リトラクタブルハードトップの「ロードスター RF」に試乗|Mazda
Mazda Roadster RF|マツダ ロードスター RF
リトラクタブルハードトップの「ロードスター RF」に試乗
年齢とわず幸福な気分にしてくれるモデル
マツダが世界に誇るオープン2シータースポーツカー、「ロードスター」をベースとするリトラクタブルハードトップモデル「ロードスター RF」。12月22日に発売を控えた同車に試乗した。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki / OGAWA Fumio
クーペのような端麗さと、フルオープンの爽快感を融合
マツダ「ロードスター」にハードトップモデルが追加された。「ロードスターRF」と名づけられ、電動格納式のハードトップを持つ。クローズドの状態ではクーペのように端麗で、ルーフを開いてのドライブはフルオープンに負けない爽快感を持つ。2016年12月22日の発売を前に試乗したところ、元気いっぱいの楽しさと大人っぽさを併せ持ったクルマだった。
「オープンカーに憧れはあっても、自分が乗るクルマは屋根があるものを選ぶという方は少なくありません。そうしたお客様にも、屋根を開けた先に広がる驚きや感動をお伝えしたいという想い」から今回のモデルを開発したとロードスター アンバサダーの肩書きを持つマツダ株式会社の山本修弘(のぶひろ)氏の言葉が試乗会では紹介された。
従来のロードスターにも電動ハードトップモデルの設定はあった。しかしどちらかというとキャンバストップの素材を樹脂と金属に変えただけのシンプルなスタイルだった。それに対してロードスターRFはいわゆるタルガトップであり、長所はファストバッククーペのようにスタイリッシュな点と謳われている。初公開は2016年3月のニューヨークオートショー。そのときから話題になっていたスタイルだ。
もうひとつロードスターRFの大きな特徴はエンジンが2リッターであることだ。日本仕様のロードスターは1.5リッターであるのに対して今回の決定は「より余裕ある走りで幅広い年齢層にアピールしたかったため」(広報担当者)と説明されている。1,997ccのミラーサイクルエンジンで筒内直接噴射式だ。可変バルブタイミング機構を備え116kW(158ps)の最高出力と200Nmの最大トルクを持つ。トランスミッションは6段マニュアルと6段オートマチックが用意され後輪駆動となっている。
10km/hまでなら13秒というごく短い時間で開閉するハードトップを備えたロードスターRF。側面から見た印象はデザイナーの意図どおりかなりスタイリッシュで上質感が高い。大人っぽい印象がぐっと増しているのも事実だ。走りでも特筆すべきことがある。
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年齢とわず幸福な気分にしてくれるモデル (2)
「人馬一体の走り」が体感できるMTモデル
マツダ ロードスターRFはソフトトップモデルとホイールベースは共通で、車体も全長と全幅は同一。車高のみ5mm高くなっているそうだが、つまりほぼ同じということだ。外観的な印象としては前後フェンダーの盛り上がりが強調されているようで、走りを積極的に楽しませる後輪駆動車であることが伝わってくる。
乗った印象はかなりいい感じだ。2リッターだけあって走り出しから力がたっぷりあると感じられる。最高出力は6,000rpmで最大トルクは4,600rpmで得られる設定というだけあって、回して楽しむエンジンだ。とくにマニュアル変速機モデルではマツダの開発者がことあるごとに強調する「人馬一体の走り」が体感できる。
ハードトップ化のため重量バランスやボディ剛性の見直しが行われており、加えてサスペンションの設定も専用だそうだ。ダンパーと電動パワーステアリングの設定にも専用チューニングを採用している。ソフトトップに対して20kgという重量増(それでも1,100kgと軽量だが)に対応してダンパーのガス圧を調整。さらにフロントのスタビライザーやリアのスプリングとバンプストッパーなども見なおされている。
試乗は東京都内だったのでコーナリングでのキャラクターは垣間見るというだけだったが、握りの感触がいい小径ステアリングホイールを操作してカーブを曲がる感じは心躍るものがあった。大人っぽさを重視したというだけあって、やたらクイックではないが応答性にすぐれかつ正確。日常的にドライブを楽しめるクルマに仕上がっている。マツダによるとゆっくり切ったときのアシスト量を多めにして応答性を高めたそうだ。
静粛性もかなり見なおしたとマツダでは説明するが、いっぽうでエンジン排気音は積極的に聴かせる設定だ。モデルによってはエンハンサーも搭載しているぐらいで、乾いた中音域の響きは心を高ぶらせる役割を果たしている。それと相性がいいのはやはりマニュアル変速機だ。フライホイールは軽めなのでアイドリングでクラッチミートをさせるとエンストしそうになるが、ほんの少しエンジン回転を上げるだけでスムーズな発進ができる。扱いにくさは皆無。それでいて先にも触れたように、エンジンを積極的に上まで回して加速していく楽しさはかなりのものだ。
オートマチック変速機モデル「VS」はマニュアル車とはややキャラクターが違う印象を受けた。乗り心地が少しソフトになって、エンジン回転というよりトルクで走らせる感じだ。先にシャープなマニュアル車に乗ってしまったのでとくにそう感じたのかもしれない。もちろんこのクルマが退屈というわけではない。トルコン式のギアボックスは賢く、有効なトルクバンドをしっかり使ってくれ走りは力強い。トランク容量はソフトトップモデルと「ほぼ同等」(広報資料)の127リッターで、機内持ち込みサイズのキャリーオンラゲッジを2つ収納できるという。室内に荷物用のスペースはないけれどスポーツカーなので割り切るべきだ。
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年齢とわず幸福な気分にしてくれるモデル (3)
デトマゾ・バレルンガやランチア・モンテカルロを彷彿させるスタイリング
「軽量・コンパクトであること」「ホイールベースを変えないこと」「荷室を犠牲にしないこと」。ロードスターRFの開発にあたってはこの3要件を守ったとマツダでは説明する。そのいっぽうで新しいボディスタイルを実現したのだから、「チーム一丸となっての情熱と挑戦心がなければ、このプラン、このデザインは絵に描いた餅で終わっていたかもしれません」と、開発主査の中山雅氏の言葉に納得できる気がする。中山氏はチーフデザイナーも兼任するだけあって、スタイリングへのこだわりも強い。
僕が感心するのは1960年代から70年代にかけてのデトマゾ・バレルンガやランチア・モンテカルロを彷彿させるリアクオーターピラーによる美しいスタイリングだ。さらにそれでいて、乗ったときは低くて短いウィンドシールドによる、英国のライトウェイトスポーツのような古典的な爽快感を維持している点にも感心した。
マツダのスタイリングの特徴は(しろうと目にだけれど)無駄のないラインで構成されていて細部にいたるまでオモチャっぽい要素がいっさい見当たらないところだ。ウケるからといった子どもっぽいディテールがないのはすがすがしい。運転席からボンネットをみるとシャープなエッジと張りのある面とで出来たボンネットはまるで工芸品のようだ。オーナーのプライドになるはずである。
機能はスタイリングの犠牲になっていない。オープンでも風の巻き込みはほとんど気にならず風切り音も意外なほど低く抑えられている。少し厚着をすれば真冬のドライブは気持ちよさそうだ。もちろんシートヒーターを備える。このクルマ自体がよく出来たアウトフィット(洋服)のようなものといえるかもしれない。価格はSのMTの324万円からRS(MTのみ)の373万6,800円まで。年齢とわず幸福な気分にしてくれるモデルだ。
Mazda Roadster RF|マツダ ロードスター RF
ボディサイズ|3,915 × 1,735 × 1,245mm
ホイールベース|2,310 mm
トレッド前/後|1,495 / 1,505 mm
最低地上高|145 mm
エンジン|1,997cc 直列4気筒DOHC
ボア×ストローク|83.5 × 91.2 mm
圧縮比|13.0
最高出力|116 kW(158 ps)/6,000 rpm
最大トルク|200 Nm(20.4 kgm)/4,600 rpm
トランスミッション|6段MT / 6段AT
サスペンション前|ダブルウィッシュボーン
サスペンション後|マルチリンク
ブレーキ前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ後|ディスク
最小回転半径|4.7 メートル
JC08モード燃費|15.6 km/ℓ
定員|2人
価格|324万円-373万6,800円
マツダコールセンター
0120-386-919