ルノーが提案する、あたらしいラグジュアリーカー|Renault
Renault Initiale Paris|ルノー イニシャル パリ
高級車として「エスパス」が復活することを示唆
ルノーが提案する、あたらしいラグジュアリーカー
ローレンス ヴァン デン アッカーによってスタートした、ルノーのデザインルネッサンスの完成をしめす、計6台からなる一連のコンセプトカーシリーズの最後を飾るモデル、「イニシャル パリ」がフランクフルト モーターショーで公開された。テーマは知恵“Wisdom”。その正体は、SUVライクなラグジュアリーミニバンの提案である。
Text by SAKURAI Kenich
新しいモノスペース ラグジュアリーカーの提案
ルノーは、ミニバン「エスパス」の後継モデルとなるコンセプトカー「イニシャル パリ」をフランクフルト モーターショーで公開した。これは、ルノーのチーフデザイナー、ローレンス ヴァン デン アッカーによってスタートしたデザインルネッサンスの完成をしめす、計6台からなる一連のコンセプトカーシリーズの最後を飾るモデルだ。
ルノーはコンセプトカー「イニシャル パリ」の公開にあわせ、フランクフルト モーターショーにおいて、これまで発表した5台のコンセプトカーも同時に展示している。
「イニシャル パリ」は、ルノーのデザインルネッサンスの、これまで未発表だった、知恵“Wisdom”を具現化したものだ。これまでお伝えしてきたとおり、ルノーは人生を6つの重要なシーンに区切り、それを“6つの花びら”にたとえ、それぞれのテーマごとにコンセプトカーを発表してきた。
この6つのシーンとは、男女が恋に落ちる“Love”、2人で世界を旅する“Exploration”、そして家族になる“Family”という3つの過程と、仕事“Work”、遊ぶ“Play”、知恵“Wisdom”という3つの重要なキーワードであらわされている。さらに、それぞれにテーマカラーがさだめられており、これまで発表されたコンセプトカーは、そのテーマにそったボディカラーをまとってきた。
今回登場したコンセプトカー「イニシャル パリ」は前述の通り知恵“Wisdom”をあらわしている。紫色がテーマカラーだ。同時に、プレミアムセグメントにおけるルノー ブランドの、シンプルで官能的、しかも暖かい感情を示すスタイリングを、あたらしいデザイン言語に基づいて作り上げているという。
実際のスタイリングは、スマートな背の低いミニバンと、最低地上高をしっかりと確保したダイナミックなSUVのキャラクターを融合させた、新種のクロスオーバーといえるものだ。22インチサイズのホイールとユニークな処理をほどこしたガラス製のルーフ、そしてボリューミーなリアセクションが印象的である。
また、グリルやホイール、ヒンジ式の後部ドアを開けたフロア部分といった、車両の内外装に繰り返しもちいられるダイヤモンドの形状をモチーフにしたハニカムデザインの採用も特徴で、これは、飛行機のフレームをおもいい起こさせるだけでなく、グランパレ、エッフェル塔といったパリの象徴的な建造物にインスパイアされて導入を決めたものなのだという。車名の「イニシャル パリ」をデザインで表現したともいえそうだ。
Renault Initiale Paris|ルノー イニシャル パリ
高級車として「エスパス」が復活することを示唆
ルノーが提案する、あたらしいラグジュアリーカー (2)
インテリアは、アルミとウッドを効果的に使用した、一体感あるデザインが特徴的だ。マット仕上げのクルミ材が洗練された落ち着きある雰囲気を醸しだし、そのいっぽうでクロームのパーツが未来的なイメージをもたらしている。コンセプトモデルは、フル4シーターにベンチシートをくわえた3列シートレイアウトを採用しているが、この3列目シートのバックレストは、細かないわゆる短冊状にわけられ、折りたたみのさいには機能的に可動する。部分的に倒しアームレストとして使用できるほか、載せる荷物のサイズにあわせて、何本かを任意でたためるので、これまでにない使い方が工夫できる。
観音開きのサイドドアと、電動ランニングボードの採用により、乗り降りがしやすくなっている。フロアの高さは、こうした装備のおかげで、ビハインドとはいえない。反対にこのランニングボードと、左右に大きく開くドアは、デザイン上のポイントにもなっている。
ロングドライブを楽しむために、音響にもこだわり、BOSEのサウンドシステムを搭載するほか、ガラス製のダイヤモンド形状の個性的なデザインを採用したルーフが、柔らかに外光を取り入れるなど、キャビンの居住性を向上させるアイデアは満載だ。特にシートに座り、車内からルーフを見上げたときに視界に広がる景色は、いままでどのクルマでも体験し得なかった印象的なものだ。これは、ラグジュアリーカーとしてかんがえられる、ルノー流の「おもてなし」の具現化でもあろう。
エンジンは、400Nm(40.8kgm)のピークトルクを発生するツインターボの“dCI 130”エンジンで、これに6段デュアルクラッチ トランスミッションを組みあわせた。低燃費と40g/kmというCO2排出量がもたらす環境性能にくわえ、わずか1,500rpmから最大トルクの約90パーセントを発生する、パワフルな走りを両立させている。
ルノーは、「イニシャル パリ」を高級車だと言い切る。人生をより官能的に過ごすために、本格的なラグジュアリーを体験させてくれるデザインと装備、そしてパフォーマンスを採用したという。これは、大きなセダンが高級車であるという固定観念に対するアンチテーゼでもある。
名車「エスパス」の後継モデルとなるコンセプトカー「イニシャル パリ」は、単なる3列シートのミニバンではない。あたらしいデザイン言語をもちいた個性あふれるフォルムは見どころのひとつだが、それ以上に、そこにはルノーのかんがえるあたらしいモノスペースのラグジュアリーカー像が映し出されているのだ。生産中止から11年たった「エスパス」は、ちかい将来、フランスを代表する高級車として復活を果たすかも知れない。