NISSAN GT-R|日産GT-R|第22回  (後編)| 翻訳不可能な性能に、すべてを捧げるクルマづくり
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2015年3月16日

NISSAN GT-R|日産GT-R|第22回 (後編)| 翻訳不可能な性能に、すべてを捧げるクルマづくり

第22回 日産GT-R(後編)

翻訳不可能な性能に、すべてを捧げるクルマづくり

コンピューターゲームめいて

高級GTである「日産GT-R」だが、注釈もいる。始動後、エンジンが暖まるまでは、変速機や駆動系からメカノイズやショックがけっこう盛大に出る。このときばかりは、デートカーと呼ぶにはちょっと物騒だ。でも、水温計の針が上がると、ウソのように静かになるのが“機械馬”のようでまた愛しい。

世界一速い日本車

各部のオイルが暖まるまでは、音やギクシャクが出る旨、トリセツにもちゃんと明記されている。トヨタ車なら、ここまでのワイルドさは許されなかったはずだ。このレベルが役員会で通るのは、やはり長年にわたるスカイラインGT-Rの伝統があったればこそだろう。
スピードメーターの目盛りが340km/hまで刻まれていても、ほかの国産車とおなじく、GT-Rも180km/hでスピードリミッターが作動する。だが、日本国内のサーキットやテストコースに着いて、車内で簡単な入力を行うと、その電子的足かせを解除することができる。カーナビの位置特定機能を利用した“サーキット・モード”である。

しかるべきハンドリング・コースで全開走行をすると、GT-Rはその潜在能力を開花させる。といっても、ぼく程度のウデだと、もっぱらクルマが勝手にコントロールしてくれている感が強い。

サスペンションや駆動の制御には、ときとしてロボテックなまでの介入を感じる。「ポルシェ911ターボ」にここまで人工的な支援を感じることはないが、しかし、それもGT-Rの“らしさ”だと思う。変速スピード、ダンパーの硬さ、トラクション・コントロールの世話焼き度など、クルマの特性をスイッチひとつでかなり大きく変えられて、その変化そのものを楽しめるところも、どこかコンピューターゲームめいていて、おもしろい。

クルマへの愛の集大成

実際、ワインディングロードでのGT-Rは、まるでコンピューターゲームのGT-Rように速い。プレイステーションの「グランツーリスモ」をリアルな世界で体験しているような、一種、キツネにつままれたような速さが味わえる。

しかも、それはドライバーの技量をまったくとは言わないが、それほど問わない。富士山頂にハイヒールで登らせるような、そんなことをしていいのか!? という意見もあろうが、それを否定したらオシマイよ、というのが、わけても日本車がこれまで率先して追求してきた技術である。

GT-Rは日本人のクルマへの愛の集大成だと思う。“走り”という翻訳不可能な性能に、すべてを捧げたすばらしく日本的な超高性能車である。


車両概要|日産GT-R
1969年にデビューした「スカイラインGT-R」以来、“GT-R”は日産を代表する、レーシングカー直系の高性能車として君臨してきた。休眠と復活を繰り返し、第三世代となる現行型が発売されたのは2007年秋。はじめて海外で本格販売されるのを機に、スカイラインの名が外され「日産GT-R」となった。
その内容は、日本的なハイパフォーマンスカーの究極といっても過言ではない。

世界一速い日本車

エンジンは480psと60.0kgmという国産車随一のパワー&トルクを誇る3.8リッターV6ツインターボ。トランスミッションはクラッチのない2ペダル式6段マニュアルで各種モードが選べ、電子制御のダンパーも状況に応じて特性を選べる。駆動方式は、前後重量配分を最適化するための「独立型トランスアクスル4WD」とするなどかなり凝った仕様だ。

停止状態から100km/hまで3.6秒で到達するという超高性能スポーツカーであるが、“マルチパフォーマンス・スーパーカー”というキャッチフレーズのとおり、万人が楽しめるような味付けがなされ、決して扱いにくいところはない。

アニメから飛び出してきたようなデザインはある意味とても日本的。340km/hまで刻まれるスピードメーターや赤いプッシュボタン式エンジンスターター、各種制御系スイッチなど、レーシーなコックピットはテレビゲームの世界にいるようだ。現にディスプレイのデザインは「グランツーリスモ」シリーズを手がけるポリフォニー・デジタルが担当している。

基本はモノグレードで、素の仕様の車両本体価格は777万円。ちなみにおなじ馬力の「ポルシェ911ターボ」は1921万円である。
http://www2.nissan.co.jp/GT-R/R35/0710/

           
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