MOVIE|出版50周年を迎える瀬戸内寂聴の代表作を映画化『夏の終り』
MOVIE|出版50周年を迎える瀬戸内寂聴の代表作
ふたりの男の間を揺れ動く女性を描く『夏の終り』(1)
瀬戸内寂聴が自身の体験をもとに小説にし、出版から50周年という節目の年を迎えたベストセラー『夏の終り』を、熊切和嘉監督が映画化。8月31日(土)からロードショーされる。
Text by YANAKA Tomomi
静寂のなかに、あふれ出る登場人物たちの情熱を描き出す
ふたりの男の間を揺れ動くひとりの女性を瀬戸内寂聴が描き、これまでに100万部を超えるロングセラーとなっている『夏の終り』。男女の三角関係が静かに燃える、“夏の終わり”にぴったりな大人のラブトーリーが誕生した。
主人公、知子を演じるのは満島ひかり。妻子ある不遇な作家との、長年に及ぶ愛の生活に疲れ果てるも、年下の男との激しい愛欲にも満たされない。そんな自身の女の業に苦悩する難役を演じきった。
知子を愛し、優しく見守りながらも、妻とも別れられないという、寛容さとずるさをあわせもつ年上の男、慎吾に小林薫。大人の熟練した演技を見せる。そして、知子を激しく求め、嫉妬と孤独に苦しむ年下の男、涼太は綾野剛が演じた。
監督は『鬼畜大宴会』で鮮烈なデビューを飾り、近年は『海炭市叙景』で高い評価を得た熊切和嘉監督。重厚で静寂な世界観のなかに、登場人物たちのあふれ出る情熱を描き出した。
MOVIE|出版50周年を迎える瀬戸内寂聴の代表作
ふたりの男の間を揺れ動く女性を描く『夏の終り』(2)
本当の気持ちに気づきはじめる知子
妻子ある年上の作家、慎吾と長年一緒に暮らしている知子。慎吾は妻のいる家と知子の家を、週にきっちり半分ずつ、行ったり来たりしている。慎吾に妻と別れてほしいと考えたこともなく、知子はこの平穏な生活に、自分が満足しているとおもっていた。
しかし、ある日、かつての恋人だった木下涼太が訪ねてきて、知子の生活は微妙に狂いはじめる。涼太は昔、知子が結婚していたころ、どうしようもなく恋に落ち、夫と子どもを捨てて駆け落ちをした相手だった。
知子は慎吾との生活をつづけながら、涼太と再び関係をもってしまう。そして、知子を求める涼太の情熱はやがて、知子が心の底にしまいこみ、自分自身も気づいていなかった本当の気持ちを揺さぶり起こしていくのだ。
静かな色気を放ち、心に深い絶望を抱える慎吾と、どんなに虐げられても一途に相手を求める涼太。ふたりの間で揺れながら、独自の愛を貫こうとする知子。個性が光るキャラクターを、実力派俳優陣が鮮烈にスクリーンに焼き付ける。
『夏の終り』
8月31日(土)より全国ロードショー
監督│熊切和嘉
出演│満島ひかり、綾野剛、小林薫
配給│クロックワークス
2012年/日本/114分
http://natsu-owari.com/
© 2012年映画『夏の終り』製作委員会