BMW 335iクーペ| ビーエムダブリュー|第2回 (後編)|「ドライバーが感じるレスポンスの速さ」
Car
2015年3月9日

BMW 335iクーペ| ビーエムダブリュー|第2回 (後編)|「ドライバーが感じるレスポンスの速さ」

第1回:BMW 335iクーペ(前編)

「ドライバーが感じるレスポンスの速さ」

いきなりチェロから始まった連載、2回目でようやく本題に。試弾しただけで「ワッ、すげェ!」と思わせるチェロに相通ずる、「335iクーペ」の魅力とは……。

文=下野康史文=BMW

335iクーペの心臓、306馬力を発生する直噴3リッター直6ツインターボ。写真下側、波打つエグゾーストパイプに埋もれるかたちで小型ターボ・チャージャーが備わる。大型1基ではなく、小さなターボを2基とすることで、レスポンスのよさを追求した。

実用的で、速い

「BMW 335iクーペ」は、まれにみる“速いクルマ”である。フル加速すると、静止状態から100km/hまで、わずか5.7秒で到達する。
2ドアクーペでありながら、大人4人がちゃんと座れる。しかも、リアシートを倒してトランクと貫通させれば、前輪を外したロードレーサー(自転車)が1台積めるほどの実用性をもちながら、「ポルシェ・ケイマンS」並みの駿足を誇るのである。

だが、ここで言う速さとは、単にそういう移動物体としての速さではない。速いのが好きなら、もっと速いクルマはいくらでもある。
335iクーペが人を感動させるのは、ドライバーが感じるレスポンスの速さだ。操作という入力に対して、クルマが出力する、そのスピードが速いのである。

新設計の直列6気筒3リッターエンジンには、三菱重工の小型ターボチャージャーが2基与えられている。
だが、ターボにありがちな二段ロケットのような炸裂感もなければ、タービンが起こす風の音もしない。言われなければ過給エンジンとはわからないだろう。
ツインターボは、もっぱらエンジンの伸びより厚みのために使われている。その結果、すごく中身が詰まっている感じがする。

ボディシェルはセダン比で10kg軽量化、フロント・サイド・パネルは軽量な合成樹脂製を採用。BMWが理想とする前後重量配分=50:50をキープし、俊敏なハンドリングを目指した。

人車間の通信速度が「高速大容量」

エンジンの魅力を引き出すために、新しい6段オートマチックトランスミッション(=6AT)も大きく貢献している。変速マナーは上等なのに、マニュアル・ギアボックス並みの直結感がある。パワーを無駄遣いしていない印象は、印象にとどまらず、306馬力もある高性能車としては燃費もすぐれる。

こうした導通のいいパワーユニットに、シャシーも呼応している。とくにいいのが、電動アシストのアクティブ・ステアリングである。

ワインディングロードでも、手元の動きだけで足りる超クイックなこのステアリングは、これまでやや不自然な操舵フィールがなきにしもあらずだったが、このクルマではすっかり改良された。1.6トン以上ある後輪駆動の箱グルマが、ライトウェイト・スポーツカーのような軽さで向きを変える。

速いクルマである。それも、反応が速いクルマである。人車間の通信速度が、まさに高速大容量なのだ。
だから、速いスピードを出さなくたって、真髄が味わえる。荷物がいっぱい積めて、そこそこ速い「トヨタ・ラクティス」という「ヴィッツ」ベースのワゴンが、「高速大容量」を広告で謳っているけど、意味ちがくね!?

車両概要:BMW 335iクーペ
7年ぶりにフルモデルチェンジした3シリーズ・クーペ「335iクーペ」は2006年9月に日本上陸。セダンをベースとしながら、オリジナルのボディパネルを与えられ、優麗なフォルムの2ドア・4シータークーペに仕上げられた。

最大の特徴は、BMWの新機軸、直噴ツインターボエンジン。高精度インジェクションを可能とするピエゾインジェクターと、ターボラグに配慮した小型ターボチャージャー2基を組み合わせ、4リッタークラスのパワーと3リッタークラスと同等の燃費の両立を狙った。306馬力は、歴代3シリーズで最高レベルの性能という。

新開発の6段オートマチックトランスミッションは、高効率ハイドロリック・ユニットや新型トルクコンバーター、それらを緻密に制御するソフトウェアなどにより、ギアチェンジにかかる時間を従来のAT比で50%も短縮。マニュアル・シフト機能(ステップトロニック)で、よりアクティブなドライブも可能だ。

装備では、前席スポーツシート/ランバーサポート/シートヒーティング、HDDナビゲーション、MD/CDプレーヤー&HiFiスピーカーシステム、バイキセノン・ヘッドランプなど、上級モデルらしく標準で付与。夜間時にライトを進行方向に照射するアダプティブ・ヘッドライトや、スリップや横滑りを感知すると車両をコントロールし安定させるDSC、パンクしても一定距離を走ることができるランフラットタイヤなども標準装備となる。

           
Photo Gallery