新型BMW5シリーズに試乗|BMW
BMW 5 Series|ビー・エム・ダブリュー 5シリーズ
新型BMW5シリーズに試乗
新時代のビジネスマンズエクスプレス
BMWの屋台骨ともいえるミドルクラスセダン「5シリーズ」が、7年ぶりとなるフルモデルチェンジを受けた。7世代目となる新型はいかなるモデルに仕上げられているのか。ポルトガルはリスボンで開催された国際試乗会より、小川フミオ氏がリポートする。
Text by OGAWA Fumio
先進的安全技術とコネクティビティが大幅に向上
BMW「5シリーズ」がモデルチェンジした。7世代目になる新型は2017年2月から欧州で発売開始。それを控えて国際試乗会が、2016年12月にポルトガルで開催された。スタイリングは従来型のエレガントでスポーティな雰囲気を引き継ぎつつ、電子デバイスの充実により先進的安全技術とコネクティビティが大幅に向上したのが特徴だ。
スポーティビジネスセダン。BMWが7代目の新型5シリーズを定義したコンセプトだ。全長は36m増加して4,935mmに。全幅は6mm増えて1,868mmに。全高は2mm増えて1,466mmに。ホイールベースは7mm 延長されて2,975mmになっている。
「技術の分野でのリーダーシップ、ぜいたくな雰囲気、そしてデジタル技術こそ成功のための重要なカギ」。BMW本社はプレスリリースでそう述べている。最初の2つについてはBMWではおなじみ。ドライブする楽しみと品質感の高い作りが5シリーズにファンを生んできたからだ。そして3番目のデジタル技術の充実こそ現代で成功するための要件になる。
試乗会のために選ばれたのはリスボン空港を起点にテージョ河河口を挟んだ地帯。海辺からちょっと入るとゴルフリゾートまであり、米国でいうとペブルビーチのような趣を感じた。真冬でも温暖であり太陽光線に満ちあふれている。ドイツ人がとりわけ好きな冬季バカンスの地というのもわかる。しかもドライブにも向いているのだ。山岳路もあれば高速道路もと5シリーズを試すにはいいロケーションが考えられていた。
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7シリーズを凌駕するインフォテイメントシステム
新型5シリーズ試乗会の舞台になったゴルフリゾートには、初代からはじまり主要な5シリーズがずらりと並べられていた。エレガントでいてスポーティという点でいまも大いに魅力的にみえる初代に1970年代当時から惹かれていた僕としては、ずっと5シリーズは特別なモデルだった。途中クリス・バングルがデザインディレクターを務めていた1990年代から2000年代にかけてエレガンスは失われたが、6代目からまた魅力が戻ってきた。
新型5シリーズは少しずつサイズが大きくなったのは冒頭に書いたとおり。じつはBMWのラインナップ中でも最も売れるモデルの1つが5シリーズといい、とりわけ企業のエグゼクティブなどに愛用者が多いようだ。後席も重要視されるモデルなのだ。
「スポーティな俊敏性、プレゼンス、快適性をすべて備えたクルマはほかにありません。新世代モデルの導入によって再び当社はあらゆる分野のベンチマークを確立しました。それはすなわち、運動性能と快適性を最善の形で融合させ、ドライバーズアシスタンスとネットワーク化を究極まで推し進めたということです。したがって、ニューBMW 5シリーズも、最も成功したビジネスセダンの地位を確保することでしょう」
新型5シリーズにかける意気込みを示すためBMW本社のクラウス・フレーリヒ開発担当役員の言葉として紹介されている。僕が参加した試乗会でもこのようにさかんに「ビジネスマン」のためのクルマであることが強調された。端的な例は数かずのコネクティビティ技術にある。
代表的なものはインフォテイメントシステムだ。10.25インチの高解像度画面(オプション)にはナビゲーション、電話、エンターテイメント、車両機能が表示される。iDriveコントローラーからだけでなく、先行する「7シリーズ」でも同様のシステムを導入しており、とりわけ指の動きを感知するジェスチャー入力が大いに話題になったものだ。例をあげると、かかってきた電話に出るときは、人差し指で画面を指すと通話が開始でき、手を横に払えば(スワイプすれば)通話を拒否する。
新型5シリーズはそれをひきつぎ、さらに機能を拡張。加えて音声入力では「日常の話し方で」(BMW広報資料)コマンド入力が可能となっている。また画面上に表示されるボタンを直接タッチすることでも各種機能を操作できるようになっている。ヘッド アップ ディスプレイでは、さまざまな情報を必要なときにウィンドシールドに投影することができる。しかも投影面のサイズは先代モデルに比べて約70パーセント大きい800×400ピクセルなのだ。
交通の混雑した市街地を頻繁に走らなければならない場合には、サラウンドビューおよびリモート3Dビューを利用することをBMWでは推奨している。自車を上から見たようなグラフィックスと周囲の状況が表示されることで障害物や他の道路利用者の突然の出現を早期に検知することができるというのだ。
スマートフォンとの連繋もビジネスセダンにとって重要な点という。まずドイツでサービスが開始される「BMWコネクテッド」の採用は好例だ。
デジタルアシスタントと紹介される。カレンダーの内容からアドレス情報を読み取って自動的に車両に転送。するとリアルタイム交通情報に基づいて最適な出発時間をスマートフォンを通じてユーザーに通知してくれるという。
車載ナビゲーションシステムに目的地の住所をマニュアル入力する必要もなくなる。目的地の住所や希望到着時間などのデータを車外から「BMWコネクテッド」経由で入力しておくことで、乗車後にiPhoneと接続するとこのデータが転送されナビゲーションシステムが立ち上がるというのだ。
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全長5メートルの4ドアセダンとは思えないような楽しさ
──540i sDrive Mスポーツ
ドイツ本国で用意されるラインナップは豊富だ。ガソリンモデルは2リッター4気筒「530i」、3リッター6気筒「540i」、4.4リッターV8気筒「M550i」。後輪駆動とフルタイム4輪駆動の「xDrive」が用意される(M550iはxDriveのみ)。
ディーゼルは2リッター4気筒「520d」、3リッター6気筒「530d」。どちらも後輪駆動とフルタイム4輪駆動の「xDrive」が選択可能。そして2リッター4気筒にプラグインハイブリッドシステムを組み合わせた「530e iPerformance」(後輪駆動のみ)も導入される。
国際試乗会に用意された新型5シリーズは2モデル。ガソリンエンジン車は直列6気筒エンジンの「540i sDrive Mスポーツ」だった。従来型より25kW(34ps)増のパワーと50Nm増しのトルクを特徴としている。
「Mスポーツ」はBMWを知っている人ならご存知のように、足回りの設定からホイールやブレーキやさらに内外装をスポーティに仕上げたモデルである。
従来より幅広感が強調されたキドニーグリルをはじめホイールや車体側面のエアブリーザーのアウトレットまで光沢あるブラックで塗装されているのも特徴だ。
大口径のエア インテーク付きフロント エプロン、サイドスカート トリム、ディフューザー形状のリア エプロン、長方形の片側2本出しテールパイプ付きエグゾーストシステムからなるMエアロダイナミック パッケージを装備。車高を低くするMスポーツ サスペンション、オプションの19インチMアロイ ホイールも特徴だ。内装ではアルカンターラMスポーツシートに加え、新意匠の革巻きMスポーツ ステアリング ホイール、専用フロアマット、インテリアトリム、アルミニウム製ペダルを備えている。
BMWに乗ったことがある人なら違和感なくすぐに操作できるコクピットにおさまると、まず細部までの美しい仕上げに目がいく。ダッシュボードの上面をレザーのような雰囲気の素材で覆ったりと7シリーズに通じる高級感が強い。オプションでシートの形状や表皮からダッシュボード各所の素材まで、いわゆるコスメティクスの選択の幅が多いのもプレミアムセダンの特徴なのだ。
1,380rpmから450Nmの最大トルクが出はじめる設定だけあって走り出しは軽快。そのまま加速を続けるとすぐにパワフルという印象に変わる。6気筒は伸びやかな回転マナーとともにかなりの力強さで車体を押し出していく。後輪駆動では静止から100km/hで加速するのに5.1秒というだけあって、BMWに期待する胸のすくようなフィールは存分に味わえると思った。
足まわりは先に触れたとおりMスポーツ仕様であるのと19インチリム径のタイヤを履いているため、高速では魔法の絨毯とはいかない。ややゴツゴツ感がある。加えてBMW車の例にもれず新型もステアリングホイールに路面からのバイブレーションが伝わってくる。スポーティなクルマゆえステアリングのダイレクト感を重視しているBMWならではの設定だ。やや大ぶりな「ビジネスセダン」であってもBMWが標榜する「駆けぬける歓び」が核にあることの証左なのだ。
Mスポーツのよさは屈曲路で発揮される。ひらりひらりというような身のこなしで小さなコーナーが連続する道を抜けていくときの楽しさは格別だ。加速と減速の繰り返しでも8段オートマチック変速機はドライブの状況を判断して最適な回転数を維持してくれるので、速いペースを維持できる。
試乗したモデルは「ラグジュリー ライン」だが、オプションのインテグレイテッド アクティブ ステアリングとスポーツ サスペンション(低車高化を含む)が組み合わせられていた。
電気機械式となったインテグレイテッド アクティブ ステアリングは後輪にも操舵機能が組み込まれているのが特徴だ。
はたして540i sDrive Mスポーツには全長5メートルになんなんとする4ドアセダンとは思えないような運転する楽しさがある。というわけでどちらを重視するかはユーザーの好みしだいなのだけれど、僕には少し硬すぎる乗り心地だった。
いっぽうでクルーズ コントロールやレーン キープ アシストの精度はますます上がっている印象が強い。ウィンカーを出すことで自動的に車両がレーンチェンジをしたり、横方向から接近するクルマを感知すると自動ブレーキが作動したりと先進的安全装備はさらなる充実ぶりなのだが、今回の試乗の範囲では恩恵を感じることは限られていた。スマートフォンによる操作も同様だ。日々の暮らしで使い勝手のよさを実感するのだろう。
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ガソリンエンジン車以上に好感が持てた
──BMW530d xDrive
ディーゼルも直列6気筒はエンジンメーカーとしてアイデンティティを持つBMWらしいコンセプトだ。メルセデス・ベンツも直列6気筒を新たに開発すると発表したり内燃機関の最後?の輝きといえばいいのか、バランスのよいこのパワープラントを楽しむチャンスがあったのは幸いだった。
BMW 530dにはxDrive(エックスドライブ)という総輪駆動システムが組み合わされていた。静止から100km/hまでの加速に要する時間は後輪駆動モデルで5.7秒であるのに対して、xDriveモデルは5.4秒。エンジンパワーを駆動力に変えるのにより有効なシステムであることがわかる。それにしてもディーゼルエンジン車でこの加速力というのは驚くばかりだ。
可変タービンジオメトリー式ターボチャージャー、最新世代のコモンレール式ダイレクト インジェクション システムを採用。最大噴射圧は2,500barと謳われる。
実際に素晴らしいエンジンである。ガソリンエンジンのようになめらかに回るのだ。540iと同様、インテグレイテッド アクティブ ステアリングとスポーツ サスペンションのオプションを装備しており、試乗車は走りの楽しさに重点が置かれていた。
2,000rpmから620Nmもの大トルクを発生しはじめる設定だけあって、そのパワフルさでガソリンエンジンと違う、と気づくぐらいだ。ワインディングロードではガソリンエンジンと同様、8段オートマチック変速機は最適な回転を維持してくれるのでじつにスムーズ。高速ではいい音楽を楽しみながらリラックスしたクルージングができる。僕にはガソリンエンジン車より以上に好感が持てた。
快適性も高いレベルだ。独特の騒音はほとんど遮断されている。駆動系騒音レベルを抑えるため、SYNTAK(シナジー サーモ アコースティック カプセル)テクノロジーを採用。エンジンとトランスミッションを軽量の防音素材でカプセル化しているのだ。
試乗車の「ラグジュリーライン」は、キドニーグリル バー、エア ブリーザー、ウィンドウ フレームにクロムパーツを装備してエレガントなキャラクターを強調したモデルだ。
内装では、コントラストシーム付き革製シートカバー、専用インレイ入りインテリア トリムが目を惹く。ダッシュボードがレザー仕様で7シリーズに迫る高級感をかもし出している。
新型5シリーズの発表は2017年の1月か2月といわれている。具体的なラインナップは未定というが、完成度の高さからいって、乗って後悔することはなさそうだ。
BMWカスタマー・インタラクション・センター
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