日本に上陸したBMWの最新フラッグシップ、7シリーズに試乗|BMW
BMW 7 series|ビー・エム・ダブリュー 7 シリーズ
日本に上陸した新型BMW 7 シリーズに試乗(1)
今年6月に6年ぶりとなるフルモデルチェンジを受け、日本でも10月29日に販売がスタートした、BMWのあらたなるフラッグシップモデル「新型7 シリーズ」。最新テクノロジー満載の同モデルに、モータージャーナリストの小川フミオ氏がさっそく試乗した。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
走らせて楽しいドライバーズカーというコアバリューは健在
2015年10月に日本で発売された「新型7シリーズ」。BMWのフラッグシップにふさわしく、全長5メートルを超える。より全長が長いリムジンとして使える「L」が今回も同時発売。といっても、その真価は大きさではない(もちろん大きさも大事だというユーザーはいるだろうけれど)。1977年登場の初代以来、走らせて楽しいドライバーズカーというコアバリューは、新型でもしっかり健在だ。
ドライバーズカーと呼びたい7シリーズ。その魅力の一端はエンジンにある。日本では、新開発の3リッター直列6気筒エンジン搭載の「740i」、4.4リッターV型8気筒の「750i」がまず登場。2016年には、2リッター4気筒に電気モーターを組み合わせたハイブリッド版(本国では「740e」と呼ばれる)がくわわる予定だ。
7シリーズの美点、もうひとつは、スタイリングである。このところ、7シリーズのジェネレーションでは、重厚な印象のモデルがつづいたが、一転して軽やかなイメージが強くなった。デザインディレクターが変わったせいだろうか。現在BMWデザインを統括するオランダ人、アドリアン・ファン・ホイドンクの指揮下、3シリーズともつながる、スリークでエレガントで、それでいてスポーティなスタイルが実現した。よろこばしいことだ。
走り出すと、新型7シリーズがいかにあたらしいか、体感的にわかるとBMWではする。たとえばシャシーの軽量化だ。同社が「カーボンコア」と名づけたシャシーは、炭素繊維強化プラスチック、アルミニウム、超高張力鋼板を組み合わせたものである。軽やかなフットワークと、低重心化による操縦性、そして燃費向上と、いくつものメリットがあげられている。
エアサスペンションと、それに組み合わされた「エグゼグティブプロ」も、注目すべき技術だ。ふたつのステレオカメラを使い、路面の凹凸状況を読み取る。そのデータをもとに、瞬時にエアサスペンションの動きを制御するのである。
実際に乗ると、スポーティな印象は裏切られない。
BMW 7 series|ビー・エム・ダブリュー 7 シリーズ
日本に上陸した新型BMW 7 シリーズに試乗(2)
期待を裏切らないエンジン
試乗したのは、740i「Mスポーツ」。シフトが素早いスポーツタイプの変速機をはじめ、エアロパーツや専用の内装と、M社による専用装備を装着したスポーティなグレードだ。7シリーズでも、このMスポーツを選ぶひとが(日本でも)3割ほどいるそうだ。ハイヤーでもおなじみの7シリーズだが、とりわけ直列6気筒モデルは、後席よりも運転席のほうが、よりよい場所だとわかっているのだろう。
容積500ccのシリンダーを組み合わせて、1.5リッター3気筒、2リッター4気筒と作っているのが、BMWの新世代モジュラーエンジン。3リッターの6気筒版は、ひと足先に「340i」に搭載されて日本市場に導入されているが、実際に試すのは、今回がはじめてだった。はたして、いいエンジンだ。期待を裏切らない。低回転域からしっかりトルクを出して、かつ上まで気持ちよくシュンッと回る。450Nmものトルクを1380rpmから発生しはじめる。このエンジンは車重1.9トンの車体ですら、軽快と感じさせるほどだ。
ハンドリングも、エンジンの印象とともに、スポーティに仕上がっている。やや軽すぎる印象もあるステアリングホイールの動きに対して車体は敏感だ。気持ちよく、狙ったとおりのラインをとれる。たとえばメルセデスベンツSクラスもとてもよくできているが、きびきび感を強調しているのが7シリーズの特徴として際立つ。
3リッターエンジンなんて、ひと昔前なら、クラス下のミディアムセダン用だった。しかし1リッター未満が大衆車のスタンダードになりつつあるいま、エンジン技術の進みかたは早い。740iにとって、3リッター6気筒は、力は十分、フィールは上質だ。8段のオートマチック変速機もみごとなマッチングを見せている。燃費を重視する「エコ」モードでは上のギアを使い、リッター12.2キロ(JC08モード)をマークする。いっぽう「スポーツ」モードでは、トルク重視に。アクセルペダルを軽く踏んだだけで、かなり力強い加速を味わわせてくれるのだ。
新型7シリーズのキャラクターを際立たせているものとして、もうひとつ、「アダプティブ」モードがある。
BMW 7 series|ビー・エム・ダブリュー 7 シリーズ
日本に上陸した新型BMW 7 シリーズに試乗(3)
740iには新型7シリーズの利点が詰まっている
新型7シリーズには、「ドライビングパフォーマンスコントロール」が備わる。セレクターによって任意にステアリング、サスペンション、エンジン出力特性を選択できるシステムだ。そこに今回、「アダプティブ」モードがくわわった。高速カーブと街角のコーナーでは、同じ“曲がる”でも車両の挙動は変わってくる。
いかなるコーナリングがおこなわれているのか、車載コンピューターが判断するのだ。瞬時にエアサスペンションの硬さを調整して、安定して、場合によっては快適に、乗り心地とハンドリングを調整するシステムである。ふだんは、しっとりしなやかな乗り心地で、飛ばせばサスペンションは適度に硬くなる。これにも感心した。
高速道路では、多少のウィンドノイズがあるものの、路面からやエンジンルームからの音はほぼ完璧にシャットダウンされていて、静か。ゆったりとした気分で乗っていられる。ストレートシックスのサウンドまであまり聞こえてこないが、7シリーズに期待されるものは、どちらかというと静粛性だろう。これはガマンしなくてはならない。
安全装備や快適装備も、最上級セダンにふさわしく、いたれり尽くせりだ。ハンドル操作を自動でおこなう「ステアリング&レーンコントロールアシスト」、LEDの2倍の距離に届く「レザーライト」ヘッドランプ、夜間の歩行者や動物を赤外線で感知する「ナイトビジョン」、隣りの車線のクルマが急に自車の車線に進路変更をするなどした際の衝突を避けるために自動でハンドル操作をする「アクティブ・サイドコリジョン・プロテクション」、といった具合。車両によって一部はオプションだが、自動操縦によって安全性と燃料消費の向上を目指している。
専用アプリによって、スマートフォンで自車の位置を確認したりエアコンを操作できる「リモートサービス」をはじめとする「コネクテッドドライブ」。さらに、リアシートの乗員のために用意されたタブレットでエンターテインメントやナビゲーションなどの操作ができる「タッチコマンド」。日常使うなかで利便性を感じると思われる装備も多い。
740iのサイズは全長5150mm、全幅1900mm、全高1480mmだ。ホイールベースは3070mm。十分余裕ある大きさだが、740Liになると、ホイールベースが3210mmに伸びるいっぽう、全長5250mm、全高1485mm(全幅は同一)とさらに大きくなる。操縦した感覚としては80キロ増加という数値以上に、大きさを感じさせる。
「駆けぬける喜び」というBMWのスローガンが好きなら、スタンダードホイールベースをお薦めする。330kW(450ps)と650Nmの4.4リッターV型8気筒搭載の750iにはまだ乗っていないが、740iにはあたらしい7シリーズのいいところが詰まっていると思う。ストレートシックスのために買っても後悔しないはずだ。
BMW 740i M Sport|ビー・エム・ダブリュー 740i M Sport
ボディサイズ|全長 5,110 × 全幅 1,900 × 全高1,480 mm
ホイールベース|3,070 mm
トレッド 前/後|1,620 / 1,620 mm
重量|1,900 kg
最低地上高|135 mm
エンジン|2,979 cc 直列6気筒 直噴DOHC ターボ
最高出力| 240 kW(326 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|450 Nm(45.9kgm)/ 1,380-5,000 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|245/45R19 / 275/40R19
燃費(JC08モード)|12.2 km/ℓ
トランク容量|515 リットル
価格|1,288万円
BMW 740Li|ビー・エム・ダブリュー 740Li
ボディサイズ|全長 5,250× 全幅 1,900 × 全高1,485 mm
ホイールベース|3,210 mm
トレッド 前/後|1,610 / 1,640 mm
重量|1,980 kg
最低地上高|135 mm
エンジン|2,979 cc 直列6気筒 直噴DOHC ターボ
最高出力| 240 kW(326 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|450 Nm(45.9kgm)/ 1,380-5,000 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|245/50R18
燃費(JC08モード)|12.2 km/ℓ
トランク容量|515 リットル
価格|1,346万円
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