第5回 LEON島田明さんと語る(2)
Fashion
2015年5月11日

第5回 LEON島田明さんと語る(2)

第5回 LEON島田明さんと語る(2)

ゲストは前回に続き、加藤博照さんの親しい友人のひとり、『LEON』編集長代理の島田明さん。
お仕事の話からさらに一歩踏み込み、現代のファションとジュエリー観などについて、お話いただきました。

文=佐藤太志(グリンゴ)写真=鵜沢ケイ

ハンドメイドのこだわりが心を揺さぶる

――雑誌『LEON』とnine SIXtyはどういう交流があるんでしょうか?

島田明 企画によってアイテムを掲載しています。でも別に僕がすすめているわけでなくて、ほかにnine SIXtyを好きな編集スタッフが何人もいて、彼らが興味を持って自由に紹介しているという感じかな、と。

加藤博照 逆に島田さんの方が厳しいぐらいですよね。親しいからといって特別扱いというのはもちろんないですし(笑)。

第13回 ボリス・ミハイロフという謎解き その3(番外編)

島田 そうすると公私混同になってしまうしね。基本的に僕がKato-pee(加藤さんの愛称)のことで自分から動くことはなかったと思うよ。
ほかの『LEON』から「新作の完成度はいかがですか?」みたいな問い合わせがいって、それから掲載へ、ってパターンが多いんじゃない? 3種類のゴールドに3本のレザーを組み合わせた3連リングみたいに、掲載されてから値段が決まったものとかもあったし(笑)。

加藤 掲載されたときは参考商品になってましたね。

島田 僕ら編集が載せたいものって、単純に言えば欲しいものってことで。音楽でもアートでもなんでもだけど、強く気持ちが揺さぶられるような、そういうパッションに動かされることに出会いたくていろいろ探し回っていると思うんですよね。
いま、たんにマーケティングに走っているブランドが多いなかで、nine SIXtyは頑なというか職人気質というか、そういうところに惹かれる人は多いんだろうね。量産しようと思っても彼の作るリングはなかなか難しいし……。

加藤 ありがとうございます。手づくりであることが、僕がつくるジュエリーのコアな部分なので、コピーとかはあまり考えられないんですよね。

島田 知り合いに聞いてみたけど、あそこまで繊細なディテールのリングをコピーして、レディメイドみたいに販売するのはかなり難しいらしいよ(笑)。

――そうなんですね。加藤さんは島田さんから刺激を受けることも多いでしょうね。

加藤 はい。つねに。

島田 どういうとこ(笑)?

加藤 いろいろと知識もあるし、良いものも見てるから、感覚が鋭い。新作ができたら、いち早く見て欲しい人なんです。そのときに感覚でなんとくなく、「あっここは変えた方がいいな」とかっていうのが伝わってくるんです。

島田 ダメだったらはっきり言うしね(笑)。

逸脱することのカッコよさをジュエリーに

第13回 ボリス・ミハイロフという謎解き その3(番外編)

――nine SIXtyが『LEON』で紹介されて、いろいろと『反響』を得ているわけですが、いま大人に男性に求められているジュエリーとは、どんなものなんでしょうか?

島田 言葉にするのが難しいんですが、ひと言でいうと「なんでもアリ」。というように、大人の男性の意識が変わってきているんだと思います。
結果、加藤君のnine SIXtyをはじめ、ハイクオリティでちょっとプレミアムなジュエリーにお金をかけるのが普通になってきているという……。

加藤 自由な感じですか?

島田 そう。社会に迎合せず、逸脱してファッションを楽しんでもいいんだっていう。たとえば『LEON』でもスタイルに注目しているアレキサンダー・マックイーン本人は、とあるポートレイトでちょっとゆるめにダイヤのリングをはめていて、それが抜群にカッコよかった。
ほかにもユナイテッドアローズの重松さんやカール・ラガーフェルドは両手にシルバーのリングを何個もつけていたりしたときがあって、どこかパンキッシュで無骨な感じが大人の色気を感じさせてくれたり。

加藤 そういうこだわりって個性があっていいですよね。

島田 ほかにも、雑誌『ENGINE』の鈴木編集長や坂本龍一さん、タケオ・キクチさんなどなど、カッコいい大人がたくさんいて、彼らの自由なイメージに影響を受けている人は多いと思います。きっとみんな欲望にストレートになってきているんじゃないかな。

加藤 なるほど。僕自身は、そんな自分のスタイルにこだわりのある人のオーダーを受けるのが好きなんです。
普段どんなファッションなのか、どんな音楽を聴いているのか、ライフスタイルはどんなものなのか、そういうことを想像して人間像を作り上げて、デザインに落とし込んでいくのが楽しくて。
結果、できあがるものも、その人の個性が反映された、オリジナリティあふれるアイテムに仕上がる場合が多いんですよ。

第13回 ボリス・ミハイロフという謎解き その3(番外編)

島田 まあ、あずさちゃんっていう素晴らしい伴侶にも恵まれたわけだし、仕事でもキミはほんとに人間関係に恵まれているわけだから、それに応えてがんばんないとね(笑)。

加藤 はい、重々感じています(笑)。

――(笑)島田さん、加藤さん、どうもありがとうございました。

第13回 ボリス・ミハイロフという謎解き その3(番外編)

PROFILE
島田 明さん(しまだ・あきら)
主婦と生活社「LEON」編集長代理。
アシェット婦人画報社「MEN'S CLUB」「GENTRY」を経て、
岸田一郎元編集長のもと「LEON」に参画。
ちなみに加藤博照さんの奥様の吉川あずささんとは旧知の仲で、
ふたりの仲人的存在。

[LEON]
URL■http://www.shufu.co.jp/magazine/leon/

nine SIXty

           
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