ブルガリ「オクト」にまつわるLEON的考察|BVLGARI
BVLGARI|ブルガリ
美しさの黄金比を掛け合わせた、あたらしき名作
独特な八角形のデザインにより、時計のあたらしいデザインスタンダードとなったブルガリ「オクト」。今回は、その新作をイメージしたコーディネートでLEON、MEN'S CLUB、SENSEの3誌編集長が登場。デザインと価値観、そして男にとって時計とは? というさまざまな視点から「オクト」の魅力を教えてくれる。
Photographs by KOBAYASHI Takashi(ITARU studio)Text by ITO Yuji(OPENERS)
LEON前田編集長が見る「オクト」の黄金比
ブルガリとLEONのおつき合いは創刊時まで遡るんだけど、おたがいに共通している要素としては、ベースにまずイタリアンデザインっていうものがあって、そこに艶っぽさとか色気がくわわって、そこにはラグジュアリーという価値観と歴史もある。
LEONで提案しているのは、イタリアのファッションを真似しましょうではなく、ひとつひとつのモノにこだわりをもって、お洒落を楽しみ、人生を謳歌しようというイタリア的ライフスタイル。そのイタリアンライフスタイルをかたちにしたのが、たぶんブルガリというブランドなのではないかとおもっているんです。
ブルガリの時計は、どの時計にも似ているわけではなく、とても独自のデザインコードをもっている。その典型ともいえるのが、名作の「ブルガリ・ブルガリ」。あの時計は、男性のジュエリーという視点からデザインされたものだとおもっているんだけど、「オクト」はまったく違うアプローチからデザインされたもの。ムーブメントからケースのデザインまで、すべて美しい時計のデザインコードに沿ったデザインが採用されている。おそらく、その裏には、ブルガリの“自分たちで本格的な時計を作ろう”という意図が見え隠れしているようにおもうんです。だからはじめて見た時に、すごく魅力的に見えたし、斬新なデザインだと感じたのを覚えていますね。
最近は気になっているのは、小振りな時計
個人的には最初に発表されたものよりも、この38ミリの方が実は好きなんです。
なぜ38ミリの方がしっくりきたかというと、現代の時計のデザインが完成された1950年代前半あたりは、まだ男性の時計は35ミリがベーシックだった。それ以降になると、いろんな機能が搭載されて大型化されてゆくんだけど、ここ数年でそれが、もう一度シンプルな方向へと流れつつある。
そうしたなかで、僕は38ミリの方が、「オクト」ができあがっていく過程にある時計のデザインコードにしっくりきているような気がするんです。もっと近未来的なデザインだったら、40ミリ以上のケースデザインもありなのかもしれないけれど「オクト」のデザインだったら40ミリを切った少し小ぶりなサイズのほうが、密度感が増して落ち着きがいいように感じます。
ケースのサテンとポリッシュのコンビネーションやエッジィなラグの組み合わせとかが、少しフューチャリスティックな……例えばいまクルマのデザインにも似た、エッジを立てていくような手法を取り入れつつも、全体としてはすごくトラディショナルな方向に落ち着いているでしょう。ということは、異なる要素を組み合わせているにも関わらず、それぞれがお互いにベーシックなものだから、結果として破綻しないんです。そこに現代的なディテールを入れていくことで、結果としてまったくあたらしいものに見えてくるんでしょうね。
アップデイトされたベーシックの恰好よさ
今日は、この「オクト バイレトロ」に合わせたコーディネートで、ということだったんだけど、この時計からにじみ出てくるにおいとか空気感は、ものすごい新しいものではないとおもっているんです。ひとつひとつベーシックなものを詰めていって、そこに現代の感覚を放り込んだらまったく新しいものができあがったという結果なのではないかと。
いまのLEONが考える恰好いいファッションも、ものすごく新しいものを探すのではなく、ものすごく新しいファッションを読者に提案するのでもなく、むしろベーシックなんだけれど、ディテールやシルエットを煮詰めて、そこに新しいファブリックや新しいカッティング、ディテールデザインにワンエッセンスくわえてあげると突然新しくなるんだよ、という価値観を読者と共有している。
その着こなし方も決して奇をてらったものではなく、新しいディテールや新しいファブリックを使ってはいるけれど、トラディショナルなアイテムだから、素直に着こなすことができる。このコーディネートもその一例といえるもので、天然のウールに現代の技術で透湿性を高め、温度を遮断して、シワになりにくい加工が施されている。そのテクノメリノを使ったジャケットに、ナイロンのような光沢感をきかせたコットンのパンツを合わせたもの。だから、全体でみるとすごく新しいコーディネートのように見えるんだけど、大人としての落ち着きや品格を保ったスタイリングになっているはず。
コンビカラーの「オクトSS」に合わせるなら
スタンダードな「オクト」のイエローゴールド×ステンレススティールになると、デザインがよりシンプルになってくる。バーインデックス然り、本当に美のデザインコードそのままに、リューズ位置やカレンダーが配置されている。ただ、全体としてはエッジの立て方がものすごく強い。この時計なら、たぶんもっとカジュアルなスタイルの方がいいような気がする。それこそナイロンパーカーに、スウェットのリブつきパンツにスニーカーというような。だから、普通のスーツとかに合わせてしまうと、そのまんまみたいなことになってしまいがち(笑)。
ストラップのデザインにしても、全体としては曲がった形状でしょう。でも、ひとつひとつのパーツは全部直線だったりする。だからこそ、リラックスしたコーディネートと相性がいいように思うんだよね。しかも、仕上げがとっても複雑。バックルも艶消しとポリッシュ仕上げをミックスしたものになっていて、エッジの効かせ方がマニアック。
もしひとつだけ「オクト バイレトロ」にわがままをいえるとしたら、手巻きモデルもほしいと思う。このデザインで手巻きの薄型があったりすると、より新しい感じがする。フェイスとかもシンプルでかまわないから。そして薄型競争に参戦するのではなく、これをあと3ミリか4ミリ追い込むと、どんな新しいデザインができるんだろうっていうのは興味が湧いてきますよね。
あと、ピンクゴールドの良いところは、茶色いものとの相性の良さ。ベルトが黒で茶色い靴を履いていたとしても、ゴールドがちゃんとそれを代用してくれるから万能カラーともいえる。「オクト バイ レトロ」は、LEONがかんがえる大人の男性像にふさわしい色気と品格を備えた時計なんじゃないかな、っておもっています。
「オクト バイレトロ」
ケース|38mm
ムーブメント|レトロ ブルガリ キャリバー300(自動巻き)
パワーリザーブ|約42時間/石数33
ストラップ|ブラックアリゲーター
価格|380万円(予価)
11月発売予定
ブルガリ ジャパン
Tel. 03-6362-0100
http://www.bulgari.com