東京モーターショー2015 対談 前篇|Tokyo Motor Show 2015
Tokyo Motor Show 2015|東京モーターショー 2015
ジャーナリスト2人が総括
東京モーターショー2015 対談 前篇
10月28日から11月8日まで開催された第44回東京モーターショー。ちかい将来を期待させるモデルから市販車まで、数多くのワールドプレミア、ジャパンプレミアが登場し盛り上がったいっぽう、近年のモーターショーで定着しつつあるエコを意識したEVやPHEVにくわえ、自動運転のクルマにも注目が集まった。そんな熱気ある会場を見てまわった、小川フミオ氏と島下泰久氏、2名のジャーナリストによる総括を前後篇にわけてお伝えする。
Talk by OGAWA Fumio & SHIMASHITA YasuhisaText by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
2015年、東京モーターショーの価値
小川 私たちは、デトロイトとかジュネーブとかフランクフルトとか、海外での自動車ショーに出かける機会があります。その中で、東京モーターショー、おもしろかったですか?
島下 当初の期待値より、おもしろかったです。ここ数回は、なんというか、沈んだイメージがありましたけれど。今回はちがっていました。国産車も輸入車も、けっこう見るべきモデルがありましたね。熱気もあって、いいショーだったと思います。
小川 はじまる前は、日本プレミアムがどれだけあるかとか、そういう目で事前に評価していまいがちですよね。でも今回のショーを見ていて、じつはそこは本質的な価値ではないのではないかと思うようになりました。
島下 いままでは、2050年ぐらいのモデル?みたいな荒唐無稽なコンセプトカーとか多かったけれど、今回、トヨタとレクサスとマツダは、近未来のいい予感を抱かせてくれるコンセプトを見せてくました。
小川 具体的な車名を教えていただけますか。
島下 トヨタ「S-FR」。レクサス「LF-FC」。マツダ「RXビジョン」。その3モデルは、海外メディアに東京に来た価値を感じさせる内容があったと思います。
小川 一般の人にはホンダ「NSX」だって価値ですよね。
島下 マツダRXビジョンは夢を見させてくれるクルマでした。
小川 あれは現実的なんですか?
島下 あれだけ見せて、やりませんっていうのはもう言えないでしょうから。すごい覚悟のあるコンセプトカーだと思うんですよね。
小川 スカイアクティブRという技術だそうですね。
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島下 単なるロータリーで、環境性能を満たせるかなと思いますが、電気モーターと組み合わせるのは、マツダっぽくないかなあ。いずれにしても、マツダの技術者がやりたいとずっと思っていたものの発露ですよね。
小川 あのスタイリングはかっこいいですが、現実的なんですかね。
島下 非現実的と思える要素のほうがむしろ少ないのでは。あのノーズの低さもロータリーエンジンならできそうだし。全長4,400mmしかないんですよね。
小川 大きく見えるのにね。
島下 いままでマツダってショーに出品したコンセプトモデルを量産につなげることが多かったですよね。その意味でも期待しています。
小川 ロータリーエンジンについてマツダは情熱をもちつづけているんですかね。それともファンを対象にしたある種のマーケティングでしょうか。
島下 そもそもロータリーエンジンに憧れてマツダに入った人はいっぱいいるんで。ロードスターを開発した山本修弘商品本部主査だって、ロータリーエンジンのスポ-ツカーやりたいからマツダに入ったって言ってますよね。耐久レースで活躍したロータリーエンジン搭載の「787B」とか。山本さん、スポーツカーばっかりやってきたんですよね。すっごい幸せな人ですけれど。
小川 2015年マツダは、英国のグッドウッド フェスティバル オブ スピードで、往年のルマンカーを走らせたりしたし、今年をひとつの区切りにしたいというのがあるんでしょうね。
島下 2017年にロータリーエンジンは、初代「コスモスポーツ」発売50周年を迎えます。その頃にRXビジョンは姿を現すかもしれません。
小川 東京モーターショーに行った一般のひとは、スポーツカーいっぱいあるなあと感心したかもしれないですね。おもしろく思えたはずですよね。
島下 僕にはもうひとつ、レクサスのコンセプトモデルがおもしろかったです。
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プレゼンテーションの強化でもっと面白く
小川 レクサスのブースで注目されていたのは、新型「RX」や大型の「LX」かもしれませんが、燃料電池の大型セダンのコンセプト、LF-FCが初公開されたのも話題です。
島下 単純にかっこよかった。レクサスのデザインはどんどん進化していると思うんです。変化というか。記者会見でレクサス・インターナショナルの福市得雄プレジデント言っていましたけれど、あれが次のチャプターなんだと期待させられるデザインだったのと、テクノロジーは荒唐無稽のものではなく、ここ10年はこの方向という説得力がありますよね。FCVはもうできているんだし。インホイールモーターだって技術的に不可能なことじゃないですね。あとはミラーが映像になっているのも、どこのメーカーも一所懸命やっていることで。レクサスの考えている高級車について、デザインとか、環境への考え方とか、生々しく見せてくれたんじゃないかなと思いますね。
小川 プレゼンテーションが少し弱いかな。つい、我われはないものねだりをしてしまいがちなんで、メーカーも困るかもしれませんが、メルセデスが「F015 ラグジュアリー イン モーション」で2030年の「Sクラス」のような高級セダン像を提示したように、レクサスにも負けずに、もう少し先のセダンに対する考え方を示してもらいたいと感じてしまいました。
島下 そうですね。日本のメーカーはそれが足りないですよね。
小川 フランクフルトを例にとれば、ドイツメーカーのコミュニケーション ランゲージは発達していると思うんですよね。どこへ向かっていこうとしているか、来場者に丁寧に説明しています。
島下 マツダはわかりやすいですよね。一貫してスカイアクティブとか魂動(こどう)デザインとかやってきたことの延長線上にありますから。ロータリーエンジンじたいにも歴史があるから。(ほかのブランドも)それをちゃんと示さないと。ラグジュリーの文脈をレクサスが示してくれれば、よりよかったかもしれないですね。欲をいえば、LF-FCが従来の「LS」の系譜に連なるものだとすれば、過去にLSが何を残してきたか、全部見せるべきだと思いますね。
小川 日本は、歴史の否定をしがちですね。たとえば、前任者のデザインを語らないですものね。
島下 望むらくは(レクサスのデザイン哲学である)“Lフィネス”というデザインの変遷を語ったり、歴代のLSを展示して、どこがエポックメーキングだったか語ったりとか。そういう展示があってもよかったかもしれないですね。レクサスは一貫してこういうラグジュアリーを提案してきた。それを踏まえて未来のラグジュアリーはこうですよっていうのがあっても。