東京モーターショーに集結した、キーパーソンにインタビュー|DS
DS|ディーエス
DSオートモビル CEO イヴ・ボネフォン氏
DSが標榜するのは“ルールを壊す”こと
独立したブランドとしてはじめて東京モーターショーに登場したDS。ジャパンプレミアとなった「DS 4 クロスバック」を引っさげて来日したDSオートモビル CEOのイヴ・ボネフォン氏に、ブランドのこれからについて聞いた。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
ほかにはないデザイン性がDSのコアバリュー
東京モーターショーではじめて日本に姿をあらわしたDS。フランスはプジョー・シトロエン傘下のブランドであり、グループにとっては、この2つにつづく3番目のブランドになる。
東京モーターショーのDSのブースは美しかった。建築物のモチーフが描かれたパネルは、パリのフォーブルサントノレをイメージしたもの。2015年のテーマである。各地の自動車ショーで、規模の大小はあったものの、同様のシックな展示が観られた。
エッフェル塔を見上げた画像を使った大きなパネルも、もうひとつ、強く印象に残ったものだ。ファッションやグルメの話題は多くても、パリの建築物はあまり日本で語られることはない(本当は見どころ満載なのだが)。美と技術がDSのテーマなのだろうか。いかにもふさわしい気がする。
パリの中心地にあるグランパレで1955年に開催されたフランスの自動車ショー。そこで発表されたのが、エポックメーキングなクルマ、シトロエン「DS」だ。いまだに世界中の自動車デザイナーの多くがもっとも好きなスタイルというオリジナルDS。新ブランドは、その名と関連づけた発想がユニークだ。いったいどんなブランドに成長するだろうか。DSオートモビルのCEOを務めるイヴ・ボネフォン氏に聞いた。
――DSは、これまでシトロエンのラインのなかでもとりわけ個性が際立っていた、「DS3」「DS3カブリオ」「DS4」「DS5」というモデルを独立させたともいえます。独特の個性が際立つスタイルですが、シトロエンとの差別化など今後の戦略を教えてください。
ほかにはないデザイン性は重要なコアバリューになります。何にも似ていないあたらしさに魅力を感じる顧客に評価されていると思います。私たちの標榜することは“ルールを壊す”。表現が穏当ではないかもしれませんが(笑)凝り固まった価値観を壊し、市場にあたらしい価値を提供していきたいと考えています。
――たとえばどうやって“ルールを壊す”のでしょうか。
DSのことを定義して、英語ですがジョイフルブランドとしています。オーナーの日常によろこびをもたらしてくれるブランドでありたいというのが願いです。DS3でもDS3カブリオでもDS4でもDS5でもご覧になっていただければ、私たちがこれらのクルマをスパークリングカー(ズ)と呼ぶのがおわかりになるのではないでしょうか。弾けるような楽しさを感じられるはずです。
――DSがシトロエンの車種だった時と、ブランドとして独立したいまとで、DS3をはじめとする各モデルになにか大きな変更をくわえましたか。
スパークリングカーですから、ビビッドなボディカラー、というか、ハッとするような美しい塗り分けを採用して個性を出したのも、DSブランドになってからです。もちろん、1.2リッターエンジンと、新開発の6段オートマチックをDS3にあらたに搭載したのもニュースになると思います。エンジンのトルクをより効率的に引き出すことができるようになったのと、燃費が向上したのも、注目していただきたい点です。
イヴ・ボネフォン氏は、「こんな人にDSに乗ってもらいたい」と語る。
DS|ディーエス
DSオートモビル CEO イヴ・ボネフォン氏
DSが標榜するのは“ルールを壊す”こと
クルマにおけるアバンギャルド性とは
DSオートモビルのCEOを務めるイヴ・ボネフォン氏は、2015年の東京モーターショー開催に合わせて来日。14年に誕生したあたらしいブランド、DSの魅力を熱く語った。
――DSは、“こんなひとに似合う”といったような、ターゲットカスタマーを想定していますか。
ヤングプロフェッショナルと私たちが呼んでいる方々が、DSの価値を認めてくださるのではないかと思っています。比較的年収が高く、職業的には建築家、経理業務関連、法律関係、自営業やフリーランス……欧州ではこういう職業に就いているひとたちが、“ルールを破る”DSを好いてくれています。ものを選ぶ時に、他者と横並びになるのを嫌うひとたちは、DSに乗ることに積極的だと思います。
――いまのDSのラインナップに興味を示すひとたちは、1955年発表のシトロエンDSにまでさかのぼるブランドのヘリティッジに意識的なのでしょうか。あのDSだから、いまも敢えて乗る、といった気持ちをもっていると思いますか。
顧客はDSというブランドのクルマのオーナーであることに誇りを感じてくれているのは確かではないでしょうか。アイコニックな存在であるオリジナルDSが発表されてから、今日にいたるまでに神格化されたDSの存在を、どこかで意識しているのではととらえています。なにしろ、あれだけオリジナリティの高いスタイルとメカニズムをもったクルマですし。1955年10月6日に、パリのグランパレで発表され、その日だけで1万2000台の注文が入ったそうです。フランス人をはじめ、アバンギャルドを評価するひとたちは大勢いて、いまもそんな気持ちをもつひとは多いと思います。
――クルマにおけるアバンギャルド性とはなんでしょう。
スタイルとメカニズムで、何にも似ていないことではないでしょうか。DSでは、ファッションや皮革製品など、フランスのラグジュアリーインダストリーとのつながりを意識しています。とりわけ内装のスタイルと仕上げは、DSでしか手に入らないものだと思います。たとえば、時計のバンドを連想させる立体的なシート表皮の造型。また、心地よい触感を追求してダッシュボードやステアリングホイールに使ったソフトな革とか。DS3のLEDで複雑に構成したヘッドランプは、このセグメントで随一です。
――そしてメカニズムでもオリジナリティがあるとか。
新奇なものである必要はないと考えています。たとえば、私たちはダイナミックコンフォートと呼んでいるのですが、気持ちよく運転ができるように、丁寧にエンジントルクや変速機をチューニングすること。とりわけ、DSではトルクの出方で、加速していく時に気持ちよさを感じてもらおうと強く意識しています。それがダイナミック(動的)なコンフォート(快適性)だととらえています。乗るひとを幸せにするのは、丁寧に気を配って仕上げたものなのです。