第25回 アントワン・ダガタ写真展『SITUATION』インタビュー(2)
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2015年4月17日

第25回 アントワン・ダガタ写真展『SITUATION』インタビュー(2)

第25回 アントワン・ダガタ 写真展『SITUATION』インタビュー(その2)

引き続き、アントワン・ダガタ氏へのインタビューのもようをお伝えします。世界中を旅しながら、まったく知らない土地で孤独にシャッターを切り続けるダガタ氏。話を進めるうちに、その真の意図と彼の作品の本質が垣間見えてくるような気がしました。(北村信彦)

Photo by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)

恐怖、孤独、空虚感こそ写真を撮るモチベーション

──北村さんは、ダガタさんの写真をはじめて見たとき、どんな印象をおもちになりましたか?

北村 衝撃的でしたね。題材ももちろんそうですが、まずはその色使いに衝撃を受けました。そして、ひとつひとつの作品を見る以前に、集合体としてのパワーを感じましたね。展覧会の会場に入った瞬間、ファンになったって感じです。

ダガタ 私のほうこそ、このギャラリーや日本の写真家たちのファンですよ。今回は、写真界に大きな影響を与える日本の偉大な写真家の輪に自分も入れたようで、とても光栄です。新宿で森山大道さんとお酒を飲んだときも、子どものようにうれしかったですね。

──ところで、これまでどれくらいの場所で写真をお撮りになったんですか?

ダガタ 本当にものすごくたくさんの場所で撮りました。今回展示してある写真だけでも60ぐらいの都市で撮っています。

──なぜ、そんなにたくさんの場所を旅するのですか?

ダガタ 私のエネルギーの源が、見知らぬ場所にひとりでいるときに感じる、恐怖や孤独、空虚感だから。そのときのテンションが写真を撮るモチベーションになっています。だから知らない土地に行って、知らない人と出会う必要があるのです。

北村 そのあたりの感情が見事に写真に現れていますよね。風景や窓の写真などにも、その孤独や恐怖、あるいは夢のような感じが染み込んでいる。風景写真からそういうことを感じさせる写真家って、なかなかいないんじゃないでしょうか。

空虚とエクスタシー、それは隣り合わせの関係だ

ダガタ そういえば、こんなこともありました。あるときエルサルバドルで酔っぱらって、いつの間にか街を離れてしまっていたんです。目が覚めたら自分がどこにいるのか全然わからなかった。あのとき感じた“空虚のなかにいる自分”とでもいうものを、いつも写真に収めたいと思っています。ですが、一方で私は他人と親密な状況にいるときにもシャッターを切ります。空虚のなかの自分とエクスタシーのなかの自分。これは私にとって、じつは隣り合わせの関係なのです。強烈な孤独の恐怖も、人との交わりのなかで感じるエクスタシーも、どちらも生きていることを実感できる瞬間なのです。

──人のいない街を撮った一連の写真と、映像的で官能的なベッドの上での写真が上下に並べて展示してありますが、あれもそういう意味なのでしょうか?

ダガタ まさにあれは、隣り合わせの関係を対比させて見せたものです。街を四角く切り取った空虚の象徴と、肉体そのものの流れ。私のなかでそれらは、かけ離れたものではないのです。

第25回 アントワン・ダガタ 写真展『SITUATION』インタビュー(その2)

アントワン・ダガタ 写真展『SITUATION』
日程|2月1日(金)まで開催中
時間|12:00~20:00(月曜定休)
場所|RAT HOLE GALLERY
東京都港区南青山5-5-3

HYSTERIC GLAMOUR 青山店B1F
電話|03-6419-3581

           
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