ゲスト:重松 理さん_3
重松 理さんに聞く_3
photo by Yuichi Sugita(BIGHE)edit by Daisuke Hata(City Writes)
ジョン ロブのこれから
松田智沖 重松さんはご自身が理想とされるスタイルを強くお持ちですよね。
重松 理 靴でいえばロンドンのジョン ロブが'40年代頃に誂えていたビスポークシューズが、理想的なスタイルです。ウエストがものすごく“くられて”いて、ヒールも小さく、細身で、長い、フレッド・アステアが履いていたようなものね。そんなフォルムが日本人の自分の足に合うわけはないのですが、その理想像を自分の足に合わせるような作り方をしていただけたら、私はずっとジョン ロブの靴を履きますよ。
松田 職人に話を聞くと、日本のお客様はルーズフィットを好まれるので若干靴をゆるめに作ることが多いと言います。でも重松さんの場合は逆ですね。
重松 ええ、でも日本人の多くは紐靴よりもスルッと履けるスリッポンを好みますね。文化の違いだと思いますけど。向こうの靴文化が日本に根づくにはあと100年かかるとこの頃つくづく感じます。もちろん人それぞれ心地良いフィットが違うんでしょうけど。
松田 私も、学生時代にサッカーをしていたものでスパイクに慣れているせいか、タイトフィットの方が心地良いですね。
松田 ところでクルマや時計、靴には男性の自分の好みや理想が最も反映されるという話を聞くのですが、重松さんはどう思われますか?
重松 僕が靴をなぜ好きかといえば、きっと、横から見るとスポーツカーに似ているからなんですよ。靴も車も一緒で、造形そのものが好きなんでしょう。ただ不思議なのは、靴はつま先が薄くてスッと長く伸びたフォルムが好きなんだけど、車だとまた別。フェラーリみたいのは好きじゃない。どうしてなんでしょうね……あっ、ジョン ロブを履く紳士がフェラーリには乗らないか。そういう背景も含めてジョン ロブの靴が好きなんですね(笑)。
ジョン ロブの良さは、歴史と伝統、あとは技術にあると思っています。ビスポーク、プレタポルテ含め、トータルクオリティにおいて最高峰のブランドのひとつであることは間違いないですよ。好みもあるでしょうが、誰に聞いても5本の指には挙げますよね。そういう意味では非常に権威あるブランドだと思います。
松田 そう言っていただけて光栄です。ぜひご意見をうかがいたいのですが、ジョン ロブは今後、カジュアル方面も充実させていきたいと思っていて、そこでどういったものを提案差し上げれば『ジョン ロブらしさ』を保ちながらいい物ができると思われますか?
重松 基本とすべきなのは南仏のリゾートテイストですよね。カントリースタイルのスエード靴をカラフルな色で展開してくれればいいなと思います。あとはくだけた感じにデザインされたスリッポンが欲しい……、ほかはドライビングシューズとか、キャンバスシューズとか……、そう、それにグッチのビットモカシンみたいなアイコンがあるといいですね。歴史のあるブランドだから難しいというのもお察ししますが」
松田 JとLのロゴをくっつけたデザインのバックルベルトを、実は昨年から始めたんです。こちらですね。
──商品のベルトを手にして
重松 いいじゃないですか。シグネチャーはもっとやった方がいいですよ。それこそストラップの留め具に使うとかね。カジュアルシューズには合うんじゃないですか。
松田 早速、本国にリクエストさせていただきます。本日はお忙しいところ本当にありがとうございました。ぜひ店内もご覧になっていってください(笑)。
──対談を終えて
僕はビームスで育った世代なので、ビームスでずっとやって来られて、UAを立ち上げられたご本人であられる重松さんとこうしてお話できたことを、本当に嬉しく思います。ひとつひとつの言葉が非常に参考になりましたし、楽しく、有意義な時間をくださったことを感謝いたします。
(松田智沖)