CHAPTER 2 エポックモデルから紐解く、初期チューダーダイバーズの歴史|TUDOR

“ビッグクラウン“と呼ばれたRef.7924および、Ref.7924を着用した1961年撮影のフランス海軍所属のダイバー(© Joël BRUN ECPAD Défense)

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2021年8月1日

CHAPTER 2 エポックモデルから紐解く、初期チューダーダイバーズの歴史|TUDOR

TUDOR|チューダー

Text & Edit by TSUCHIDA Takashi

チューダー製ダイバーズが育まれた1954〜1968年のモデルを徹底解説

チューダー製ダイバーズが誕生してからおよそ15年の間に、8つのエポックモデルが存在しています。
1954年 Ref.7922 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー
1955年 Ref.7923 チューダー オイスター サブマリーナー
1958年 Ref.7924 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー “ビッグクラウン”
1959年 Ref.7928 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー “スクエアクラウンガード”
1960年 Ref.7928 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー “ポインテッドクラウンガード”
1964年 Ref.7928 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー “トロピカル”
1967年 Ref.7928 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー
1969年 Ref.7016 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー
1954年、チューダーはブランド初のダイバーズウオッチ「チューダー オイスター プリンス サブマリーナー」(Ref.7922)をリリースしました。耐久性、信頼性、精度、防水性をいずれも高水準に満たした独自開発モデルは、瞬く間にプロフェッショナルたちに選ばれるツールとなりました。以後、この実用機はあらゆるタイプのダイバーたちの要望に応え、進化し続けていきます。
特に、初期チューダー サブマリーナーには様々なバージョンがあり、性能面でも短期間に顕著な進化が見られます。例えば、初代モデル(Ref.7922)では100mだった防水性能が、4年後のRef.7924では200mに向上しました。もちろん防水機構の進化に留まらず、理想のダイバーズウオッチを探るべく、数々の試みが行われました。
そうして1960年代前半、ラウンド型リューズガードが特徴的なRef.7928の最終バージョンによって、後のチューダー サブマリーナーのシルエットと技術的特徴が確立されたのです。
一方で、現行モデル「ブラックベイ フィフティ-エイト」のベースとなっているのが1958年のRef.7924。通称“ビッグクラウン”と呼ばれたモデルです。
それでは、順にエポックモデルを見ていきましょう。

1954年 Ref.7922 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー

チューダー初のダイバーズウオッチは、水深100mの防水性能を実現。その特徴は、ねじ込み式ケースバックとリュウズ、夜光塗料を施した大型のアワーマーカーと針、潜水時間を正確に計測する5分単位の目盛りが付いた両方向回転ベゼルを備えていました。
ダイアルはブラックラッカー仕上げ。文字盤の12時位置ブランドロゴ下には「OYSTER PRINCE」と表記、6時位置には「100m=330ft」「SUBMARINER」「ROTOR」「SELF-WINDING」と表記されています。これらの文字は、金メッキによるプリントでした(※後のリファレンスで、この文字色がシルバー、そしてホワイトへと変わります)。
6時位置にメートルとフィートを列記しているのは、防水性能を世界の人々に正しくリマインドするため。トロピックタイプのプレキシクリスタル風防は、耐水圧を高めるためのドーム型が採用されています。
ムーブメントは振動数が毎時1万8000回のフルリエ社製エボーシュをベースに開発された自動巻キャリバーCal.390。直径5mmのスクリュウ式リュウズと、リベット付きリンクのオイスタータイプのブレスレット(Ref.6636)にはロレックスのロゴが刻まれていました。
Ref.7922

1955年 Ref.7923 チューダー オイスター サブマリーナー

Ref.7923は、手巻きムーブメントを搭載した唯一のチューダー サブマリーナーです。この技術的選択により、厚みを削いだ、フラットなケースフォルムを特徴としています。しかしながら、オイスターケース独特のケースバックとリュウズ、そしてドーム型クリスタル風防により、「チューダー オイスター サブマリーナー」の防水性能は引き続き水深100mを保証しています。
ムーブメントが自動巻きではないため、ダイアル6時位置には「ROTOR」と「SELF-WINDING」の文字がありません。その代わりに「SUBMARINER」と「SHOCK-RESISTING」の文字が記されています。またRef.7922とは異なり、防水性に関する表記がなく、時分針もシンプルなバトン型となっています。
Ref.7923は、振動数が毎時1万8000回のETA製キャリバー(Cal.1182)を搭載しています。リベットリンク付きオイスターブレスレット(Ref.6636)には、ロレックスのロゴが付けられています。資料画像では、一般的なカーブの付いたエンドリンクではなく、2本の円筒形バーによってブレスレットとケースがつながれています。
Ref.7923

1958年 Ref.7924 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー “ビッグクラウン”

8mmの大型リュウズが採用されたことから、コレクターによって“ビッグクラウン”と名付けられたRef.7924。このモデルでは防水性能が従来比2倍、最深200mという技術革新を成し遂げています。このため直径37mmのケースは厚みを増し、より大きなスクリュウ式リュウズが与えられました。
トロピックタイプのドーム型プレキシガラス風防は、深海での高水圧に耐え得るよう、より厚みを持たせたタイプに変更となっています。
ムーブメントは、Ref.7922を継承、自動巻きムーブメント(Cal.390)を搭載しています。ダイアルはブラックラッカー仕上げ。6時位置には、防水性能を示す「200m=660ft」の文字が再び記されています。また針形状もRef.7922と同じデザインの針に戻されました。そしてリベットリンク付きのオイスタータイプのブレスレット(Ref.7206)には、ロレックスの文字が刻まれています。
Ref.7924

1959年 Ref.7928 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー “スクエアクラウンガード”

チューダーはリュウズを衝撃から保護する特殊なケースフォルムを開発し、Ref.7928として発表しました。このリュウズガードは、その後も形状が進化していくのですが、リファレンスナンバーはそのまま。これは、機能追求に向けてダイナミックに進化し続けた初期チューダーサブマリーナーの特徴とも言えましょう。
こちらは(1959年製。Ref.7928。下の正面画像と同じ)、コレクターの間で“スクエアクラウンガード”と呼ばれたタイプ。スクエア型のリューズガードを備えています。リュウズサイズは6mm、「ORIGINAL OYSTER CASE BY ROLEX GENEVA」の文字が刻まれた直径39mmのケースが与えられ、200m防水性能を誇ります。
ダイアル、針、ベゼルは、Ref.7922、7924、7925のデザインをそのまま継承。ムーブメントも同じく、自動巻きムーブメント(Cal.390)を搭載しています。

1960年 Ref.7928 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー “ポインテッドクラウンガード”

Ref.7928の進化は続きます。リュウズガードは、当初のスクエアクラウンガードに比べて、より尖ったバージョンに変更。この形状から、コレクターからは“ポインテッドクラウンガード”というニックネームで呼ばれています。
さらに数年後、究極のリュウズガードが、ラウンド型で完成。このラウンド型は、チューダー サブマリーナー最終モデルまで変更されませんでした。
200m防水を誇るケースは、39mm。リュウズやオイスタータイプのブレスレットに、これまで同様、ロレックスの表記が見られます。ダイアルには、12時位置のブランドロゴの下に「OYSTER PRINCE」、6時位置に「200m=660ft」「SUBMARINER」「ROTOR」「SELF-WINDING」の文字が金メッキで記されています。
ムーブメントは自動巻き(Cal.390)を搭載。両方向回転ベゼルには目盛りが刻まれ、ゼロ位置にはルミネッセンスのインサートが施されています。

1964年 Ref.7928 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー “トロピカル”

1964年製の「チューダー オイスター プリンス サブマリーナー」には、ふたつの特徴があります。ひとつは、新しいデザインのラウンド型リューズガード。こちらはRef.7928のスクエアまたはポインテッド型の古いバージョンを経て、次第に採り入れられたフォルムです。人間工学に基づいたその形状は、1990年代の終わりまで継承されました。
写真のベゼルとダイアルは、強い紫外線に長時間さらされたことにより退色していますが、コレクターたちはこのような変化を“トロピカル”と表現し、大いに珍重しています。
このモデルのダイアルに記された文字はシルバーカラーです。Ref.7928独特の部品が使われており、ケースとスクリュウ式リュウズにはロレックスのロゴが記されています。ケースの防水性能は、200m。自動巻きCal.390ムーブメントを搭載しています。

1967年 Ref.7928 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー

1967年に製造されたこの「チューダー オイスター プリンス サブマリーナー」は、Ref.7928のダイアルが1960年代を通してわずかに進化したモデルです。それまでは、分目盛りが円の内側にプリントされていましたが、このモデルでは目盛りが縁際まで伸び、円がなくなっています。金メッキからシルバーカラーへと変遷した文字色は、このモデルではホワイトへと変更されています。
特徴的なメルセデス針、ラウンド型リュウズガードが付いたロレックスロゴ入りケース、ドーム型プレキシガラス風防、200mという高スペックな防水性能、自動巻きムーブメント(Cal.390)、ロレックスのオイスタータイプのブレスレットを備えたこの Ref.7928 は、初期チューダー サブマリーナーの“究極の形”と言えます。
ダイバーズウォッチの分野における13年間の実験・研究の結果、次の30年間に製造されるチューダー サブマリーナーの基盤を築いたのがこのモデルです。
Ref.7928

1969年 Ref.7016 チューダー オイスター プリンス サブマリーナー

1969年のカタログでは、チューダー サブマリーナーの2つの新作、Ref.7016と7021(デイト付き)が登場しました。チューダーダイバーズウォッチの第2世代は、このモデルから始まったのです。
写真の Ref.7016には、ダイアルと針に独特の特徴が見られます。時針は大きなスクエア型。そして12時位置の薔薇のロゴに代わって、耐久性と信頼性を象徴する盾のロゴが採用されました。コレクターたちに“スノーフレーク”と呼ばれる針は、視認性を最大限に高めるため夜光塗料が施されています。
ひと目で分かるこのニューフェイスは、チューダーのアイデンティティの確立に貢献しました。そして、この新たな仕様が、現代に続くTUDORのスタンダードとなっています。
Ref.7016におけるその他の大きな変化としては、それまでの自動巻きキャリバー390から振動数が同じ毎時1万8000振動であるETA 2483 ムーブメントへの変更が挙げられます。逆に、先代が確立した特徴がそのまま継承されたのは、ロレックスの表記が見られる39mmのケース、水深200mまでの防水性、ラウンド型リュウズガード、ロレックスのクラウンマークが入ったスクリュウ式リュウズ、5分単位で60分まで刻まれた目盛り、0分から15分まで1分単位の目盛りが刻まれた両方向回転ベゼル、ロレックス表記のあるフォールディングリンクのオイスタータイプのブレスレットです。プレキシガラス製の風防はドーム型でなくフラットで厚くなり、張り出しています。
Ref.7016
         
初期チューダー サブマリーナーのエポックモデルは以上でおしまいです。16年間にこれだけの特徴を持つモデルが誕生したとは、この時代にダイバーズウオッチがいかに強く望まれていたのかが分かります。
その一方で、リュウズガードなしにリュウズヘッドを大きくすることで耐久性を高めたアイデアは、とてもユニークなスタイルでした。そのデザインバランスを再現しつつ、現代の技術で機能保全をしたものが「ブラックベイ フィフティ-エイト」、すなわち今回のブティックエディションのベースコレクション。フィフティ-エイトとは、Ref.7924“ビッグブラウン”が誕生した西暦下二桁を指しています。
問い合わせ先

日本ロレックス / チューダー
Tel.03-3216-5671
https://www.tudorwatch.com/ja

                      
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