Diary-T 221 「成熟した大人」
Lounge
2015年4月15日

Diary-T 221 「成熟した大人」

Diary-T

Diary-T 221 「成熟した大人」

文・アートワーク=桑原茂一

”呆れるほどみたい映画があらわれた。”

たえず「ゆらいでいること」、それが生物の本態である。私たちのうちには、気高さと卑しさ、寛容と狭量、熟慮と軽率が絡み合い、入り交じっている。私たちはそのような複雑な構造物としてのおのれを受け容れ、それらの要素を折り合わせ、共生をはかろうと努めている。そのようにして、たくみに「ゆらいでいる」人のことを私たちは伝統的に「成熟した大人」とみなしてきた。社会制度もその点では生物と変わらない。変化に応じられるためには複雑な構成を保っていなければならない。

内田樹の研究室
http://blog.tatsuru.com/

”あぁ~大人になりたいなぁ~”

毎回内田樹さんの書かれたものは常に語彙が豊富で毎回舌を巻くのだが、今回もそのグルーヴにすっかり酔ってしまった。

賦活され…、ふかつと読むのか…

活力を与えること。物質の機能・作用を活発化すること。

日本のメディアの成熟度は低い。
全国紙は「立派なこと」「政治的に正しいこと」「誰からも文句をつけられそうもないこと」だけを選択的に報道し、テレビと週刊誌は「どうでもいいこと」「言わない方がいいこと」「人を怒らせること」だけを選択的に報道している。メディアの仕事が「分業」されているのだ。それがメディアの劣化を招いているのだが、そのことにメディアの送り手たちは気づいていない。
内田樹の研究室

忌避(きひ)とは、広い意味ではあるものや事柄について嫌って避けることである。

”いつか私がこの語彙を身につけることはあるのだろうか?”

ジキル博士とハイド氏の没落の理由は、知性と獣性、欲望抑制と解放をひとりの人間のうちに同居させるという困難な人間的課題を忌避して、知性と獣性に人格分裂することで内的葛藤を解決しようとしたことにある。彼が罰を受けるのは、両立しがたいものを両立させようという人間的義務を拒んだからである。だが、その困難な義務を引き受けることによってしか人間は人間的になることはできない。面倒な仕事だ。だが、その面倒な仕事を忌避したものは「人格解離」という病態に誘い込まれる。私たちの国のメディアで起きているのは、まさにそれである。メディアが人格解離しているのである。解離したそれぞれの人格は純化し、奇形化し、自然界ではありえないような異様な形状と不必要な機能を備得始めている。

両立しがたいものを両立させようという人間的義務を拒んだからである。だが、その困難な義務を引き受けることによってしか人間は人間的になることはできない。面倒な仕事だ。だが、その面倒な仕事を忌避したものは「人格解離」という病態に誘い込まれる。私たちの国のメディアで起きているのは、まさにそれである。メディアが人格解離しているのである。解離したそれぞれの人格は純化し、奇形化し、自然界ではありえないような異様な形状と不必要な機能を備得始めている。
内田樹の研究室

「人格解離」→その困難な義務を引き受けることによってしか人間は人間的になることはできない。

”これまで私は大人になることを拒んできたわけではない。
一重に私が無学だったということだ。
大変恥ずかしいことだが大人とはなにか?
をちゃんと知らないまま現在まで生きていること。
これがその原因のすべてだ。
だからこうした内田樹さんの文脈や思考を追従していくと
もしかしたら大人になることへ向かうことが出来るのでは?
と私は頗るワクワクしてくるのだ。”

「デタッチメント」というのは、どれほど心乱れる出来事であっても、そこから一定の距離をとり、冷静で、科学者的なまなざしで、それが何であるのか、なぜ起きたのか、どう対処すればよいのかについて徹底的に知性的に語る構えのことである。「コミットメント」はその逆である。出来事に心乱され、距離感を見失い、他者の苦しみや悲しみや喜びや怒りに共感し、当事者として困惑し、うろたえ、絶望し、すがるように希望を語る構えのことである。この二つの作業を同時的に果たしうる主体だけが、混沌としたこの世界の成り立ちを(多少とでも)明晰な語法で明らかにし、そこでの人間たちのふるまい方について(多少とでも)倫理的な指示を示すことができる。
内田樹の研究室

”なるほど。「デタッチメント」と「コミットメント」か。
こんな理路整然とした美しい文章に接すると、目の前の靄が晴れてくるような爽快感に包まれてなんだか元気が出てくるぞ。
成熟した大人へ向かうことは選曲する楽しみと同じように、
これで良いということはないが、そのプロセスには時折落雷が鳴るような大きな快感が沸き立つことがある。
出来ることなら私も選曲家らしく大人になりたいものだ。”

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