INTERVIEW|東京スカパラダイスオーケストラ・谷中敦 25周年記念インタビュー
LOUNGE / MUSIC
2015年5月11日

INTERVIEW|東京スカパラダイスオーケストラ・谷中敦 25周年記念インタビュー

INTERVIEW|東京スカパラダイスオーケストラ・谷中敦 インタビュー

スカパラ25周年の総決算! アルバム『SKA ME FOREVER』を語る(1)

今年デビュー25周年を迎えた東京スカパラダイスオーケストラ。「最新作が最高作でないアーティストは、つづける意味がない」と言いきる谷中敦に、最新作『SKA ME FOREVER』についてインタビュー。スカパラの25年間、そしてこれからの活動など、その想いを語ってくれた。

Text by Ayako Takahashi

幅広い音楽性と独自のスタイルで“トーキョースカ”を確立

──25周年、おめでとうございます。これまでのスカパラについてお聞かせください

もう25年経ったのが信じられないくらいですね。もともとは高校からの仲間とやっていたバンドがあったんですが、大学のときに、そのバンドの仲間が、スカバンドをやるという人たちに誘われて。その人が、スカパラの創始者で、いまはもう辞めてしまったバンマスのASA-CHANG。要するに、スカパラに僕のバンドが吸収されるということになったんです。

僕はバンドでボーカルをやっていたんで、楽器は何もできない。リハーサルに遊びに行ったら「オマエ、ちょっと歌ってみない?」なんてことにならないかなって期待していたんですが、そういうことにはならず……(笑)。あるとき、ASA-CHANGに「谷中さんバリトンサックスってわかりますか? 背が高いからバリトンサックス似合うと思うんですよね」って言われて。すぐに買いに行きました。入れてもらえるかどうかもわからないのに。買ったら買ったで何とかしなきゃという気持ちもあって、押し掛けるようなかたちでスカパラに参加していったわけですけども、一年後にはデビューアルバムでメロディー吹いていましたね。何となく勘はあって、バリトンサックスに向いていたのかなと、いまは思います。

──海外で活動しはじめたのは、いつから?

デビューして2、3年経ってからフランスに行ったのかな。あとシンガポール、マレーシア、フィリピン、タイ、インドネシアのASEAN5カ国。それからオーストラリアとか、トントン拍子でいろいろな国から呼ばれるようになって。もともとスカパラはストリートで演奏していたバンドで、知らない人の前でいかに目立つか、いかに注目されるかを常に考えながら行動してきました。目立つことによって存在価値があると思っていたところもあったので。

当時のメンバーにクリーンヘッド・ギムラさんという非常におもしろい人がいまして。ギムラさんはファッション業界にもけっこう精通していて、イタリアものの洋服とかにも詳しかったんですね。スカのファッションはこういうものだと、メンバーに提案して取り入れていったわけです。それで、黄色とかピンクとかの揃いのスーツを着て管楽器をやるというスタイルが生まれて。そりゃ、まわりはビックリしますよね。でも、目立っていけるというところで、このバンドに可能性を感じました。ずっとつづけていきたいなと。

──現在の9人体制になったのは?

2009年からですね。それまでもメンバーの入れ替わりはあったんですが、2000年前後に、ギターの加藤隆志やドラムの茂木欣一が加入して。その時期にスカパラで “歌モノ3部作”ということをやって。田島貴男、チバユウスケ、奥田民生をゲストヴォーカリストとして呼んで、これはすごく話題になりましたね。そして、僕はそれをきっかけにはじめて歌詞を書くようになって。遅い作詞家デビューだったんですが、皆さんに受け入れられていって、いまにつながってるんじゃないかと思います。

“歌モノ3部作”のあたりから、国内の活動もしながら海外もちゃんと行こうと決めて、毎年ヨーロッパツアーをやっています。で、今年はアメリカとメキシコツアー。アメリカは、ロサンジェルスとニューヨーク。メキシコは最近盛り上がっていて3回目になります。ざっくりとした流れでは、こんなところですね。

INTERVIEW|東京スカパラダイスオーケストラ・谷中敦 インタビュー

スカパラ25周年の総決算! アルバム『SKA ME FOREVER』を語る(2)

25周年を迎えたスカパラのあらたな挑戦“バンドコラボ3部作”

──メモリアルアルバム『SKA ME FOREVER』はどんな作品?

最新作が最高作でないアーティストはつづける意味がないと思っているので、今回も最高作になるように気合いを入れました。とくに今年はデビュー25周年ということもあったので、自分たちもいつも以上に本気になってアルバムを作らないといけない。25周年ならではのあたらしいことをしようということで、これまでボーカリストを呼んでコラボしたことはありましたが、今回はバンドを呼んでしまおうと。最初は、何てぶっとんだ企画なんだろうと思いましたね。もともと9人いて、スリーピースのバンドを呼んだらドラム2人、ベース2人、ギター2人になっちゃって。とくにベースが2人いるのなんて聞いたことがないし、けっこう無理のある企画なんじゃないかと。結果的には、すごく良かったですけどね。

ボーカリストだけと付き合っていると、そのボーカリストのパーソナリティが浮き彫りになって終わってしまうこともあるんですが、バンドとお付き合いすると、バンドの中の関係性だったり音楽の作り方だったり、刺激を受ける部分がありますよね。そして、何よりプロデュースをお願いした亀田誠治さんの存在ですね。しっかりと双方のメンバーのバイオリズムというか、様子を見ながら盛り立ててコントロールしてくれたので、マインド的にもムードメイク的にもいいレコーディングができたなと。非常にいい“バンドコラボ3部作”を10-FEET、MONGOL800、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとできたということが、この最新作の魅力ですね。

──“バンドコラボ3部作”以外の楽曲はどのような感じでしょうか?

ドラムスの茂木欣一がボーカルをとった「チャンス」という曲なんですが、これは「劇団☆新幹線」と「大人計画」がタッグを組んだ舞台『ラストフラワーズ』のテーマ曲「ラストフラワー」の元曲。僕が以前から親しくさせていただいている松尾スズキさんに「いつかいっしょにやりたいですね」と言っていた夢が、何年越しかで実現したという。この舞台のために80曲ちかく作り上げたんですが、そのうちの一曲が、茂木欣一がボーカルをとった「チャンス」で、おなじメロディラインで歌詞とボーカリストが違う。「ラストフラワー」のほうは松尾スズキさん作詞で歌ってくれているのは星野源くん。なかなか素晴らしい歌詞なんで、こちらもぜひ聞いてもらいたいと思っています。

──アルバムを引っ提げてのライブハウスツアーですね。

今回のアメリカ&メキシコツアーは、今後のスカパラにとっても大きなターニングポイントになるんじゃないかなっていうぐらい、いいツアーでした。アメリカでツアーをやってしっかり手応えを感じたのは今回がはじめてかもしれません。メンバー全員、興奮していましたね。いままでやってきたことが、またあらたに芽を出し花を咲かせようとしているのかなと。人間というのは、いろんな人間と対決していくことで強くなったり、いろんなアイデアが得られたりする。やっぱりおもしろいなと思う人は、いろんな人に会っていたり、いろんな経験をしていたりするわけですよ。そういう意味で、スカパラはいろんなお客さんと交流して、いま、人間的におもしろくなっていると思うんです。その人間性をライブハウスのような距離感で発揮できたらおもしろいんじゃないかと。音楽を聴きに来てもらうのはもちろんですけど、それぞれのスカパラメンバーのキャラクターを楽しんでもらえたら、最高ですね。

ラテン×トーキョースカの“海外コラボ3部作”実現なるか!?

──今後のスカパラの活動については?

いま、ラテン圏の音楽ファンが非常にアツイ。ハッピーな感じで楽しんでいるお客さんが多く、アーティストもアグレッシブ。アメリカ最大のラテンフェスティバル「supersonico」(※コーチュラ・フェスティバルのラテンミュージック版)でも、いわゆる英語圏のアーティストはほとんどいない。ヘッドライナーのカフェ・タクバはメキシコ、カイエトレセはプエルトリコで、ラテン圏のDJやアフロパンクなバンドなどさまざま。そんななかに東京スカパラダイスオーケストラという日本人のバンドが紛れ込んでいる感じが、僕ら的には非常におもしろかったですね。ラテンのなかでのスカというか、ラテン音楽の出口としてのスカというか。ラテン圏じゃない人がラテン音楽を理解するときにスカというものが翻訳として素晴らしいじゃないかなと。カフェ・タクバもカイエトレセも、もともとスカバンド出身だったりして、スカと親密な関係にある。そういう人たちとコミュニケーションをとりながら、海外の人たちともコラボレーションしていきたいなと。

とはいえ、基本的に海外ばっかり行っているアーティストは日本で信用されないということもあるので、ちゃんと日本でもツアーしつづけたいと思いますね。今後メンバー9人それぞれが、ラテン音楽からインスパイアされた要素を楽曲に反映していくわけですが、そういうものをしっかりと作っていくだけでも、相当いいものができるという予感がありますので。これからも頑張っていきたいと思います。

MUSIC|東京スカパラダイスオーケストラ・谷中敦 25周年記念インタビュー  03

『SKA ME FOREVER』
東京スカパラダイスオーケストラ
発売中
価格|3024円(CTCR-14837)
http://tokyoska.net/

           
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