ブレないモノづくり、そしてパワフルなストーリー。「腕時計界のオールスター」は、やっぱり俺たちの基本だよ|FEATURE
WATCH & JEWELRY / FEATURES
2021年10月1日

ブレないモノづくり、そしてパワフルなストーリー。「腕時計界のオールスター」は、やっぱり俺たちの基本だよ|FEATURE

PANERAI|パネライ
TAG HEUER|タグ・ホイヤー
OMEGA|オメガ
BREITLING|ブライトリング
CARTIER|カルティエ

着けて話そう、時計会議。第5回 オールスター編

頭でっかちにならなくたって、腕時計はもっと楽しめます。まずは実物を触って、そこから見えてくる“ファーストインプレッション”を掘り下げようという意図で、この「時計会議」は始まりました。とはいえ、今回のテーマは誰もが見慣れた、「腕時計界のオールスター」アイテム。いつもの会議とはちょっと違い、議論はぐっと深く切り込んだコンセプチュアルなものに……。今回の出席者はクリエイティブディレクター前田 陽一郎、OPENERSディレクター松本博幸、OPENERSクルマ記事担当 山口幸一、OPENERS時計記事担当 土田貴史の4名です。

Talk by MAEDA Yoichiro, MATSUMOTO Hiroyuki, YAMAGUCHI Koichi, TSUCHIDA Takashi|Text by KOIZUMI Yoko

機能から生まれた必然性のあるデザイン。愛でるべきは、その“ロジカルな美しさ”

土田貴史 時計会議 第5回のテーマは「腕時計界のオールスター」モデルです。なかでもこの5本は、機械式腕時計が人気を取り戻した1980年代後半から2000年代へと続く時計雑誌、モノ雑誌、ファッション誌を賑わせ続け、腕時計の人気を牽引してきました。
・PANERAI パネライ「ラジオミール カリフォルニア」
・TAG HEUER タグ・ホイヤー「モナコ」
・OMEGA オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ マスター クロノメーター」
・BREITLING ブライトリング「ナビタイマーB01 クロノグラフ46」
・CARTIER カルティエ「サントス ドゥ カルティエ」
以上、5本
前田 陽一郎 PANERAIは、最初に人気がブレイクしたモデル(文字盤がサンドウィッチ構造で大型の時数字が特徴)じゃないんだね。
土田貴史 1936年にイタリア海軍用に開発された試作品こそがPANERAIの原点という視点で「ラジオミール カリフォルニア」を選びました。当時、ROLEXがムーブメントを供給していたとか、1930年代に流行していたユニークダイアルをそのまま載せている点で、私にとって“神モデル”です。
松本博幸 僕も、こっちのモデルがパネライの原点。パネライが再デビューした1994年当時、自分の情報源が『モノ・マガジン』だったこともあって、モデル誕生のバックボーンを掘り下げた時の印象が強い。パネライと言えば、“潜水士”とか“イタリア海軍”といったキーワードを連想します。
山口幸一 バックボーンという意味では、どのモデルも必然性が感じられる時計ばかりですよね。
クリエイティブディレクター前田 陽一郎
前田 陽一郎 デザインのためのデザインではなく、目的があってのデザインを持つモデルが揃っている。たとえばパネライなら、水中での視認性確保という目的のためにあの大きさがあるってことだよね。
松本博幸 それを知識として分かっていても、最初見たときはあまりにも大きくて驚いたな。
前田陽一郎 サイズについては、少なからずネガティブな印象が存在したのに、あっという間に超人気ブランドになっていったから面白いよね。僕の感覚でいくと、PANERAIの「ラジオミール」は、AUDEMARS PIGUETの「ロイヤルオーク」とともに、2000年代を象徴するモデルだと思ってる。
土田貴史 人気を牽引してきた要素として決して無視できないのが、そのモデルの背景にある“ストーリー”でしたよね。モノ雑誌のセオリーとして、ストーリーを紹介することは欠かせませんでした。
前田 陽一郎 僕らの世代は雑誌メディアが本当に強かったから、「スピードマスター」と月との関係や、「サントス」がアルベルト・サントス=デュモンのオーダーで1904年に誕生したとか、そういった情報が自然と入ってきた。雑誌をパラパラとめくっている間に、この5本のブランド名やらモデル名を、いつの間にかスラスラ言えるようになったものだしね。雑誌で紹介された逸話の数々が、高級機械式時計への憧れを一緒に連れて来てくれたと思う。
松本博幸 情報が欲しければ本屋に行く時代だったわけだけど、いまや腕時計って本当に必要なの? という状況になっているからね。時計なんてどこにでもあるし、時刻を知るだけなら、ほかにも手段があるわけで。
山口幸一 精確さなら、GPSや電波時計に勝るモノはないし、光発電が搭載されていれば電池もいらない。Apple Watchなら健康管理までしてくれる。とはいえ、こうした王道モデルたちは、時代の変化と常に同じ土俵にいて、その魅力を競い合ってきたわけだから、大したもんだなと思います。
土田貴史 外見は1世紀前に登場した当時のままでも、中身については飛躍的にスペックアップしていますよ。自社キャリバーを搭載したり、外装の仕上げも相当に優れたものになっています。ちなみに「モナコ」(TAG HEUER)は、コレクションで初めて自社開発ムーブメント「キャリバー ホイヤー02」を搭載したモデルとなりました。
松本博幸 「モナコ」って、もともとレーサー用だったんだっけ?
土田貴史 開発当初に、そういう意図はなかったみたいですね。スティーブ・マックイーンが映画『栄光のル・マン』(1971年)で着用して脚光を浴びたのでその印象がありますが、このモデルはそもそも時計史に残るエポックメイクなモデルで、“世界初の角型防水時計”であり、“世界初の自動巻きクロノグラフ”なんです。
OPENERSクルマ記事担当 山口幸一
山口幸一 個人的にTAG HEUERでは、過去にものすごい人気になった「S/el」(1987~1999年)シリーズが印象に残っていますね。
松本博幸 コンビモデルが多かったね。
土田貴史 SS×YGのコンビは、当時はちょっと個性強めだなって思ってたんですけど、いま、改めて「サントス」のコンビモデルを見ると、適度にエレガントで“丁度良さ”を感じるんです。特に、ブレスレットのネジだけゴールドとか、素敵だなって思います。
前田 陽一郎 「スピードマスター」には“アポロ計画”というすごい逸話があるよね。
土田貴史 試験を重ねるなかで宇宙での使用に耐え得ると認められたのが、またカッコいいストーリーになってますよね。そして現在はコーアクシャル脱進機を搭載、精度はマスタークロノメーター認定となっていますから、中身も格段にレベルアップしています。
松本博幸 同じクロノグラフでも、個人的には「ナビタイマー」が好きな顔。そして飛行機のコクピット計器を作っていた歴史は魅力的です。
土田貴史 アヴィエーションクロノだったら、BREITLINGを持ちたいなっていう気持ちになりますもんね。
OPENERSディレクター松本博幸
松本博幸 「ナビタイマー」って、世界で初めて航空計算尺付きクロノグラフで……発表が1952年か。70年前で、このインデックスの細かなプリント技術ってすごいね。機械が高精度であることはもちろんだけど、目盛りが正確じゃないと計器としては意味がないわけで。
どのモデルも輝かしい功績があって、インパクトのあるデザインがあって、ストーリーが積み重なっていて。今日選ぶ1本として、選択肢に加えたい力強さがあるね。
土田貴史 腕時計を何本も買える人って多くはないでしょう。だから購入する際は、絶対に間違えたくない。その点で、この5本は、価値が滅びないという“確かさ”があります。
松本博幸 不動の地位っていうか、立場が明らか。
山口幸一 必然性をもって生まれたデザインとか、機能をもって生まれた形態は、消費されるものではないですよね。たとえばゲレンデヴァーゲン(メルセデス・ベンツのGクラス)は軍用車両として開発されたもので、1979年にNATO軍に正式採用されていますが、いまだにコンセプトは変わらず、あの無骨な印象そのままなんです。時計同様、インテリアや機能は何度もマイナーチェンジしていて、きっとひどいぬかるみや岩場といったところを走る人はいないだろうと想像できるのに、ゲレンデにはデフロック(デファレンシャルロック:左右のタイヤの回転差を固定する機能。悪路で使用する)が装備されているんです。そんなところに、軍用車両である出自とか矜持をいまも伝えているなぁと感じますね。
プロダクトとしてとても魅力的だと感じるし、あぁいう“本物”を手に入れてそれをずっと使っていくって素敵だと思います。
OPENERS時計記事担当 土田貴史
土田貴史 脈々と伝えられてきたストーリーを、自分自身でも試してみたいという気持ち、誰もが持っているものですよね。
前田 陽一郎 こうしたモデルを見ていて感じるのは、自分自身は懐かしむにはまだ早いと思っていたいってこと。30~40代ならもっと簡単に「懐かしいね」って言えて、もっと素直に「カッコいい」って口にできるかもしれない。でも自分自身、50代という中途半端さゆえに、リスペクトはすごくあるし、正直、ひそかにあるストーリーにやられまくった世代として、いいなって思いもある。
あるんだけど、その感じるものに対して否定的な自分もいるんです。だから今日は口数が少ない(笑)。でも否定的だからといって、じゃあ嫌いかと言われたら、やっぱり嫌いになれないんだよ(笑)。
山口幸一 マーケティング的な視点で生まれたのではなく、必然性から誕生したものへの敬意やブレないモノづくりを続けてきた姿勢に対して尊敬します。その一方で、前田さんが感じているであろう、パワフルなストーリーに対して気が引けちゃうっていうことも理解できます。ただ、僕は前田さんのように時計を愛好したり、いろんな世界を見ていないので、こういうスターアイテムが持つ出自とかプロダクトとしてブレない姿勢は、素直にいいなって思います。
カルティエ「サントス ドゥ カルティエ」
Ref|CRW2SA0009
ムーブメント|自動巻き(自社製Cal.1847 MC)
ケース、ブレスレット素材|SS(18KYGベゼル)
ケースサイズ、厚|47.5✕39.8mm、9.08mm
ブレスレット|「クイックスイッチ」交換可能システム搭載
防水|10気圧
価格|121万2000円(税別)
前田 陽一郎 でも、「サントス」はいいね。ジーンズにニットみたいな時に合う。
松本博幸 個人的にはBTSとかTwiceのような子たちに、「サントス」は似合うと思っています。やっぱりユニセックス感が一番強いモデルだと感じるから。ただ、そこには時計やブランドが持っているストーリーの介在は必要ないんだろうね。
前田 陽一郎 僕は若い世代が、ストーリーを知らずに、単純に「かっこいいですね」「いいですね」って言ってくれたら、むしろ自分が嬉しかったりするな。
松本博幸 この5本が中核になって、かつてクオーツウオッチ全盛時代からもう一度機械式時計を盛り返そうとして、現在に至る下地をつくった。時計の機能も、歴史も、ブランドやモデルが持つストーリーも、教えてくれたのはこのモデルたちだったから、どうしたって俺たちの基本になっているよね。
山口幸一 すべてを教えてくれたし、教わりました。
前田 陽一郎 ファッションとしての腕時計の着けこなしについても、やっぱり今回のモデルが牽引してきたよね。若者から大人までを巻き込んだ大きな時代のうねりのなかで、機械式時計の価値を下支えした代表モデルと言って間違いない。
土田貴史 そして、ちょっと背伸びすれば買えるかもしれないという親近感もまた、いいんですよね。昔に比べると価格は上昇したものの、モノとしてブラッシュアップされ、その完成度も高いです。やっぱりロングセラーモデルには、スター性があると思うんですよ。
問い合わせ先

オフィチーネ パネライ
Tel.0120-18-7110
http://www.panerai.com/

問い合わせ先

LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー
Tel.03-5635-7054
https://www.tagheuer.com/jp/ja/

問い合わせ先

オメガお客様センター
Tel.03-5952-4400
https://www.omegawatches.jp

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ブライトリング・ジャパン
Tel.0120-105-707
https://www.breitling.com/jp-ja

問い合わせ先

カルティエ カスタマー サービスセンター
Tel.0120-301-757
http://www.cartier.jp

                      
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