととお会いすることが多いので、そういうひとと話をすると、あぁこうやって考えて、こうやって仕事してるんだ、とか。
それが自分の建築と結びついたりもします。たとえば、印刷やグラフィックをやってるひとが断ち落とされた紙を集めてノートをつくったって話を聞いたら、建築もじつはたくさんの廃材が出ているから、建築の在り方自体をデザインに置き換えてなにかできないかなって思考が走りはじめますし。

伊藤 ひとりで釣りをする時間もそうでしょうけど、考えることがお好きなんでしょうね。

谷尻 はい、ずっと考えていますね。さきほどの本のなかに「ぼくはいつ何時もあなたのことを考えてるよ」という言葉について書いてあってすごくいいなって思ったんですけど、実際はご飯を食べていればご飯のことを考えているし、寝るときは寝ることを考えているはずじゃないですか。でも、いつもどこかでそのひとに向かう意識があることを「ぼくはいつ何時もあなたのことを考えてるよ」って言えるんだって書いてあったんです。

伊藤 なるほどー。

谷尻 そういう意味では、僕はいつ何時も建築のこと考えていますね。この材料は建築で使えないかなとか、これって建築だなとか、このテーブルもいまは「テーブル」って呼んでるけど、2倍になってもまだテーブルかなとか。5倍になったら建築って呼んでもいいかなとか、いつ建築になるんだろうとか。

伊藤 確かに……。ホントそうですね。

谷尻 物の価値って、ほんとちょっとしたことで変わったりするんですよね。ぼくらのもってる物への意識って、所詮は自分の先入観でしかなくて。だからこそ、いろんな見方ができたほうがいい。僕は、なんでもそういう見方をする習慣がついていますね。なので、お酒飲んでいても仕事してるんです。

伊藤 あはは。大事なことですよね。

谷尻 あと、元気なひとに会うと仕事をやる気が出てくるんですよね。

伊藤 パワーをもらいますからね。

谷尻 誠|たにじりまこと|建築家|MILAN SALONE LUCESTE (ITALY)

MILAN SALONE LUCESTE (ITALY)

スピリチュアル対談 Vol.8|谷尻 誠

伊藤嶺花が“視た”ゲストの肖像

「多次元の理想から唯一を創り出すアルケミスト」(前編)

考え方を設計することで、自分にしかできないものができる

伊藤 最近はどんなお仕事をされていらっしゃるんですか?

谷尻 じつは40プロジェクトくらい抱えてまして(笑)。海外の商業施設やビルなどの大きな建物から、インスタレーション、展覧会、60平米くらいの個人住宅まで。家具の設計などなど……。

伊藤 すごーい。本当に幅広いですね。

谷尻 誠|たにじりまこと|建築家|伊藤嶺花|いとうれいか09

谷尻誠さん

谷尻 僕、考え方を設計するって思っているので。

伊藤 かたちにするものはなんでもいいんですよね。

谷尻 そうなんです。たまたま建築をメインにやっていますけど。携帯電話をつくるとしても、その構造もあるでしょうし、その携帯電話をつくる考え方を設計できれば、僕にしかできない携帯電話もきっと提案できると思います。

伊藤 考えること、コンセプトワークが好きなんでしょうね。それを具現できるところがすごいです。

谷尻 かたちにすると純度が落ちることもありますし、できないことだらけですけどね(笑)。でも、できないことに悩まずに、なぜできないのかを今度は考えるんです。できないって思った自分があるからできないんだって思ったら、どうやったらそれに取り組みたい自分になるか考えて、遊びに出るかとか、ひとに会うかとか。

伊藤 なるほど。

谷尻 「なんでなんで」って、いつも言っていますね。広いリビングが欲しいですって言われても「じゃあ広いリビングつくりましょうか」ではなくて、「なぜ広いリビングが欲しいんですか?」とか「あなたにとって広いリビングってなんですか?」とか「広いってどういうことだと思いますか?」とかいろいろ聞きますね。

伊藤 カウンセラーっぽいですよね。私も仕事でそうやって聞き出していきます。もう、聞きまくり(笑)。お話していただくと、その方も納得しますからね。

谷尻 そうなんです。かわりに整理するというか、考えることが多いですね。なので「その考え方いいですね」とか言われると盛り上がります(笑)。

谷尻 誠|たにじりまこと|建築家|豊前の家(福岡)

豊前の家(福岡)

伊藤 根本を理解していただけたときですね。

谷尻 そうです。たとえば「都市のなかに家を建てる」というと「新築」って考えが普通ですけど、「都市」のなかで捉えると「都市をリノベーションする」とも言えるんじゃないかとか。中国のコンペは、そういう考え方で取ったんです。地面の緑を伸ばして建物の表面を覆うように建築すると、地面を増やすってことになるじゃないですか。そうすると緑が増えて環境の整備に繋がる。そういうふうに考えるんです。

伊藤 発想がすごいですよね。

 

谷尻 誠|TANIJIRI Makoto
建築家・サポーズデザインオフィス代表
1974年 広島県生まれ。2000年 建築設計事務所Suppose design office 設立。住宅、商業空間、会場構成、ランドスケープ、プロダクト、アートのインスタレーションなど、仕事の範囲は多岐にわたる。広島・東京の2ヵ所を拠点とし、国内外合わせ現在多数のプロジェクトが進行中。穴吹デザイン専門学校 特任講師。

伊藤嶺花|ITO Reika
ディヴァイン代表/スピリチュアルヒーラー
服飾雑貨系の企業にて商品企画、広告宣伝、経営企画の仕事に従事したのち、天界とのチャネリングと潜在意識のリーディングをおこなうライトワーカーとして活動開始。相談内容によってヒーリングや催眠療法、複数の占星術を組み合わせた宿命鑑定もおこなっている。自由が丘にて個人セッション、満月&新月のワークショップを開催中。著書に『シンクロニシティ』、『運命好転術』、『開運ビジネス風水虎の巻』。www.divine-msg.com

           
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