ヴァン クリーフ&アーペルが物語るアール・デコの時と美学

絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット 1924年 プラチナ、エメラルド、ルビー、オニキス、イエローダイヤモンド、 ダイヤモンド ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels

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2025年7月18日

ヴァン クリーフ&アーペルが物語るアール・デコの時と美学

Van Cleef & Arpels|ヴァン クリーフ&アーペル

アール・デコ博覧会から100年の節目を迎える2025年。時代を超えて愛され続けるハイジュエリー メゾン、ヴァン クリーフ&アーペルが特別な展覧会を開催する。その舞台となるのは、東京・白金台に佇む東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)。アール・デコ様式を色濃く残す建築空間において、1910~30年代の傑作ジュエリーをはじめ、約250点に及ぶ華麗な作品が一堂に会する。会期は2025年9月27日(土)~2026年1月18日(日)。

Text by WASEDA Kosaku

展示総数約310点。選りすぐりのジュエリーが揃う

本展のタイトルは「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ─ ハイジュエリーが語るアール・デコ」。その名の通り、メゾンが紡いできた永遠の美を、アール・デコの視点から読み解く展覧会だ。
ヴァン クリーフ&アーペルは1895年、アルフレッド・ヴァン クリーフとエステル・アーペルの結婚をきっかけに誕生した。1906年には、パリのヴァンドーム広場22番地に最初のブティックをオープン。それ以来、自然や舞台芸術、幻想の世界から着想を得た詩的なデザインと、高度なクラフツマンシップによってその地位を築いてきた。
ヴァン クリーフ&アーペルにとってアール・デコは、単なる一時代のスタイルではなく、創造性と革新性を語る上で欠かせないキーワード。その象徴となるのが、1925年にパリで開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称 アール・デコ博覧会)」だ。同博覧会でヴァン クリーフ&アーペルは宝飾部門のグランプリを受賞し、メゾンの名を世界に知らしめた。
今回の展示には、その栄誉ある出品作《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》(1924年)が展示される。華やかなローズモチーフに宿る力強さと繊細さの共存は、当時のメゾンが抱いた美学の核心を物語っている。
東京都庭園美術館 本館 正面外観 画像提供:東京都庭園美術館
東京都庭園美術館 本館 大客室 画像提供:東京都庭園美術館
展覧会の会場となるのは東京都庭園美術館。1933年に建てられた旧朝香宮邸をそのまま活用した美術館だ。建設の背景には、朝香宮夫妻が1920年代前半にパリに滞在し、アール・デコ博覧会を訪れたという事実がある。
夫妻は帰国後、自邸建設にあたり博覧会に参加していた著名な装飾芸術家アンリ・ラパンに主要な部屋の設計を依頼。さらに、ガラス工芸家ルネ・ラリックをはじめとする数多くの芸術家たちが装飾に関与している。
現在も当時の建築意匠が極めて良好な状態で保存されており、展覧会を訪れる者に、まるでアール・デコの時代にタイムスリップしたような空間を提供している。
本展では、ヴァン クリーフ&アーペルの歴史を象徴する「パトリモニー コレクション」から、希少なハイジュエリー、ジュエリー、時計、工芸品が展示される。また、個人コレクションからも選りすぐりの作品が加わり、その総数は約250点。
さらに、メゾンのアーカイブから約60点の貴重な資料が公開され、作品の背後にある物語や制作背景を紐解く手がかりを提供する。展示は全4章で構成され、それぞれ異なる視点からアール・デコとメゾンの関係を浮き彫りにしていく。
第1章は「アール・デコの萌芽」。アール・デコ博覧会で栄誉に輝いた作品をはじめ、1910~30年代に制作されたハイジュエリーを中心に紹介。メゾンが築いた初期の様式美を感じさせる。
第2章は「独自のスタイルへの発展」。1920年代以降、ダイヤモンドとプラチナが巧みにあしらわれたホワイトジュエリーが登場。立体的で彫刻的な造形に挑むことで、ヴァン クリーフ&アーペルの独自性が確立されていく様子を表現する。
第3章の「モダニズムと機能性」では、ジュエリーのデザインにおける抽象性や幾何学的造形、さらには機能性の追求を浮き彫りにする。社会の変化に呼応した革新性を感じさせる作品が並ぶ予定だ。
第4章の「サヴォアフェールが紡ぐ庭」では、メゾンが誇る「サヴォアフェール(匠の技)」にフォーカス。花や動物をモチーフにしたジュエリーが織りなす、5つの庭園を巡る体験の中でメゾンの職人技を披露する。
本展は、アール・デコがもたらした造形美と、それを継承し進化させてきたメゾンの創造力との対話の場である。東京都庭園美術館という唯一無二の空間で展開される本展は、ジュエリーを愛するすべての人に感動をあたえるだろう。
永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル — ハイジュエリーが語るアール・デコ
会期|2025年9月27日(土)~2026年1月18日(日)
開館時間|10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
※11月21日(金)、22日(土)、28日(金)、29日(土)、12月5日(金)、6日(土)は夜間開館のため20:00まで開館(入館は閉館の30分前まで)
休館日|毎週月曜日および年末年始(12月28日–1月4日)
※祝日の月曜日(10月13日、11月3日、24日、1月12日)は開館、翌日の火曜日(10月14日、11月4日、25日、1月13日)は休館
観覧料|
一般¥1,400
大学生(専修・各種専門学校含む)¥1,120
高校生・65歳以上¥700
本展は日時予約指定制です。(チケットの詳細は、決まりしだい展覧会特設サイトでお知らせいたします)
中学生以下は無料(予約不要)/身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその介護者2名は無料(予約不要)/教育活動として教師が引率する都内の小・中・高校生および教師は無料(事前申請が必要)/第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上の方は無料(予約不要)
※10月22日(水)・11月5日(水)はフラットデー開催日のため通常よりも入場者数を制限いたします。
問い合わせ先

永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル — ハイジュエリーが語るアール・デコ
https://art.nikkei.com/timeless-art-deco/

                      
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