Van Cleef & Arpels|ストーリーのある腕時計
Van Cleef & Arpels|ヴァン クリーフ&アーペル
ヴァン クリーフ&アーペルらしさ満載
ストーリーのある腕時計
時計界において、異彩を放つヴァン クリーフ&アーペル。今年の新作にも独自性を持った話題作が数多く登場した。新作の展示会にあわせて来日したヴァン クリーフ&アーペル本社の、ジュネーブ 時計制作ワークショップ ディレクター、ドゥニ・ジゲ氏に話をうかがった。
Text by FUKUTOME RYOUJIPhotographs by TSUKAHARA Takaaki
ピエール アーペル初の複雑機構
ジュエラーとして長い歴史を重ねてきたヴァン クリーフ&アーペル。その時計作りは、他の時計ブランドと一線を画す。
「私どもの時計は、まずストーリーありきなのです。ただ時刻を表示するだけではなく、時を巡るストーリーを表現しているのです」
ヴァン クリーフ&アーペルが独特の個性、独特の雰囲気を醸し出す理由について、時計制作ワークショップ ディレクターのドゥニ・ジゲ氏は、そう語ってくれた。さらに、「そのストーリーを語るには、高い技術を持っていないと語れないのです」とも。
今年ジュネーブ・サロンで発表した新作のなかからドゥニ・ジゲ氏は、自信の2モデルを紹介してくれた。そのひとつが、「ピエール アーペル ユール ディシ エ ユール ダイヨール」。2つの地域のの時刻を表示するデュアルタイマーで、“ここの時間、あそこの時間”という名が付けられている。ヴァン クリーフ&アーペルならではのユニークな腕時計だ。
「ヴァン クリーフ&アーペルのピエール アーペル・コレクションに、複雑機構が入るのは今回がはじめてです。上の窓でここの時間。下の窓でもうひとつの時間。分針はレトログラードで、表示しています。このコレクションは、エレガントで、クラシック。
それをちゃんと踏襲したうえで複雑機構を搭載しているところがポイントです。それは、簡単なことではないのです。ピエール アーペルらしくあるためには、まず、薄型のケースに収める必要があるからです」
だから、ムーブメントを新しく開発した。自動巻きなので、巻上げローターをブリッジに埋め込むマイクロローターを採用し、ケース径42mm、ケース厚7.97mmの中に見事に収めてみせたのである。ケースバックからムーブメントを見ると、スペースをうまく使い切っていることがよくわかる。
「このモデルのストーリーは、メゾン創業者の一族で誰もが憧れるような男、“ピエール・アーペルが世界を旅する”ということです。ですから、使い勝手がいいこと。そして、2つの時間を見て、すぐにわかるようにしたいということが、念頭にありました。だから時刻表示はアラビア数字を採用しました。“ここの時間”も“あそこの時間”も小窓にアラビア数字で表示される。とてもシンプルで、わかりやすいですよね。数字をダブルで表示したデュアルタイムは、時計の歴史上、初めてのことでもあるのです」
Van Cleef & Arpels|ヴァン クリーフ&アーペル
ヴァン クリーフ&アーペルらしさ満載
ストーリーのある腕時計(2)
宇宙をケースに閉じ込める
今年のヴァン クリーフ&アーペルのテーマは“ポエティック アストロノミー”。天文学である。そこには夢があり、それを表現するにはとても高い技術が必要となる。ヴァン クリーフ&アーペルらしさがもっとも表現できるフィールドといっていいだろう。
そのなかでも、そのユニークさでは今年一番のモデルといってもいいのが「ミッドナイト プラネタリウム」だ。
「宇宙を腕時計のケースの中に閉じ込めてやれ、と思って作ったのが、このモデルです。実際には、太陽系の水、金、地、火、木、土までの動きを表示しています。実は18世紀には、こういった宇宙儀というか、太陽系儀というものは存在していました。それを腕時計で表現したかったのです」
このモデルは、一つひとつの惑星というものが、どこに位置しているのか、ということを正確に同期して、貴石やプレシャスメタルでダイヤル上に表現している。
「ダイヤル上の惑星たちは実際の周期と同様に、中央にある太陽の周りをまわっていますので、一番外側に位置している土星は、一周するのに29年以上もかかってしまいます」
壮大な世界が展開され、まさに天文学的な腕時計だが、作り手側の腐心はヴァン クリーフ&アーペルらしく、操作性にあった。
「このモデルは、かなり複雑な仕組みなのですが、なにより大変だったのが日付などのセッティングをいかに簡単にするか、ということでした。せっかくの機能も使えなければ意味がありませんから」
ちなみに、このミッドナイト プラネタリウムのケース径は44mm。ケース厚は13.48mmと、これだけの要素を持ちながら、かなり薄く抑えられている。
「絶対にエレガントでなければならない」
というヴァン クリーフ&アーペルのポリシーは、ここでもしっかりと守られている。
Denis Giguet|ドゥニ・ジゲ
エンジニアとしてキャリアをスタートし、高級時計の世界で名を知られるようになる。数々の時計宝飾ブランドでの経験をいかした画期的なアプローチにより、ヴァン クリーフ&アーペルで革新的な高級時計を開発している。
Van Cleef & Arpels|ヴァン クリーフ&アーペル
ヴァン クリーフ&アーペルらしさ満載
ストーリーのある腕時計(3)
SIHHで発表された今年の新作ウォッチ
最後は、今年の1月にジュネーブで開催された高級時計の祭典「S.I.H.H.(Salon International Haute Horlogerie)」、通称ジュネーブサロンに出展したヴァン クリーフ&アーペルの最新ウォッチコレクションを紹介したい。先述した「ミッドナイト プラネタリウム」や「ピエール アーペル ユール ディシ エ ユール ダイヨール」のほか、伝統的な装飾技法を用いたヴァン クリーフ&アーペルらしい魅力に溢れる作品が発表された。
Midnight Planetarium
ミッドナイト プラネタリウム
ケース|18KPG
直径|44mm
ムーブメント|自動巻き、クリスチャン・ヴァン デル クラーウと協力して開発した特別なモジュール
パワーリザーブ|約48時間
防水性|3気圧防水
価格|2743万2000円(税込)
発売|今冬発売予定
時刻は外周にある彗星で表示されている。24時間で一周する仕組みになっている。また、風防に入っている星型のマーカーは、誕生日など、特別な日を表示できるユニークな仕掛けとなっており、1年に1度だけ、地球が巡ってきて、特別な日を教えてくれる。カレンダーの調整用インジケーターはケースバックに備えられている
。
Pierre Arpels Heure d’ici & Heure d’ailleurs
ピエール アーペル ユール ディシ エ ユール ダイヨール
ケース|18KWG
直径|42mm
ムーブメント|自動巻き
パワーリザーブ|約48時間
防水性|3気圧防水
価格|434万7000円
発売|今冬発売予定
お洒落で旅を愛したピエール・アーペルが、1949年に考案したドレスウォッチをベースに制作されたピエール アーペル コレクション。2014年の新作は、ジャンピングアワーを使ったユニークなデュアルタイム・モデルだ。シンプルでお洒落なこのモデルには、ヴァン クリーフ&アーペルのために特別に開発されたムーブメントが制作されている。
Pierre Arpels Platine
ピエール アーペル プラチナ
ケース|PT
直径|42mm
ムーブメント|手巻き、ピアジェ製Cal.830P
パワーリザーブ|約60時間
防水性|5気圧防水
価格|361万8000円
発売|今冬発売予定
1949年にピエール・アーペルによって考案されたドレスウォッチは、2012年に復活。シンプルなダイヤルデザインにケースフォルム。特徴的なラグが、エレガンスを一層引き立ててくれる。今年はプラチナケースのモデルが登場。プラチナの輝きには、独特の光沢感を持ったブラックラッカー仕上げのダイヤルがよく似合う。