独自の解釈を示した作品

2011年、台湾・高雄のマリタイム・カルチャー・アンド・ポピュラー・ミュージックセンターの国際設計コンペティション提出案、「foam form」。高雄市を流れる川の、幅1km以上とその沿岸を含めた巨大プロジェクトだ。平田氏は音楽施設をはじめ、橋や遊歩道など、デザインと構造体が一体となったインパクトの強いプランを提案。若手建築家ながら、この大舞台で全体の2等案として選ばれた。惜しくも実現とはならなかったが、大胆かつ斬新な平田氏の提案は大きな話題をよび、その後、この案を見たという海外のクライアントから、大型施設の設計依頼が相次いだ。

また、同年10月から1年間、東京都現代美術館の敷地内で開催された「ブルームバーグ・パヴィリオン・プロジェクト」。これは、東京都現代美術館敷地内に建てられたパヴィリオンを舞台に、1年間にわたって東京在住の若手アーティストにチャレンジの場を提供し、個展や公募展、パフォーマンス・イベントを開催していくプロジェクトだ。ここで平田氏は、美術館のメインエントランスのすぐ横に、MOTの新しいシンボルともいえるパヴィリオンを制作。三角形のシンプルな建築に、二等辺三角形の集合体の構造物が巻き付いたような作品。この内部空間が若手アーティストの作品の展示スペースとなっている。

台湾・高雄の国際設計コンペ提出案「foam form」

建築家・平田晃久氏

建築と社会のつながりに必要なもの

建築界のノーベル賞ともいわれるプリツカー賞を、故・丹下健三氏（1987年）、槇文彦氏（93年）、安藤忠雄氏（95年）、SANAAの妹島和世氏＆西沢立衛氏（2010年）に続き、日本人6人目として、今年の3月に受賞した伊東豊雄氏。かつて、伊東豊雄建築設計事務所に在籍した平田氏にとっては、師匠にあたる存在だ。その伊東氏をコミッショナーにむかえ、平田晃久氏、乾久美子氏、藤本壮介氏、の建築家4人で出展した、第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展（2012年8月29日～11月25日）では、岩手県陸前高田市に計画した「みんなの家」の計画概要を展示。東日本大震災後の、建築のあるべき姿を世界に問いかけたことが高く評価され「金獅子賞」を受賞した。

また、同年の岩手県釜石市の災害復興公営住宅設計プロポーザルでは、 市営住宅に保育園が併設された案を発表。小さい空間をまとめながら、住宅全体としてのコミュニティを創出する新しい提案を行っている点や、周辺地域への開放性の面で復興のシンボルとしてふさわしい点などが評価され、最優秀賞を受賞。 外観は大きな切妻屋根が特徴的で、屋根の下でコミュニティのを提案しているほか、この屋根があることで居室内に効率の良いスムーズな風の流れが生まれるという。

第13回ヴェネチア・ビエンナーレで「金獅子賞」を受賞

岩手県釜石市の災害復興公営住宅設計プロポーザル最優秀賞

建築と環境との関係に独特の解釈を示し、今年に入ってからも、国内外でさまざまなプロジェクトを発表している平田氏。建築へのアプローチについてどんな話がきけるのか、注目したい。

平田晃久｜HIRATA Akihisa
1971年大阪府生まれ。97年京都大学大学院工学研究科修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務を経て、2005年平田晃久建築設計事務所設立。主な受賞に、第19回JIA新人賞（2008年）、ELLE DECO Young Japanese Design Talent 2009、グッドデザイン賞（2010年）。2012年にElita Design Awardsグランプリ（Photosynthesis）、第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 金獅子賞（日本館）など多数受賞。現在、東北大学特任准教授、東京大学、京都大学非常勤講師。
平田晃久建築設計事務所　http://www.hao.nu

建築レクチュアシリーズ217
日程│2013年7月26日（金）
時間│開場18:00／開演19:00　終了20:30
レセプション｜20:30～21:30
ゲストスピーカー│平田晃久
会場│ユニオン（ユニオンショウルーム・アトリエユニオン大阪）
大阪府大阪市西区南堀江2-13-22
入場料｜1000円
申し込み│ウェブページより受付
www.217.aaf.ac
特定非営利活動法人（NPO法人）アートアンドアーキテクトフェスタ
www.aaf.ac