ただシンプルであるのではなく、至高のユーザビリティを具現する|MORITZ GROSSMANN
MORITZ GROSSMANN|モリッツ・グロスマン
ジャンピング・デイト。視認性に優れ、いつでも
日付を修正できる、ユーザーの行動を制限しない逸品
たしかに顔だけ見ていては、その凄みは分からない。機械式時計の欠点である日付修正時のNG条件を見事に撤廃し、ユーザーが自由にリューズ操作できるようにしているのだ。時分針、およびブラケット型のデイトマーカーは手仕上げ。ブルースチールに焼きあがるわずかに手前、寸止めで得ることができるブラウンバイオレットカラーが、モリッツ・グロスマンらしさを示している。
Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)
手仕事の温もりがなければ、高級時計もただの“機械”
これは、モリッツ・グロスマンの主任設計者イエンス・シュナイダー氏の言葉である。温厚な表情でゆっくりと言葉を選び、優しく話す彼と話をしていると、その真剣さが伝わってくる。時計好きが時計のことを本気で考えたゆえのこだわりは、派手さはなくても重みがある。なるほど、こういう進化があるのか、と膝を打つのである。
「アトゥム・デイト」は、インデックスをダイヤル中心にぎゅっと寄せ、その外周にひと月31日までの日付を記している。そのアラビア数字を、ブラケット(括弧)型のデイトマーカーで表示するシステムだ。
日付ディスクは固定、デイトマーカーがひと月かけて回転していく。
このデイトマーカーは、ジャンピング式である。つまり毎日午前12時きっかりに、日付はピョンっと跳ねていく。ポインターデイトのように時分針と重ならないので、日付は非常に読み取りやすい。そしてフルサークルゆえに今日が月始めなのか、月半ばなのかも視覚的に一瞬で知覚できるメリットがある。
一般的に、デイト表示付きの機械式時計では、日付が変わる前後の数時間、およそ午後8時から午前4時までの手動による日付調整を禁じている。これは意外と知られていない事実なのだが、たとえ高額モデルであろうとも、この禁止条件を持たないモデルは極めて少ないのだ。デイトディスクもしくポインターデイト針を送る“24時間で1回転するツメ”を、手動操作によって損傷させないためである。
じつはこの「オキテ」を知らずにツメを折ってしまうトラブルが多いのである。
さらにこのムーブメントは日付調整時に両方向に調整できる。つまり、こちらも一般的な機械式時計では禁じ手の「日付の逆回し」が可能なのだ。
具体的に見ていこう。10時位置のリューズを一段引くことで日付調整モードとなり、デイトマーカーを手動で送ることができる。この時、ムーブメントは動いていても時刻と日付の歯車が離れた状態となる。それゆえ日付が変わる数ミリ秒を除いて日付修正禁止時間帯がなく、日付の逆回しをも可能としているのだ。逆に、時刻を修正する際はデイトマーカーを動かさないようにストップレバーがかかる。
「日常生活で使用して、トラブルが起きないように」
「何代にもわたり、長く使ってもらえるように」
これがモリッツ・グロスマンの設計思想である。実に深い。
アトゥム・デイト
Ref.|MG-001266(左)、MG-001267(右)
ムーブメント|手巻き(自社製キャリバー100.3)
テンプ振動数|1万8000振動/時
パワーリザーブ|完全巻き上げ状態から約42時間
機能|ストップセコンド機能搭載スモールセコンド、日付表示、グロスマン製プッシャー付き手巻き機構
操作|リューズ2個(巻き上げ用/時刻・日付設定用)、プッシャー(時計リスタート用)
ケース素材|18KRG(左)、18KWG(右)
ケース径|41.0mm
ケースバック|シースルー
ストラップ|手縫いアリゲーター
価格|420万円(左)、450万円(右) ※いずれも税別
Page02. 人間は、本物を感性で判断する
MORITZ GROSSMANN|モリッツ・グロスマン
イエンス・シュナイダー氏の理想を具現する
マーケティング発想ではない開発思想
人間は、本物を感性で判断する
「引き出しにしまっていても、使おうと思った時にすぐに日付を直せるものを作りたかった」と、シュナイダー氏。ユーザー目線に徹底した視点である。派手さはなくても、玄人好みと言うべきか。いや、思いが深く、そして未来を見据えているのである。
その姿勢を示すもうひとつの側面が、このブランドが大切にしている手仕事だ。モリッツ・グロスマンはマニュファクチュールであると同時に、主要パーツも自製している。とりわけ針を手仕上げしていることは有名だ。
モリッツ・グロスマンの主任設計者イエンス・シュナイダー氏は語る。
「針やテンプ受けの彫金、そうした手仕事は、一瞬、目をやるだけでは分からないかもしれませんが、何度も見ているうちに、味わいがにじみ出るものです。
工業製品は、人の手を加えることによって温かみが添えられ、ユーザーにとって唯一無二のものとなります。現代の腕時計には、その要素が必要なのだと思います」
高級機械式時計は感情に訴えるもの。時刻を知るだけなら、携帯電話があり、電波時計やコネクトウォッチがある。しかしそれらは複製絵画を飾るようなものかもしれない。複製の気軽さはあるが、人間は、本物を感性で判断する。完璧な大量生産品の、その美しさに味がないことを嗅ぎ分けられるのである。
アトゥム・エナメル
ドンツェ・カドラン製のグランフー・エナメルダイヤルを搭載した各25本の世界限定モデル。
Ref.|MG-001264(左)、MG-001265(右)
ムーブメント|手巻き(自社製キャリバー100.1)
テンプ振動数|1万8000振動/時
パワーリザーブ|完全巻き上げ状態から約42時間
機能|ストップセコンド機能搭載スモールセコンド、グロスマン製プッシャー付き手巻き機構
操作|リューズ1個(巻き上げ用/時刻設定用)、プッシャー(時計リスタート用)
ケース素材|18KRG(左)、18KWG(右)
ケース径|41.0mm
ケースバック|シースルー
ストラップ|手縫いアリゲーター
価格|410万円(左)、440万円(右) ※いずれも税別
Page03. ツイスト操作でゼンマイを巻き上げる
MORITZ GROSSMANN|モリッツ・グロスマン
マーケティング発想ではない開発思想が
ユーザーに優しい機能、機構を生み出す
ツイスト操作でゼンマイを巻き上げる
モリッツ・グロスマンによる2017年のさらなる話題は、ゼンマイの新しい巻き上げ方式である。特にツメを美しく伸ばしている女性にとって、リューズの巻き上げ操作はツメを痛める危険がある。この問題に対して、モリッツ・グロスマンが出した答えが、新たな巻き上げ機構。すなわち新開発のストラップ式巻き上げ機構だ。
ケース6時位置ののラグ代わりとなる支柱がムーブメントの巻き真になり、左の写真のようにストラップを約6回、回転させるとフル巻き上げに至る。
現状はパワーリザーブ約48時間だが、将来的にはおよそ72時間にまで高める想定だ。
モデルの名称は「テフヌート・ツイスト」。今季はコンセプトモデルとしての登場だが、すでに3タイプの文字盤デザインが発表され、賑やかなラインナップを
誇っている。カボション装飾のないリューズにも変更可能。華奢なスタイルを好む男性にもお勧めできるノーブルモデルだ。
テフヌート・ツイスト「クラシック・ジェント」
Ref.|MG-001167(左)、MG-001231(右)
ムーブメント|手巻き(自社製キャリバー102.2)
ケース素材|18KRG(左)、18KWG(右)
ケース径|36mm
ケースバック|シースルー
価格|330万円(左)、340万円(右) ※いずれも税別予価
テフヌート・ツイスト「クラシック」
Ref.|MG-000951(左)、MG-001233(右)
ムーブメント|手巻き(自社製キャリバー102.2)
ケース素材|18KRG(左)、18KWG(右)
ケース径|36mm
ケースバック|シースルー
価格|330万円(左)、340万円(右) ※いずれも税別予価
テフヌート・ツイスト「ファンシー」
Ref.|MG- 001165(左)、MG-001232(右)
ムーブメント|手巻き(自社製キャリバー102.2)
ケース素材|18KRG(左)、18KWG(右)
ケース径|36mm
ケースバック|シースルー
ダイヤル|MOP、128個のブリリアントカットダイヤモンド
価格|370万円(左)、380万円(右) ※いずれも税別予価