新型ポルシェ発表、LAオートショーリポート|Porsche
CAR / NEWS
2019年3月26日

新型ポルシェ発表、LAオートショーリポート|Porsche

Porsche 911|ポルシェ 911

LAオートショーでポルシェが992型を披露

賢くも質的な進化ぶりをディティールチェック

ロサンゼルス モーターショーにおいて、第8世代の992型へと進化したポルシェ「911」。現地で発表会に参加し、実車を目の当たりにした南陽一浩氏が、そのディテールをリポートする。

Text & Photographs by NANYO Kazuhiro

見ためより進化した質

フロアは、さすがにごった返していた。あとで聞いた話では、プレスカンファレンス会場に入りきらないジャーナリストも少なくなかったとか。立錐の余地もなかったとはいえ、入れただけでもラッキーだったかと思い直した。11月29日、ロサンゼルスオートショーにてコンベンションセンターのウェストホール内、他とは仕切られた「別室」のようなスペースにポルシェはブースを構えていた。型式名992、つまり第8世代の新しい「911」のアンヴェールは、前夜にクローズドの披露は済んでいたとはいえ、それほどまでに世界中から大きな注目を集めたのだ。

今回のLAオートショーで公開されたブルーとイエローは2台とも「カレラ4S」。外観上の特徴はリアのバッジはもちろん、大型の楕円マフラーエンドが左右各1本の2本出しとなる。カレラSでは丸4本出しなのだ。

ポルシェ

ポルシェ

スペックめいたことを先に述べれば、全長4,519×全幅1,852×全高1,300mmという外寸は、現行991型カレラ4Sの4,499×1,852×1,298mmと比べると、横幅はそのままに全長が2cm、全高は2mmと微増したことが分かる。現行991型では2駆モデルには全幅1,808mmのよりスリークなボディが与えられていたが、992は2駆モデルも基本、4Sボディに統一されるという。ホイールベースは2,450mmのまま変わらず、車重はDIN値で1,510kgから1,565kgと+55kg増加している。

ただし実車を目にすると、より少し低まってフロントフェンダーがフレアしたような印象すら受ける。実際にはリアホイールが20→21、フロントタイヤが19→20とインチアップしたにも関わらず、全高は+2mmに収まったということで実質的に重心は低くなっているだろう。ちなみに前後のタイヤサイズは245/35ZR20、305/30ZR21と、タイヤのトレッド幅自体は991型から変化はない。それでもCD値は0.30から0.29へと向上しており、質での進化をうかがわせるサイジングとジオメトリーといるだろう。

ついでにいっておけば、992のボディはアルミニウムを採用しており、あまつさえ今回の展示車のルーフにはカーボンパネルがはめ込まれていた。セミ自動運転モジュールなど、電装系で重さがかさむというネガティブインパクトを、ボディ自体のダイエットと低重心化で克服する方向といえる。

Porsche 911|ポルシェ 911

LAオートショーでポルシェが992型を披露

賢くも質的な進化ぶりをディティールチェック(2)

ポルシェってホントに頭がいいなと思わされる

2,981㏄ツインターボのフラット6は450ps/6,500rpm、530Nm/2,300-5,000rpmで、プラス30psの出力とプラス30Nmのトルクが目を引く。最大トルクの発生域がやや上方移動して出力も増えたことで、よりトップエンドでの伸びを実現したことをうかがわせる。ガソリン用微粒子フィルターを備え、ユーロ6d対応だ。もうひとつエンジン周りで注目ポイントは、911伝統のディティールといえるエンジンフード上のスリットが、リアウインドウと接する側に引き上げられたことだ。

空力的にはボディ後端ほどエアの流れは乱れやすいものなので、よりルーフに近い位置でフレッシュエアを採りこもうという、吸入や冷却効率のインハンスを狙っているだろう。このスリット状グリルには新たに縦型となったハイマウントストップランプも設けられる。昨今、他車も次々と真似ている、991が流行らせた横一文字のリア コンビランプ&ガーニッシュは、LEDテクノロジーによってより薄く細くなって水平基調を強め、さらにサイドへ回り込む形状となった。これも、全幅はそのままにワイドさを増したかのように強調するディティールといえる。

ポルシェ

ポルシェ

フロント側に目を移せば、ヘッドライトの構成とバンパー下の形状が大きく変えられた。日中走行灯がバンパー内の薄いLEDだけでなく、コンビネーションランプ内に配された四ツ爪状の点で灯る様は、「919ハイブリッド」を彷彿させる。その四ツ爪の上下左右と真ん中に、マトリックス照射が組み込まれているのだ。

またフロントバンパー内の開口部がほぼ四角く開けられたように見えるのは、既存の新車によくある、F1ノーズよろしくボディ同色の2本ステーでバンパーもしくはスポイラー下部を吊るす、そんなデザインに背を向けたからだ。この黒いウレタンパーツの中央にはアダプティブクルーズコントロールなどのモジュールを含むであろう前方カメラが、ナンバープレートが走行中もバイザーとしてそこそこ効果を果たすであろう、やや奥まったところに設置されている。

ポルシェ

ポルシェ

ちなみに衝突回避のためのコーナーセンサーもボディ側ではなく、このグレーのパーツの中に埋め込まれている。ようはちょっと擦ったとかブツけた際にも、センサーの取付交換や角度などのキャリブレーション調整が容易そうなのだ。こういうのを見せられると、ポルシェってホントに頭がいいなと思わされる。何せメーカーの中には、キャリブレーションの機器をディーラーに投資させたり、作業が煩雑化して高くなったサービス工賃料を顧客に支払わせて、平気なところもあるのから。

Porsche 911|ポルシェ 911

LAオートショーでポルシェが992型を披露

賢くも質的な進化ぶりをディティールチェック(3)

タイムレス マシン

内装に関して世の911オーナーがもっとも意表を突かれたであろうディティールは、ダッシュボードの形状、とくに助手席側である。オーバーハングを強めてエッジを効かせた造形は、996型で一度は止めたが997型、991型と柔らかな雰囲気だったものを、930型辺りに先祖返りしたかのような雰囲気だ。だがそれは奇をてらったというより、ダッシュボードセンターの高い位置にはめ込まれた10.7インチのタッチスクリーンを窓光から遮るという、実用性重視の意匠だろう。ナビや車両プロパティなどを含むポルシェ コミュニケーション マネージメントはここで操作するからこそ、まず視認性ありきというわけだ。

ところでダッシュボード中央にはアルミのインサートが横一文字にわたされ、ほぼフラットに配されたセンターコンソールといい、水平基調が強調されている。そこから8段PDKをつかさどるシフトレバーが小さく直立し(7段MT仕様は来年以降に登場予定だ)、エアコンの左右独立温度調整、風量という3つのレバーがあり、ドライビングやシャシー操作に関連する5つのトグルスイッチが設けられる。

ポルシェ

ポルシェ

ステアリングホイール上やウインカーレバー類を除けば、これら10点ほどのレバー、ボタン、ダイヤル類だけが物理的スイッチとなる。エアコン吹き出し口を挟んで、上方がドライビング関連、下の方は快適性にまつわるというロジックだ。

インストルメンタルパネル内、もっともプライオリティの高い中央を大きく占める、伝統のレブカウンターはアナログの針表示のまま、左右の各クラスターには7インチのHDモニターが配されている。5連メーターは左右の4つをデジタルディスプレイ&インテリジェント化することで、表示できる情報をさらに充実させたのだ。物理スイッチの減少とクラスタ内のインテリジェント化は、パナメーラ以降の流れに沿っているといえる。ちなみにドアパネルの意匠も、991型に比べて格段にクリーンな線で構成され、美しい。

ポルシェ

ポルシェ

オリバー・ブルーメ社長は、アメリカは今も911単体でもっとも販売台数の多い国であり「カリフォルニアとポルシェの関係は一種のラブ アフェア」とさえ述べた。アメリカで自動車の街といえばその製造業が拠点とするデトロイトだが、「非公式の自動車の首都」として自動車社会がもっとも発達したのはロサンゼルスであることは異論を待たない。「356」の時代からポルシェやその他のスポーツカーを受け入れてきた歴史と、代替エネルギー車の普及のために大きく舵を切った未来の、両方があるカリフォルニア。そこで発表された第8世代911のキャッチコピーは、「タイムレス マシン(Timeless Machine)」となっている。

その意味深な992型は、まだ価格未定ながらポルシェ ジャパンの公式サイトのラインナップには登場しているし、グローバルサイトでは英語のブロッシャーもダウンロードできる。デリバリーは来年前半になるだろう。

           
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