BMW アクティブ ハイブリッド 3に試乗|BMW
BMW ActiveHybrid 3|ビー・エム・ダブリュー アクティブ ハイブリッド 3
ハイブリッドの旨味は燃費だけではない
BMW アクティブ ハイブリッド 3に試乗
日本に導入される3シリーズとしては、唯一、直列6気筒エンジンを搭載し、これに電気モーターを1基を組み合わせる、ハイブリッドカー「BMWアクティブ ハイブリッド 3」。日本でもすでに受注を開始している、この3シリーズ初のハイブリッドモデルに島下泰久氏が試乗した。電気モーターやバッテリーなどを積むことで、車重は1,740kgに達するものの、0-100km/h加速は5.3秒と速く、さらに燃費は2リッターエンジン車なみと謳われる。アクティブ ハイブリッドの真価やいかに。BMWのお膝元、ミュンヘンからレポートをお届けする。
Text by SHIMASHITA Yasuhisa
BMWからの解答
この1月に発表された「新型BMW3シリーズ」は、2012年の後半に向けてラインナップを意欲的に拡大していく予定だ。なかでも最大の目玉と言えば、3シリーズ初の、そしてプレミアムブランドのミッドサイズセダンでも初のハイブリッド車となる、「アクティブハイブリッド 3」だろう。日本では7月25日に正式に発表されたこの話題の1台に、ひと足早く試乗した。舞台はBMWのお膝元、ミュンヘン近郊である。
ジャーマン・プレミアムブランドのなかではハイブリッドに積極的なBMW。すでに7シリーズ、X6、5シリーズに「アクティブハイブリッド」を設定しているが、技術的にはまだ模索段階だったのだろう。じつは3つすべてにことなるエンジンとハイブリッドシステムを使っていた。しかしながらアクティブハイブリッド3は、基本的にアクティブハイブリッド5で使われたコンポーネンツを、ほぼ踏襲している。
ちなみに先頃、本国で改良版が発表された7シリーズも、それを機におなじものを使うよう改められた。つまりBMWのハイブリッドの軸、ここに来て定まったと見ていいだろう。
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ハイブリッドの旨味は燃費だけではない
BMW アクティブ ハイブリッド 3に試乗(2)
燃費は2リッターエンジン車なみ
そのハイブリッドパワートレインは、簡潔に言えば直列6気筒3リッター直噴ターボエンジンと8段ATのあいだに電気モーターを1基挟み込んだものである。エンジンと電気モーターのあいだにはクラッチがあり(クラッチを別に追加しているわけではなく、AT内蔵のクラッチを使っている)、両者を切り離すことができる。つまりエンジンは停止したまま、電気モーターだけで走行することが可能だ。
エンジンの最高出力は306ps、最大トルクは400Nm(約40.8kgm)。電気モーターは最高出力55ps、最大トルク210Nm(約21.4kgm)で、両者を合わせたシステム最高出力は340ps、最大トルクは450Nm(約45.9kgm)に達する。電気モーターにバッテリーなどを積むことで、車重は1740kgに達するものの、0-100km/h加速は5.3秒と速く、それでいて燃費はEU複合モードで5.9ℓ/100km(約16.9km/ℓ)、CO2排出量は139g/kmと優秀。日本仕様のJC08モード燃費は現在、申請中とのことだが“2リッターエンジン車なみ”と謳われていることから、15~16km/ℓは堅いのではないだろうか。
アクティブハイブリッド5との最大の違いが荷室の余裕だ。5シリーズとちがって、新型3シリーズは開発段階からハイブリッド化が前提とされていたことから、リチウムイオンバッテリーによる荷室の侵食は最小限に抑えられている。バッテリーを床下に収めることで(それでもフロアは嵩上げされてはいるものの)、容量は390リッターを確保。3シリーズの他のグレードよりは90リッター少ないとはいえ、アクティブハイブリッド5のそれが容量375リッターに留まることをおもえば、随分改善されている。しかも40:20:40の分割可倒式後席シートバックによるトランクスルーも可能と、使い勝手をほとんど犠牲にしていないのである。
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ハイブリッドの旨味は燃費だけではない
BMW アクティブ ハイブリッド 3に試乗(3)
惰性走行を活用
車重に220kgもの差があるアクティブハイブリッド5とおなじシステム、そしてバッテリーを使うだけに、出力の余裕は十分と見えて、発進してもしばらくはエンジンがかかることなく電気モーターだけで引っ張ってくれる。状況が許せば75km/hまで、距離にして3~4kmまでそのまま走れると謳われているが、なるほど特に意識しなくても50km/h前後まではエンジンがかかることはない。平たく言えば、プリウスなどとくらべてモーター走行距離が長いのだ。
いっぽう、アクセルを深く踏み込むと、1,200rpmという低い回転数で400Nm(約40.8kgm)の最大トルクを発生するエンジンに、電気モーターが加勢するブーストモードとなり、シートバックに背中を押し付けるような強力な加速がはじまる。“アクティブ”ハイブリッドの名は伊達じゃないと感心させる痛快さは、おもわず病みつきになりそう。ハイブリッドの旨味は燃費だけではない。
通常走行時でも80km/hまでならアクセルオフと同時にエンジンが停止して、エネルギー回生に入るということだが、今回の試乗では暑い気温など走行条件が合わなかったのか、なかなかエンジンが停まってくれなかった。しかしながらドライビング・パフォーマンス・コントロールを「ECO-PRO」にセットすれば、エンジン停止のしきい値が下がり、そしてじつに160km/hまでの速度域でエンジン停止によるコースティング、つまり惰性走行を活用できる。エンジン動力を使わず滑空するかのように転がることで、特に起伏の少ない平坦な高速道路などで、大幅な燃費向上が可能になるのだ。
高速道路と一般道が適度に混ざったテストルートを走らせて車載燃費計をチェックすると、まず燃費を配慮した走らせかたでは7.4ℓ/100km(約13.5km/ℓ)を記録。そして、そのまま230km/h近くまでのフル加速や、200km/h超での巡航など、色々な走りかたを試した後には8.6ℓ/100km(約11.6km/ℓ)という数字が表示されていた。
特に我々日本人のハイブリッド車にたいする期待値からすると、あるいは少々物足りなく感じるかもしれないが、最高出力340psを誇り、アウトバーンでは250km/hの領域を容易に垣間見ることができる動力性能から考えれば、その燃費は十分に優れたものだといっていいのではないだろうか。
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ハイブリッドの旨味は燃費だけではない
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最上級グレードとしての存在意義
ただし、良いことばかりではない。328iよりじつに180kgも増えた車重の影響で、大きなうねりを通過した際にはドスンッと、強めのショックが響くなど、乗り味はやはり軽快感が削がれている感が否めないのだ。軽快感こそが3シリーズの真価だと感じている人にとっては、気になるところだろう。
しかしながら、トータルでの完成度は上々といっていい。じつは新型3シリーズには従来あった335iの日本導入予定はなく、このアクティブハイブリッド3が日本での最上級グレードとなるのだが、これならその役割を十二分に果たせるはずだ。
価格は699万円。先代の335iにたいして、たった13万円高という設定は、相当に意欲的だ。Sport/Modern/Luxuryの3つのトリムを選ぶこともでき、さらには3シリーズの他のグレードに先駆けて、人気のM Sportが用意されたのもトピックと言える。
販売は今年10月から。このセグメント初のハイブリッドモデルが市場でどれだけ受け入れられるのか、とりわけスポーティさにこだわる3シリーズのファンがどんな反応をしめすのかは、じつに興味深いところだ。
BMW ActiveHybrid 3|
ビー・エム・ダブリュー アクティブ ハイブリッド 3
ボディ(右ハンドル)|全長4,624 × 全幅1,800 × 全高1,429 mm
ボディ(左ハンドル)|全長4,624 × 全幅1,810 × 全高1,429 mm
ホイールベース|2,810 mm
トレッド 前/後|1,531 / 1,572 mm
最低地上高|140 mm
車両重量(DIN値)|1,655 kg
トランク容量|390リットル
エンジン|直列6気筒DOHC 24バルブ ターボチャージャー付き
排気量|2,993 cc
最高出力| 306ps(225kW)/ 5,800-6,000 rpm
最大トルク|40.8kgm(400Nm) / 1,200-5,000 rpm
モーター出力|54ps(40kw)
モータートルク|21.4kgm(210Nm)
システム最高出力|340ps(250kw)
システム最大トルク|45.9kgm(450Nm)
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|後輪駆動
0-100km/h加速|5.3秒