田中凛太郎 『My Freedamn! Vol.8』とシックスティーズ(その3・最終回)
田中凜太郎、待望の最新作をリリース&独占インタビュー!
『My Freedamn! Vol.8』と、シックスティーズ(その3・最終回)
全3回の構成でお届けしてきた田中凛太郎氏への最新インタビューも、いよいよ今回が最終回。
1960年代からはじまったベビーブーマーたちによるアメリカンポップカルチャーの終焉を感じさせる昨今のアメリカ事情。それを受け、古着やアメリカン・サブカルチャーの大きな転換期を感じる田中氏。話は、そんな彼の現在の心境から今後の展望へと広がっていった。
写真・語り=田中凛太郎インタビュー・文=竹内虎之介(シティライツ)
60年代からはじまったベビーブーマー時代の終焉
──パール・ハーバーさん以外にも、今号には女性がけっこう登場していますね。このカークラブのお姉さんたちとか。あえて女性を出そうという狙いがあったんですか?
田中 いえいえ、たまたまです(笑)。僕の写真の被写体はこれまで98%が男! もちろん女性をキレイに撮りたいという願望はあるんですが、技術的にもなかなか難しいんですよ。撮るときの声のかけ方や気の使い方ひとつとっても全然ちがう。でも、今回はたまたま気が合って、かつ、いい感じで撮れたので採用しました。
──こういうフィフティーズっぽいカークラブって、80年代には日本でも流行りましたが、アメリカではずっと流行ってたんですか?
いえ、最近また盛り上がってきたという感じですね。
──また、かつてのようなブームになりますかね?
80年代のようなムーブメントにはならないと思います。なぜなら当時のブームは、ヒッピーにしろ、ディスコにしろ、みんなベビーブーマーたちのカルチャーだったから。今後はもう、ああいう巨大なブームは起こらないでしょうね。
──ベビーブーマー時代の終焉ですか
そう、この前のGM(ゼネラルモーターズ)の一件で完全に終わった感じがしましたね。
ここ何年かつづいたアメリカのバブルは、彼らの最後の花火だったんだと思います。もちろん一概にはいえませんが、ベビーブーマーたちがリタイアを前にして、老後のことなどを考えて投資したという側面があったことは否定できないでしょう。
そういう意味では、この本のテーマである60年代からはじまったアメリカのひとつのカルチャーが終わったな、という実感はあります。
──となると、田中さんをはじめ僕らの好きだった古着に象徴されるアメリカンカルチャーも、ひとつの終焉を迎えるんでしょうね。
そうですね、好きなカルチャーが終わっちゃったという寂しい感じはあります。でも逆に、今のアメリカには、オバマ大統領の登場などうれしい部分も感じます。いよいよ上の世代が全部いなくなって、やっと僕らの時代が来た! という感じ。古着業界もふくめ、今度は僕らが未来を考える番ですよ。
今後はいよいよ、僕らが未来を考える番
──そういう意味では田中さんの活動からも、これからますます目が離せなくなりそうですね。今後は、どういう展開をお考えですか?
今後も本づくりは変わらずつづけていくつもりですが、「My Freedamn!シリーズ」に関しては、一応『Vol.10』でひと区切りつけたいと思っています。その代わりといってはなんですが、来年以降、本だけでなくイベントのような活動を考えています。
今って完全にインターネットの時代になっちゃいましたが、だからこそひととひとが顔つき合わすことが、より大切なんじゃないかと。幸い僕は「My Freedamn!」をつくる過程で、いろんなひととうまくつながることができました。これを生かして、どうコミュニケーションするかを考えるのが、僕にとって重要なことだと考えています。
──もう具体的に進行しているんですか?
まだ計画の段階ですが、第一弾として来年の2月ごろ『インスピレーション』と銘打ったカルチャー・リサイクルイベントを考えています。いまや古着もなかなか普段着として着られなくなりましたし、あってもいいモノはメチャクチャ高い。でも僕自身、相変わらず古着が好きで古着の本をつくっていて、どっかに着地点をつくらなきゃって思いはつねにありました。そこで、リサイクルイベントがいいんじゃないかと。
古着はピカソになる必要はありませんが、ただのゴミでもなくなった。だから、「みんなでもうワンステップ上がろうよ」という呼びかけです。
僕はこれまで、古着文化を創ったベビーブーマーのひとたちにとてもよくしてもらいました。でも、さっきもいったとおり、今度は自分が次の世代のために考えたい。いまはけっしていい時代ではありませんが、変わり目ではあることはまちがいありません。そしてそれは僕にとって、なにかできる大きなチャンスだと思っています。
──楽しみですね。そういう活動をするようになっても、基本スタンスとしては、これまでどおりひとりでやられるんですか?
もちろんいろいろなひとの協力は必要ですが、基本はひとりでやっていこうと思っています。人生は想像以上に短い。ですから、自分が本当に面白いことをやろうと思ったらひとりでやるしかないんです。自分が動いているうちは儲からないこともわかっていますが、しょうがないですね。面白いと思えることしかできませんから(笑)。
──それを聞いて安心しました(笑)。今後もますます期待しています。今日はどうもありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。