SOMEONE’S GARDEN 西村大助 津留崎麻子 インタビュー 後編
Design
2015年3月18日

SOMEONE’S GARDEN 西村大助 津留崎麻子 インタビュー 後編

赤いポピーでヨーロッパ中のアーティストやクリエイターをつなぐ、FLOWER BY YOU。約1ヶ月、各地をクルマで移動する貧乏旅行。その道中さえも楽しかったと振り返る二人が旅の果てに発見したものとは?

文=田村十七男写真=北原 薫

──FLOWER BY YOUのウェブを開くと、最初に赤いポピーを抱いた女性の写真が目に飛び込んできますが、あれは津留崎さんだったんですね?

津留崎 ええ、そうです。西村くんが撮ってくれました。なにしろ二人きりだったから、旅の様子を伝えるには他に手段がなかったというか……。

──二人だけでヨーロッパを回ったんですか?

西村 最初から貧乏旅行(笑)。ミラノからスタートして、ウィーン、ベルリン、アムステルダム、アントワープ、ロンドン、そしてパリと、約1ヶ月レンタカーの旅。お金がなくて車中に寝たことも何度かあったよね。

津留崎 高速道路で煙が吹いたこともあった(笑)。

西村 あれは死ぬかと思いましたよ。

──なんと壮絶な! しかし、どんなクリエイターに会うかはさすがに最初から決めてあったのでしょう?

西村 このプロジェクトを発案したとき、僕がかつて制作していた「TOKION」という雑誌で知り合ったクリエイターに相談して、何人かは紹介してもらったんです。あとは、ほとんど行き当たりばったり。

──みなさん快く会ってくれましたか?

津留崎 国は違っても、同じ志を持っている人たちですからね。それに、私たちがいかにも貧乏そうな旅をしていたから、ことさら優しくしてくれたのかもしれません。

西村 クリエイターって企業の論理じゃ動かないんですよ。やっていることに意味を感じないと協力してくれない。今回のプロジェクトは、なにしろ僕らがヨーロッパ中のアーティストやクリエイターに会いたいという思いから始まっているから、そこが理解されたんだと思います。会いたい人も、僕らの目線で選びました。出会った約70人は、新人や大御所、メジャーやインディーズに関わらず、並列に紹介しています。そして誰もが赤いポピーを持っている。旅をしながら確実につながってゆく実感がありましたね。

津留崎 予期しない出会いも多かったですね。デンマークに立ち寄ったとき、偶然ある映画祭が行われていて、いくつかの作品を見て回ったんです。でも、どの映画館も今時のシネコンスタイルで、あまりパッとしなかった。そんな中、初老の夫婦が経営している古い映画館がありました。半地下で趣があって、しかもその夫婦が配給もしているというんです。私たちが行ったときは、「愛おしき隣人」を撮ったロイ・アンダーソン監督の作品を上映していて、聞けばアンダーソン監督が無名の頃からずっと応援してきたんですって。そんなケース、日本じゃまず考えられません。

西村 FLOWE BY YOUの旅で発見したのは、日本が失ったものかもしれません。何かにつけ巨大な資本がないと何もできないみたいな、そういう現実だけが正しいのか? でも、実際に行動を起こしてみると、小さな赤いポピーでも人の心をつなげることはできるんですよね。だから僕らはそういう広がりを大事にしていきたい。それこそがKENZO PARFUMSのメッセージだと思うんです。

西村大助
東京大学大学院総合文化研究科生命物理学修士取得。博士中退。同時期に画家活動を開始。01年にアーティストビザを取得し、ニューヨークに渡り、雑誌『TOKION 』のWebデザイナー兼エディター(兼ショップスタッフ)として勤務。在米中はアートスペース CAVE にアーティスト・イン・レジデンスとして住み、毎月オープンスタジオ兼展覧会を開催するほか、Transplant Galleryでの個展(2003年)や、オノ・ヨーコ、キム・ゴードンらが参加した『NEWS FROM HOME』展(2004年)などにも参加する。並行してインディーバンドDoroとしてライブ活動も展開。帰国後は『TOKION JAPAN』の復刊に編集責任として携わり、「2004/2005 Tokion Creativity Now(ラフォーレミュージアム原宿)」などを企画。07年に「 SOMEONE'S GARDEN 」を立ち上げ、フリーマガジンの発行、アートイベントや展覧会、音楽イベントの企画運営、映像制作、ライブ活動などを精力的に展開している。また、Webデザイナーとしても、「TOKION」「ecocolo」「スペースシャワーTV 」「 Myx 」などのサイト制作を手がけている。

津留崎麻子
日本大学芸術学部映画学科卒業、早稲田大学大学院文学研究科演劇映像中退。在学中より映画配給会社に在籍。EUROSPACE、東京国立近代美術館フィルムセンター、SPIRAL、UPLINKなどで配給・広報を担当し、フィルムを中心としたアーティストを紹介する活動に携わる。SOMEONE'S GARDENでは「Flower by you」(KENZO PARFUMS)のタイアップ企画や「Pulse of life」(NIKE)など、プロジェクト企画運営を担当している。

フリーペーパーマガジン「SOMEONE'S GARDEN」
現在は最新号のNo.8 “PAPPA DREAMED A ROLLIN STONE”が配布中。

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