(1)「小山薫堂さんの言い訳」
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2015年5月14日

(1)「小山薫堂さんの言い訳」

放送作家に小説家、ラジオパーソナリティにホテルの顧問などなど、活躍するフィールドは数知れず。仕事も趣味もひっくるめてあらゆる事象に愉しみを見つける才人、小山薫堂さんとお会いすると、いつも時間を忘れて話に聞き入ってしまいます。
お2人目のゲストとして、多彩な顔をもつ小山さんの仕事観や近況、はたまた健康法について、4回にわたりお話をうかがいます。

photo by Jamandfixedit by Daisuke Hata (City Writes)

仕事という言い訳で趣味を広げているんです

松田智沖 小山さんは放送作家をはじめ、いろいろなお仕事をされています。きょうはその原動力、仕事観といったものをお聞かせいただきたいと思います。

小山薫堂 これはよく言う例えなのですが、僕は「誕生日プレゼントマニア」なんですよ。人に誕生日プレゼントをあげたときの、喜んでもらえた喜びというのが好きでして。
じゃあ誕生日以外にも喜ばせるにはどうすればいいかと考えたとき、僕の場合は番組をつくったり、新しいお店のプロジェクトに関わったりすることで、いろんな人がいろんな立場で喜んでくれるのではないかと思っているんです。
そういう人の喜びを自分の喜びに感じるために仕事をしているというのがありますね。すごく綺麗な、偽善的な言い方ですけど(笑)。

松田 いえいえ。

小山 それと、仕事という言い訳で趣味を広げているという感覚はありますね。クライアントがいて発注を受けてやるというよりは、「こういうのが好きだからやる」というスタンスで。仕事だと遊んでいても怒られない。

たとえばおいしい蕎麦が食べたいからと蕎麦打ちの道場に通っていると 「仕事もしないで遊んでばかりいて」 と言われますよね。でもそれが「蕎麦屋を作ろう」となれば、この人仕事してるんだ、となる。(仕事が多岐にわたるのは)それに近い感じですね。ワインが好き、だからバーをやろう、という。そんなことばかりなのであんまり儲からないですよ(笑)。

松田 好きだから、そこからもどんどん広がっていきますよね。

小山 ええ、自分の池があるとすれば、そうじゃない池なり海なりに行ったときに、そこでまったく予期しない人と出会って、そこでまた別の池なり海なりに世界が広がっていく、そんなイメージでしょうか。

小山薫堂さん

いいものは紹介したいけど、自分だけのものにもしたい

──料理のお話が出たのでお聞きしたいのですが、テレビ番組 『料理の鉄人』 はご自身で食べ歩かれ見つけたお店を紹介していたのですか?

小山 いえ、自分の知っているお店は極力出したくなかったというのが本音です。こういう言い方するとなんですけど、自分のテリトリーを奪われたくなかったので(笑)。難しいですよね。いい店は紹介したいけど、自分の行くいい店は紹介したくない。

松田 そのあたりの塩梅は難しいですよね。じつはジョン ロブもあまり宣伝をしてこなかったんですよ。そのことについて賛同してくださるむかしからのお客さまもいらっしゃって。そんなお客さまには「みんなが知ってるブランドになってほしくない」という気持ちがあるようです。

小山 微妙なさじ加減ですね。レストランの場合、自分だけのお店にしておきたい願望があっても、あまりに「知る人ぞ知る」が過ぎて潰れてしまっては意味がない。ほどほどに露出してもらうのがいちばん(笑)。

松田 そういえば先日、お昼休みに「東京カレーラボ」 (小山氏がプロデュースする東京タワー内のカレーレストラン)」 へ行きましたよ。おいしかったです。

小山 ありがとうございます。

松田 いま東京タワーという場所がクローズアップされているじゃないですか。ゴールデンウィークもすごく人が集まったと聞きました。

小山 ええ、でも東京タワー自体はミッドタウンやヒルズや丸ビルのようなお洒落なお店はなくて、むかしながらの土産物屋さんばかり。あれはもったいないと思うんですよね。

松田 あそこだけ浅草の仲見世みたいな。カレーラボだけ浮いてますよね(笑)。

小山 ホント浮いてるんですよ(笑)。客層があそこだけちょっと違う。だからモダンなタッチの店をもっと増やしていった方がいいんじゃないですか? というようなことは話したりもするんですけどね。

東京カレーラボ
http://www.tokyocurrylab.jp
小山薫堂さん

1964年熊本県生まれ。日本大学芸術学部卒業。『N35』 『オレンジ・アンド・パートナーズ』代表。放送作家として 『カノッサの屈辱』 を手掛けたことで脚光を浴び、その後も 『料理の鉄人』 『世界遺産』 『東京ワンダーホテル』 といった数多くの人気番組に携わる。現在は 『トシガイ』 (日本テレビ)、『エコラボ』 (フジテレビ) などを手掛ける。またラジオパーソナリティや小説家、日光金谷ホテル顧問などとして、多彩なフィールドで活躍中。著書に 『フィルム』 (講談社)、『一食入魂』 (ぴあ)、『考えないヒント』 (幻冬舎新書)、絵本 『まってる。』 (千倉書房) などがある。

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モデル『フォクストン』

スリッポンの定番ラスト 『4596』 をベースにしたタッセルローファー。
スエードのアッパーに施された端正なモカステッチが、デザインへさりげないアクセントを添えています。細部の美しさの追求にも余念がありません。革紐にはアッパーと同素材の革を用い、かつ表裏どちらも美しく見えるよう革と革を貼り合わせてあるなど、職人のていねいな手仕事が随所に活かされています。夏のリラックスカジュアルを上品に彩る一足になってくれることでしょう。

           
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