cafe&gallery|谷中近くの銭湯前にグリーンなカフェオープン
LOUNGE / EAT
2015年2月23日

cafe&gallery|谷中近くの銭湯前にグリーンなカフェオープン

cafe&gallery|カフェ&ギャラリー

東京ダウンタウン、谷中近くの銭湯前に開店したグリーンなカフェ

「フロマエcafé&ギャラリー」オープン

 

その名の通り、目の前が銭湯、風呂前(フロマエ)である。江戸時代から人びとが交流する場として、コミュニティの場として機能してきた銭湯のように、いろいろなひとが交流し、発信してほしいという願いも込められた命名である。

そのコミュニティ要素をバックアップするのが、オーガニックな食と自然素材、自然エネルギーを使った内装や設計である。訪れるひとが癒される、元気になれるフロマエのグリーンなこだわりを紹介したい。

Text by 箕輪弥生(環境ライター)Photographs by Yoko Ueno Lewis(http://www.yokoueno.com/)

自然素材のなかでくつろぐ

ひとがもっともくつろぐときは、自然のなかにいるときだろう。日差しが入る、風が通る、空気がいい、そして自然の木立に囲まれて――そんな環境をカフェにも作りたい、いるひとがほっとくつろぎ、忙しい毎日の合間に息抜きをしにくるような場所。「フロマエcafé&ギャラリー」には、そんな自然を感じられる内装、設計が随所に見られる。

壁は調湿効果の高い珪藻土を使っている。珪藻土のスペシャリストや建築家の指導のもと、スタッフ、関係者が一般の方と一緒に、ワークショップ形式でセルフビルドにより塗っていった。初めて左官コテを使うひとも多かったが、珪藻土は安全性も高く、慣れてくると素人でも十分施工できる素材である。

セルフビルドできる素材というのは、後からのメンテナンスを考えてもメリットが大きい。何より、自分が塗った壁は誰もが愛着がわくものだ。ワークショップは「いとなみネットワーク」という環境建築家黒岩哲彦氏が率いる集団が主催しておこなった。

フロマエcafe&gallery|谷中 02

壁に使われた「MPパウダー」という珪藻土は湿度を調整する調湿効果に大変優れており、防臭効果やホルムアルデヒドなどの化学物質を吸着、分解するなどの機能をもっている。空質を高めていくにはとてもいい素材だ。

床材は、岡山県西粟倉村の杉の無垢材を使っている。間伐材をタイル状にした同村の木材製品などの開発会社「ニシアワー」オリジナルの「ユカハリタイル」。傷んだところだけ取り換えられる手軽さが便利な製品である。

カウンター周りは“銭湯のイメージを”という設計担当のGN建築デザイン室の前田幸則氏のアイデアで、タイルを多用して構成された。キーカラーのブルーがリズミカルに飛ぶタイルのカウンターは清潔感もあって、楽しく仕上がった。

そして、ギャラリー側の出窓は、光を取り入れ、風を呼び込む仕掛けがしてある。建築家の黒岩哲彦氏のこだわりでもある。夏は出窓上についている通風窓から北側の涼しい空気と光を呼び込む。入り口から見たときにまっすぐ正面に見えるという視線を意識したライトスペースにもなっている。

ギャラリースペースはカフェとの間にある可動式の仕切りによりイベント時は一体化して使うこともできるが、展示時はカフェ併設のフレンドリーなギャラリーとなる。

置いてある家具や棚は、福島の古材をリメイクして作っている。カフェやギャラリー部分の机はどこかの古民家の床の間の板だったそうだ。アイアンの脚と合わせて机となり、あたらしい命が吹き込まれた。

そして、もう一つ、このカフェの給湯には太陽熱温水器を設置している。晴れた日には太陽の熱で温水を作ってくれる。効率のいい自然エネルギーの使い方だ。飲食店で太陽熱温水器を使っているのはめずらしいかもしれない。

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オーガニックなフードで元気に

食べることはカフェの最大の目的でもある。環境への負荷、健康や食の安全性、おいしさを考え、なるべく無農薬、有機栽培のものを使うように心がけられている。

野菜やお米は、千葉や埼玉の若い有機農家さんから直接仕入れ、コーヒー豆は近隣にある「やなか珈琲」のオーガニック栽培の焙煎したてのコーヒー豆を購入している。

お米は合鴨農法といって、農薬を使う代わりに田んぼにアイガモを放して草や害虫を食べてもらい無農薬でお米を作る農法である。これによって殺虫剤・除草剤を使わないだけでなく、アイガモの排泄する糞尿は、有機肥料となって稲の成長に役立つという。とても合理的で、人間も動物も環境も共生する農法だ。

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ランチのメニューは有機野菜をたっぷり使ったお惣菜3品とスープ、ご飯またはパンを選べる「フロマエデリプレート」とスパイスをたっぷり使った「スリランカカレー」がおすすめだ。

なかでもスリランカカレーは、カレーの本場スリランカのバイオフーズ社の有機JASとフェアトレード認証を得たオーガニックスパイスをふんだんに使っている。現地では、小規模農家さんが農薬や化学肥料をいっさい使わず、農場をひとつの有機体とみなし生産する「バイオダイナミック農業」でスパイスを育てている。

カレーは有機の生姜もふんだんに使っているので、スパイスとの相乗効果で身体が温まるのを実感できる。フロマエのカレーはまさに薬膳のようなパワーフードなのだ。

夜はビオワインやビールとともに、バーニャカウダーやフムスなど、簡単なおつまみも楽しめる。もちろん、目の前の銭湯でひと風呂あびてビールというのも粋かもしれない。

これからはアートや環境系のイベントなど、ギャラリーを生かした展開も増えていきそうだ。地域に溶け込み、肩ひじ張らないグリーンなカフェが東京にまたひとつ登場した。

フロマエcafé&ギャラリー

東京都荒川区西日暮里 4-21-7 コート池上1階

営業時間|(火~金)11:00~21:00(LO20:30)

(土日祝日)11:00~19:00(LO18:30)

月曜定休

http://furomae.jimdo.com/

黒岩哲彦 アルキテクタ

http://architecta.jp/

GN建築デザイン室

http://www.green-necklace.org/eachproject/architecture.html

           
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