DANIEL ROTH&GERALD GENTA|確かなクオリティが揺ぎ無い個性を生む
DANIEL ROTH&GERALD GENTA|ダニエル・ロート&ジェラルド・ジェンタ
確かなクオリティが揺ぎ無い個性を生む
ダニエル・ロート&ジェラルド・ジェンタ
マネージング・ディレクター
ジェラルド・ローデン氏インタビュー
文=野上亜紀写真=飯田信雄
小さな物づくりが結ぶ顧客との絆
「ジェラルド・ジェンタ」と「ダニエル・ロート」はともに複雑機構を得意とする、ほかにはない個性が印象的な時計ブランドだ。ダニエル・ロートは1989年、ジェラルド・ジェンタは1969年に創設、と歴史は浅いながらも、数多くの熱狂的なファンを持つ。ブルガリグループに所属するこのふたつのブランドを統括するのが、マネージング・ディレクターのジェラルド・ローデン氏。ローデン氏は1998年からこのふたつのブランドを束ねてきた。
「ジェラルド・ジェンタとダニエル・ロートはかたや“コンテンポラリー”、かたや“コンサバティブ”として、それぞれ製作スタイルが違います。しかしともに長けたクリエイターが生み出したという点においては、コンセプトは一緒。今ではふたりの創業者はいませんが、品質はもちろん、彼らの製作指針を踏襲するような物づくりを続けてきました」
ほかにはない個性を作るものは“品質”
彼らが志すのは、きわめて“ニッチ”であること。小さな市場でもよい、何よりも時計のクオリティを大切にしてきた、とローデン氏は語る。また、ダニエル・ロートとジェラルド・ジェンタは、いずれも“複雑機構”に深い思い入れを持つブランド。同社の工房で働く職人の技術は高く評価されている。
「大量生産の時計を作ろうという気持ちはありません。小さい規模だからこそ、実際にお客さまの反応に触れて、現場の意見を直接反映できるというのがわれわれの強みなんです。ほかでは見たことがない時計が欲しいという顧客の願いに応えるのももちろんですが、10年、20年先も続くような“信頼”を培うことが何よりも大切です。小さな修理を含め、長期にわたってお付き合いいただけることを最優先に考えています。少数だからこそ中古市場で利益を出せるかもしれない、という考え方でもいいんです(笑)。それも身に着ける側にとっての“安心感”なのですから。売れると数を出したくなるのが世の常ですが、把握できない時計を決して出さない。それが私たちの熱意の証なんです」
ジェラルド・ジェンタとダニエル・ロートには、最新型を求めるのではなく、“個性的な一点”を求めて来る顧客が多いという。テーラードのスーツに、ハンドメイドのシューズを身に着けたトレンド・セッターがよくブティックを訪れますよ、とローデン氏は微笑んだ。
「先にも述べましたが、私たちに望まれている個性を追求するためには、なによりも高品質の時計でなくてはなりません。品質チェックも私の大切な仕事。顧客がスイスにいらしたときにも、番号を出せばすぐに工房が対応できるよう体制を整えています。ジェラルド・ジェンタが得意とする『グランソヌリ』に関しても、きちんと精度測定するシステムを確立しています。私たちは品質のひとつひとつが、そのまま顧客のメンタルに反映されてしまうものだと考えているんです」
長期的な視野でブランドを続ける
小さなブランドであるからこそ、目先の利益ではなく、ひとつひとつを長期的に積み上げていかなければならない。それがローデン氏のビジネス方針だ。
「ジェラルド・ジェンタとダニエル・ロート。ふたりの創設者が考えたブランドのDNAというものは必ず残していく、これは私たちが守ってきた指針です。2009年の新作『アンデュレー』も、ダニエル・ロートならではの時計といえるでしょう。創設者がいつ突然訪れても、彼らが納得できる物を作り続けなくては意味がないんです。ジェラルド・ジェンタ氏は毎月私たちを訪問しますが、来るたびに満足してくれています。私たちのような小さなブランドは、いかに歴史を継続できるかという点が、大切なキーとなります。確かなクオリティがなければ、ブランドの価値というものは生まれないのですから」