新型レクサスLSを米国で先行試乗|Lexus
Lexus LS|レクサス LS
新型レクサスLSを米国で先行試乗
今年1月年のデトロイトモーターショーでワールドプレミアを果たした、新型「LS」。レクサスのフラッグシップサルーンは、実際にどのようなモデルチェンジを果たしたのか。東京モーターショー開幕直前に国内発表も行われた最新のLSに、ひと足先に米国で試乗した金子浩久氏によるレポート。
Text by KANEKO Hirohisa
大胆な造形のインテリア
フルモデルチェンジしたレクサス「LS」のアメリカ仕様にサンフランシスコとその近郊で乗ってきた。
ご覧の通り内外デザインを一新し、数々の運転支援デバイスや安全装備を盛り込んだレクサスの意欲作である。
パワーユニットは、「LS500」に搭載される3.5リッターV6ツインターボのガソリンエンジン(421ps、61.2kgm)と、「LS500h」の3.5リッターV6ガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド(299ps、35.5kgm)の2種類。どちらにも新開発の10段ATが組み合わされ、後輪駆動と4輪駆動の2種類の駆動方式が選べる。
よりスポーティなセッティングが施された足回りを持つ「Fスポーツ」も選べるが、ホイールベースやボディなどは今のところ一種類に限られる。
ゴールデンゲイトブリッジのたもとから、まずは「LS500 Fスポーツ」で走り始めた。エンジンのみで後輪を駆動するスポーティ版だ。
走り出す前に、インテリアデザインの鮮やかさに眼を奪われた。機能的に見やすく使いやすい配置がなされているのと同時に、エモーショナルな造形と素材使いが先代までのLSや他のレクサス各車を大きく凌いでいる。造形に力があって、大胆になっている。
1年近く前に発表された2ドアクーペの「LC」でも同じ印象を抱いたが、これでレクサス独自の個性が芽生えてきたのだったら大いに喜ばしい。
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ガソリンかハイブリッドか
すぐにフリーウェイ101号線に乗り、時速60マイル(およそ96km/h)前後の流れに沿って巡航していくと、車内は静かでとても快適だ。加速は滑らかで、大きなボディを意識させられることなく、混んだ流れの中を進んでいく。
エンジン自体が静かで滑らかなことと併せて、10段ATが状況に合わせて賢く変速していることの貢献が大きい。
走行モードを「コンフォート」と「スポーツ」に切り替えながら走り較べてみても、違いはそれほど大きくなく、どちらも過不足ない。
日本の高速道路の舗装よりも、アメリカのそれは荒れが目立ち、細かな凸凹が連続しているが、LS500はそれらに乱されることもなく、安定して走り抜けていく。アメリカのフリーウェイ、特に混雑した都市部では平均速度が以前と較べて上昇しているが、そんな中を走ってもLS500は信頼感が高かった。
しかし、その一方で、フリーウェイを降りた一般道での乗り心地の路面による差が大きく出ていたのは要改良点だった。滑らかな舗装では静かなのだが、荒れた舗装の路面に差し掛かると、ザーッというノイズが一気に盛大に侵入してくる。ハンドルを通してザラ付いた感触も伝わってくる。
郊外のワインディングロードをほぼすべてのモデルを乗り較べたが、路面の違いによる反応が大きく左右されるのが最も大きな不満点に変わりはなかった。
LS500hのハイブリッド ユニットも優れた加速フィーリングを持っていて、もはやハイブリッド特有のゴムをひねるような感触は皆無で、リニアに速度が上がっていく。
どちらもLSにマッチしているが、パワーを求めるならLS500、燃費と静粛性、滑らかな感触を求めるならばLS500hだ。
「Fスポーツ」は確かに乗り心地などが少し引き締まってスポーティは感触を生み出しているはいるものの、違いは小さい。もっと違いを出して商品性を明確にした方がわかりやすいのではないか。
新型LSの開発の力点は、さまざまな運転支援デバイスを盛り込んでいる点に置かれている。注目すべきは、日本車初となる「レーン チェンジ アシスト」や、速過ぎるコーナリングスピードを抑制する機能まで備えた「レーン レーシング アシスト」、歩行者や他のクルマを感知するとハンドルを切って衝突を回避しようとする「アクティブ操舵制御」などだろう。先進的で実効性の高いデバイスだ。
アメリカ仕様のために装備されていなかったり、試乗環境が異なっていたことによって、今回はそれらの効果を確認することができなかったので、先ごろ発表されたばかりの日本仕様で確かめてみたい。
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いま、価値が見直されるマッサージ機能
最後になってしまったが、新型LSで最も大きな可能性とアドバンテージを感じたのが、上級モデルに標準装備されるマッサージ機能付きシートだった。
画期的なのは、リアシートだけでなく、前後すべてのシートでマッサージを受けることができ、その上、運転席は運転中にもそれが可能なのである。
安全性に関わってくるものなので、開発陣は国土交通省とも連携を図りながら開発を進め実現したという。
次に画期的だったのは、“揉む”マッサージだけでなく、上下方向に筋肉を伸ばす“ストレッチ”機能も含まれていることだ。マッサージの動きはシート背面だけでなく、座面までにも及んでいるのも新しい。こんなに心地良く、身体が芯からほぐれるマッサージシートは今までなかった。
マッサージシートは、各自動車メーカーがそれぞれ用意している。もともとは日本車の専売特許のようなもので、欧米メーカーは昔は冷ややかに見ていた。「自動車の本質的な価値とは相容れない」というヨーロッパメーカーの開発担当者の否定的な評価も聞いたことがある。僕もそれに同意していた。
しかし、クルマに求められる価値が単なる移動に留まらなくなりつつある現在、マッサージシートの価値は重要度を増している。運転しながらマッサージを受けることができるのは画期的なことだし、運転の自動化が進むにつれて、ドライバーが移動時間中に車内で何をして過ごすのかは大きな課題となってくる。快適と健康を欲しない人はいない。
ともすると、“半笑い”で語られることの多かったマッサージシートは新型LSによって立派な、必要不可欠のラグジュアリー装備に昇化したと言える。
欧米の高級車の呪縛から完全に逃れることは難しいだろうが、彼らが見向きもしなかったことに光を当て、新しい価値を創り出していくことはレクサスの大きな使命ではないだろうか。新型LSに乗ったら、まず、マッサージを“ON”にしてみることを勧めたい。
Lexus LS500|レクサス LS500
ボディサイズ|全長 5,235 × 全幅 1,900 × 全高 1,450-1,470 mm
ホイールベース|3,125 mm
トレッド前/後|1,630-1,635/1,615-1,635 mm
最低地上高|(FR)144-165mm (4WD)137-151mm
重量|(FR)2,135-2,155kg (4WD)2,225-2,240kg
エンジン|3,444 cc V型6気筒 ツインターボ 直噴DOHC
最高出力| 310 kW(421 ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|600 Nm(61.2 kgm)/ 1,600-4,800 rpm
0-60mph加速(0-96km/h加速)|(FR)4.6秒
最高速度|220km/h
トランスミッション|10段AT
駆動方式|FR/4WD
サスペンション 前/後|マルチリンク / マルチリンク
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|245/50R19(F SPORTは245/45R20 / 275/40R20)
燃費(US複合)|(RWD)23mpg(およそ9.78km/ℓ) (AWD)21mpg(およそ8.93 km/ℓ)
トランク容量|440-480 リッター
Lexus LS500h|レクサス LS500h
ボディサイズ|全長 5,235 × 全幅 1,900 × 全高 1,450-1,470 mm
ホイールベース|3,125 mm
トレッド前/後|1,630-1,635/1,615-1,635 mm
最低地上高|(FR)147-169mm (4WD)147-160mm
重量|(FR)2,200-2,215kg (4WD)2,280-2,300kg
エンジン|3,456 cc V型6気筒 直噴DOHC
ボア × ストローク|94.0 × 83.0 mm
圧縮比|13.0
エンジン最高出力| 220 kW(299 ps)/ 6,600 rpm
システム統合出力| 264 kW(359 ps)
モーター|交流同期電動機
駆動用バッテリー|リチウムイオン電池
0-60mph加速(0-96km/h加速)|(FR)5.1秒 (4WD)5.2秒
最高速度|220km/h
トランスミッション|CVT(マルチステージハイブリッドトランスミッション)
駆動方式|FR/4WD
サスペンション 前/後|マルチリンク / マルチリンク
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|245/50RF19 / 245/45RF20
燃費(US複合)|(RWD)25mpg(およそ10.6km/ℓ) (AWD)23mpg(およそ9.78km/ℓ)